2007.10.06
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迷惑か否か、そこが問題なのではない(2)

株式会社オーグメント 代表取締役 渡辺 俊雄

前回は、迷惑メールというものを簡単にまとめてみました。しかし、「迷惑メール」と呼ぶといかにも主観的になってしまい、“その”メールを受け取った人が不快に思うか否かといった議論になりやすいですよね。なので、私自身はこの呼び方があまり好きではありません。問題の本質がそこには無いからです。

本人の了解を得ていないメールには、大きく分けて二つの種類があると言えます。ひとつは、純粋にビジネスとして顧客に送られるメール。もうひとつは、差出人を偽称して無差別に送られるメールです。

何が違うのか。答えは単純で、文句を言う相手がはっきりしているか否かです。

ビジネスで送られるメールには、差出人としての代表者や窓口に関する記述が正しく書かれているはずです。顧客に対するものですから当然ですよね。しかし、差出人を偽称して無差別に送られるメールには、そうした出所に関する記述は一切ありません。まぁ、身元を明かしたくないから差出人を偽称して送りつけてくるのですが……。^^;

前者の場合は、メールの送付を停止する仕組みをきちんと用意していますが、後者の場合は一方的に送りつけられてくるので、そのままでは防ぎようがありません。アメリカでは電子メールは情報サービスに分類されるので、差出人を偽称しているようなメールや怪しいとされるメールサーバから送られてきたメールはプロバイダ側で削除してしまうことができるのに対し、日本では電気通信事業法によって、どのような内容であろうとも宛先に届くようにすることが義務づけられているからです。数少ない例外は、ウィルスに汚染されたメールの場合です。これは、誰も受け取りたくないことがはっきりしているので、日本でもプロバイダ側で当該メールを削除することが許されています。あくまで個人的な意見ですが、明らかに出所が偽りであるメールは「不正メール」としてプロバイダ側で削除できるようにしてくれるとありがたいのですが……。もちろん、それを正確に判定できるようにするための技術的な課題をきちんとクリアできることが条件です。

少し話が逸れましたね。^^;
では本題に戻りましょう。前回、説明しきれなかった「間違いメールを装った迷惑メール」と「詐欺を目的としたメール」について簡単にご説明していきます。

出会い系のメールとしては、「ここにアクセスすると出会いがありますよ」といった内容のものが主流だと思います。この方法だと、差出人を偽称していても興味のある人はそのアドレスをクリックするでしょうから、呼び込みをする側としては都合がいいわけです。

それに対して、間違いメールを装った迷惑メールは少し厄介です。いずれの場合も“無視”すれば問題は起こらないのですが、警戒心の弱い子供だと、善意からつい反応してしまうことが少なくありません。

こうしたメールに反応すると、多くの場合「失礼しました」と謝罪して、次に「ご丁寧にありがとうございます」「これを機会にお友達になりませんか」というように続きます。ここに、罠があります。

通常、良かれと思ってやった行為に対してお礼を言われると嬉しくなりますよね。そのため、ただでさえ弱い警戒心が一気に緩んでしまうのです。一旦でも警戒心が消えてしまえば、あとは相手に主導権を握られてしまうでしょう。私のようにカビの生えかかった大人ならいざしらず、子供にそうした際の適応力を持てというのは無理な話です。結果、誘われるままに怪しいサイトに誘導されたり、「会いたい」という言葉に誘われて犯罪に巻き込まれたり、金銭を要求されたりと様々な問題が降りかかります。

子供に“人を疑う”という考えを定着させないようにしなければいけない難しさはありますが、当面は、知らない人からのメールには無視を決め込み、反応しないように教え込むのが一番の近道かもしれません。私としては、子供の頃は現実の世界の中で人間関係を育むことをまず教え、ネット越しの人間関係は分別がついてから考えさせるのが良いと考えています。

では次に、詐欺を目的としたメールについてです。詐欺を目的としたメールは子供にはあまり関係ないように思えますが、実際はそうではありません。たとえば、架空請求などのメールは誰宛かを明確にしていない場合がほとんどです。事務的に、「×××のサイトをご利用いただきありがとうございます。先月の料金は×××円です。いついつまでに、×××までお振り込みください。」といったようなことが、「お支払いいただけない場合は裁判所に」という文言と一緒に書かれているのが通常でしょう。仮に、ある子供がアダルトサイトを興味本位で見て、その後しばらくして架空請求のメールが届いたとしたらきっと不安になることでしょう。少しでも身に覚えのあることで、親に知られたら格好悪い、あるいは怒られると考えたとしたら、、、。怖くなりませんか?

詐欺の怖さは、常にあの手この手で攻めてくることです。インターネットという場に限らず、常に手口は変化しますよね。ただ、このあたりは大人であればいろいろな経験から教えられることが多いはずです。うまい話には乗らないこと。覚えのないことには反応しないこと、などなど。基本的には、先に紹介した「間違いメールを装った迷惑メール」と同様で、知らないメールは無視して削除してしまうのが一番でしょう。

次回は、迷惑メールを除去するための話をしたいと思います。

渡辺 俊雄(わたなべ としお)

株式会社オーグメント 代表取締役
1958年、東京生まれ。メーカー系システムエンジニア、大手コンピュータ出版社の書籍編集者、インターネット関連組織の広報などを経て2006年に独立。大学生と高校生の二人の子どもを持つ。

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