2007.10.30
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白雪姫の毒りんご (安全なたべものを得るために)

東京都 栄養教諭 宮鍋 和子

今日のくだものは「アルプス乙女」。
「ふじ」と「紅玉」から生まれたミニりんごです。

「これ、どうやって食べるの?」
「皮ごとガップッ!!とかじってください」
「え~皮ごと!?」
「皮と実の間がいちばん栄養があるんだよ。」
「私、皮食べたことある」
「ぼくも!」
「そうかぁ。どんなかんじだったかな。おぼえているかなぁ」
「う~ん・・・なんかごわごわした!」
「そうだね、よく、覚えていたね。そうだ、ちょっとごわごわするね。このりんごはどうかなぁ」

そのうち、「白雪姫の毒りんごだぁ!」という声が。
えっ!と振り返ると、りんごを高だかとかかげ、叫んでいる男児2人。というか、自慢げに演じているのです。毒りんごを食べて倒れ掛かるお姫様の様子を・・・。

1年生では、まだ、りんごを皮ごと、しかも丸ごと食べるという経験がないのでしょう。“まるかじり”するという行動は、少なからず子どもたちにわくわく!どきどき!という興奮をよびおこしました。
そして、思い出したのです。りんごを丸かじりする姿を自分たちは知っていることを!
そうです。白雪姫。
彼らは、自分が、りんごを食べる姿を思い浮かべ、そして、それを他者の姿と重ねあわせたのです。

とても上手に、なんども演じる子どもたち。さすがに、他の子たちにも影響が出そうなので、
「白雪姫のりんごみたいだね。じゃぁ○組さんの王子様はだれかなぁ」
「え~王子様だってぇ」
さすがに、2人ともそれ以上は演じなくなりました。


「アルプス乙女が、食べられるのをはじめてしりました。」
「このくらいまで食べるのよって芯をみせたら、みんな競い合って食べていたわよ」
「りんごの種を埋めたいって、保健室に持ってくるのよぉ!」
「私のところ(主事室)には土をもらいに来た子がいたわよ」
職員室でも、先生方からいろいろな感想を頂戴できました。

 「りんごの皮を食べるのは・・・」と抵抗を示された先生もいらっしゃいました。
そのクラスでは、大量のりんごが残りました。
大人がみせる態度が子どもたちの食欲に、もろに影響することを感じた1日でした。

 今回使用したのは長野県佐久市産のりんご。皮ごと食べるのに一番心配なのが農薬とワックス。生産農家さんと納入業者さんへの信頼のもと実施できる取り組みです。食品の偽装表示が問題になっています。校長からも「給食が巻き込まれなければと思っています」とコメントをいただきました。

「白雪姫の毒りんご!」
 そんなことにならないよう、わたしたちに出来ることはなにか考えなくてはいけないと思いました。
 偽装表示をした会社やお店ばかりを責められていますが、消費者とやらなくてはいけないこと、考えなくてはいけないこともたくさんあるとおもいます。
 一方的な信頼ではなく、お互いに努力や我慢も必要だからこそ、本当の信頼関係が築かれていくのではないかと感じています。
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宮鍋 和子(みやなべ かずこ)

東京都 栄養教諭
定時制高校、聾学校(高・専)、中学校と勤務し、2007年春より小学校に勤務することになりました。学校給食を通して、子どもたちと一緒に、成長できたらと思います。

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