2007.12.15
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

有害サイトのフィルタリングは強制なの?

株式会社オーグメント 代表取締役 渡辺 俊雄

12月10日、総務省から「青少年が使用する携帯電話・PHSにおける有害サイトアクセス制限サービス(フィルタリングサービス)の導入促進に関する携帯電話事業者等への要請」という、とても長いタイトルの報道資料が公開されました。

http://www.soumu.go.jp/s-news/2007/071210_4.html

この内容を簡単に言ってしまうと、「総務省は、携帯電話やPHSを扱う会社に対して“未成年ユーザーに対しては特別な事情が無い限り有害サイトに対するフィルタリングサービスを適用するようにしてね”という要請を行いました」というものです。

もちろん、この要請に対して携帯電話・PHS事業者(株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ、KDDI株式会社、ソフトバンクモバイル株式会社、および株式会社ウィルコム)および社団法人電気通信事業者協会は「新たな取り組みを行う」という発表を行っていますので、これで原則未成年の利用者に関しては親権者の申告が無い限り有害サイトに対するフィルタリングが義務化されることになります。

しかし、未成年者が犯罪に巻き込まれないようにするための対策として今回のような措置が取られるのはある意味で仕方がないのかもしれませんが、その反面ですっきりしないのも事実です。そこで、なぜだろうということを少し考え直してみました。

記憶を探ると、自身の中学や高校の時代には学校で成人誌が回し読みされていたことを思い出す人も少なくないはずです。今と昔では同じ年齢であったとしても考え方とか環境が大きく違うというのはそうかもしれませんが、たとえば、青年期の性に対する関心とか興味が特別変わってきたとは思えません。私の時代でも、“そういったもの”をどこからか手に入れてきて自慢げに他の男子に見せて回る子が少なくとも何人かいましたし、他校を見渡しても、それは特別なことではなかったように思えます。つまり、入手方法を制限したとしても、どうにかしてその制限を突破しようと考える子は必ずいますし、かえって過激な方向に向かわせてしまう芽も生み出してしまう可能性はあるということですね。

私個人の考え方は、「フィルタリングという“臭い物に蓋”的な措置は好きではありませんが、全国で等しくそうした問題に対処することを教えられる環境が用意できない以上、ある程度割り切って受け入れるのは仕方がないことだと思いますが、ここで『とりあえず一安心』と“油断をしない”ことが重要」というものです。

だって、フィルタリングは単なる対症療法であり、根本的な解決には何ら結びつかないですよね。それに、問題がアンダーグラウンド化してしまう危険性も含んでいるわけですし。^^; (すっきりしないのは、この“関係者の油断”と“問題のアンダーグラウンド化”への対策が今回の措置後にどうなっていくかがまるで読めないからです。)

そうした点を少しでも回避するためには、「親が不快と感じるからいけない」という基準ではなく、ある程度はゆるく考えて“本当に問題がある”対象に対してのみフィルタリングをかけるようにしていただくこと。それと、「なぜ、その行為がまずいのか」ということを子供に納得してもらえる材料をきちんと作って説明していく努力を欠かさないことが重要なのだと考えていますが、本当にそれができるのでしょうか。

子供の好奇心がどこでどのように発生するのか。インターネットよりも身近なコンビニで立ち読みできる雑誌の“過激な描写”が起点になる場合も多いでしょうし、友達同士の会話から生まれることも多いでしょう。私個人としては、まずはそこから入るのが本筋な気がします。

この手の話題の本質は、インターネットに限定した“有害サイト”問題ではなく、“有害情報とは何か”ということを子供に問いかけていくべき課題なのではないでしょうかということを皆様に問いかけてみたいと思います。ご意見などいただければ幸いです。

渡辺 俊雄(わたなべ としお)

株式会社オーグメント 代表取締役
1958年、東京生まれ。メーカー系システムエンジニア、大手コンピュータ出版社の書籍編集者、インターネット関連組織の広報などを経て2006年に独立。大学生と高校生の二人の子どもを持つ。

ご意見・ご要望、お待ちしています!

この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)

pagetop