2007.10.14
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「生きる力」を育む教育実践活動=山村留学に思うこと

山形県川西町立小松小学校 教頭 小林 孝

■山村留学のこと■
 前年度まで勤務していた小学校は、4月の始業式に、決まってマスコミ関係者の取材を受ける。それは、山村留学生を受け入れているからである。
 児童数30人余りの山里の小学校に、多い年には5人もの長期留学生がやってくる。この取り組みは、今年で17年目を迎えた。

 留学の受け入れ学年は、4年生から6年生。その期間は、最短1学期間から最高1年間までで、地元の農家にホームステイしている。
 志望動機の大半は、4泊5日の短期留学で自然の素晴らしさ・地域の人々の暖かさに触れたからというものである。

 この思いは、当然である。釣りのできる堤はあるし、ハッチョウトンボはいるし、山菜を味わうことはできるし、カモシカがやって来ることだってある。
 それに、地域の人々は、子どもたちを良く知っていて、留学生にも気軽に声をかけてくれる。

 もちろん、田舎の生活や複式学級を初めて経験する都会の子にとって、不安や戸惑いはある。授業では、一つの教室で一人の担任が複数学年の指導を行うわけであるから、自学自習の力が必要とされる。
 しかし、きめ細かな指導が徹底しているため、学習面の心配はない。留学目的がはっきりしている子ほど、地元の人々との交流や体験を通し、心身ともにたくましく成長している。
 一方、受け入れる側の地元の子どもたちにとっても、留学生の存在が良い刺激となっており、表現力やかかわり合う力が育っている。

■成功の背景■
 山村留学の運営が厳しい状況にある地域が多数あると聞くが、この地域は、毎年留学生がやってくる。それは、次のような交流の深まりがあるからである。

 ○留学終了後も、里親と留学生の交流が続いている。
 ○長期留学生の親の会が発足し、地元との定期的な交流を続けている。
 ○受け入れ地域を限定しているため、その良さが口コミで広がっている。

■これからの山村留学■
 山村留学は、交流を通した「生きる力」を育む教育実践活動であり、次代を担う人づくり事業である。また、田舎と都市の交流の活発化に繋がるものでもある。

 山村留学生を受け入れている山村の小規模校は、常に学校の統廃合という不安を抱えているが、一律に学校を統廃合するのではなく、特色ある学校として、ぜひ、存続させてほしいと願う。
 そのためには、学校施設の複合化や受け入れ地域の検討など、様々な手法が考えられるのではないだろうか。

 まさに、地域の教育力の見せ所である。

写真:ハッチョウトンボ
hacchotombo_s.jpg

小林 孝(こばやし たかし)

山形県川西町立小松小学校 教頭
これまでの教員生活・自分の子育て・趣味(バンド活動)・日常生活などから、感じたことや考えたことを綴りたいと考えていますので、どうぞ、よろしくお願いいたします。

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