2007.10.02
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まがったスプーン

東京都 栄養教諭 宮鍋 和子

「先生!スプーンを曲げた人がいま~す!」
見事に曲がったスプーンを持って、3年の男の子が職員室にやってきました。
「どうしたの!?」
「教室で、曲げた子がいたんだ!だから、知らせに来た!」
「そうかぁ。」

こういう場合、先生が注意をされ、その後、私のところに報告に来られるのが普通です。
しかし、今日は、児童のみが、しかも給食の時間中にやってきました。
しかも、いつもやんちゃなA君が・・・なにかあったのかな?と思い、とにかく教室に行ってみることに。
「○○君がやったんだ。あっ!言っちゃったぁ」
いつもは、注意されることが多いA君。なんだか、とてもうれしそうです。

教室に近づくと、担任の先生が駆け寄ってきました。
「この子、急に、教室を飛び出しちゃったんですよ!」

どうやら、スプーンを曲げた瞬間を目撃したA君は、そのスプーンを取り上げるやいなや教室を飛び出し、私の元にかけてきたようです。
担任の先生も、一瞬のことで、とても驚かれた様子。

まずは、スプーンを曲げてしまった子に。
「このスプーン、どうしようかぁ。これじゃぁ食べにくいよね。学校のスプーンってみんなで使うんだけど、このスプーンがあたっちゃった人、困るよね。」黙ってうつむいてしまうB君。
「これ、名前を書いてこのクラス専用にする?」何の反応もないB君。
「そもそも、どうして、曲げちゃったの?」すると、周りの子が答えます。
「××君の真似したんだ。」「××君は曲げる真似しただけだよ」B君の目がジワっと潤んできました。その瞬間、はっ!としました。
「そうかぁ。曲がっちゃったんだぁ。」
「そうかぁ。びっくりしたね。」
B君の視線が上がりました。スプーンが曲がって、一番困ったのはB君だったのです。
「いろいろなことにチャレンジするのはいいけれど、3年生になったんだから、その後どうなるのかも、ちょっと考えてから行動するようにしようね。」
B君が、深くうなづきます。

さて、次はA君です。
「知らせてくれたのはうれしいけれど、先生にちゃんと話してからこないと、先生も、みんなも心配しちゃうよね。今度はちゃんと、先生に言ってからくるんだよ」


給食のたった30分弱の間にもいろいろなドラマが繰り広げられています。ひとクラス40人弱。様々な個性を持った子どもたちを相手に、担任の先生方は、こんなことを1日中繰り返しているんですよね。頭が下がります。


写真上 曲がったスプーン
  中 行事食 十五夜   
     給食では、かぼちゃを使った黄色い団子でした
  下 がんばれ1年生!(運動会の練習中です)
DSC02472_s.jpg190925_s.jpgDSC02470_s.jpg

宮鍋 和子(みやなべ かずこ)

東京都 栄養教諭
定時制高校、聾学校(高・専)、中学校と勤務し、2007年春より小学校に勤務することになりました。学校給食を通して、子どもたちと一緒に、成長できたらと思います。

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