2007.09.22
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迷惑か否か、そこが問題なのではない(1)

株式会社オーグメント 代表取締役 渡辺 俊雄

電子メール(以降、単に「メール」とします)を使っていて、「身に覚えのないメールを受け取ったことがない」という方はいないと思います。それぐらい、いまのインターネットには“迷惑メール”が蔓延しています。

企業やお店のメルマガのように純粋にビジネスとして送られてくるメールもありますが、その大多数は差出人を偽装したりした“不正な”メールでしょう。前回の話題として採り上げた「フィッシング(phishing)」も、たとえば銀行などを差出人に見せかけて、利用者が信じるように様々な工夫を凝らしたメールを送るところからスタートします。

日本では「迷惑メール」と呼ばれるこれらのメールは、海外では「スパム(spam)」と呼ばれます。スパムの語源がホーメルフーズ社のランチョンミートの缶詰である「SPAM」だというのはよく知られた話ですが、その言葉を有名にしたのはイギリスの人気番組「モンティ・パイソン」だと言われています。

ではなぜ、SPAMにそのような意味が備わったのでしょうか。一説によると、第二次世界大戦中、軍の食料として毎日のように出されたSPAMにうんざりした兵士たちの間で「無意味な繰り返し」のような意味で使われるようになったのが起源という話です。食料として安価で保存に優れていたため大量に消費されたということですが、考えたら、ちょっと気の毒な話ですよね……。

 ホーメルフーズ社 http://www.hormel.com/home.asp
 スパム(Wikipedia)http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%91%E3%83%A0

では、迷惑メール(スパム)にはどのようなものがあるのでしょうか。大雑把に分類すると、次のような感じになると思います。

・本人の了解を得ていない広告メール
・出会い系メール
・詐欺を目的としたメール
  架空請求
  フィッシング(phishing)
・悪意を持ったメール
  ウィルスメール
  メール爆弾
・チェーンメール

本人の了解を得ていない広告メールは、その名のとおり本人の了解無しに一方的に送られてくるメールです。日本の場合は、法律でタイトルに「未承諾広告※」と記述することや差出人の連絡先、「オプトアウト」と呼ばれる拒否の方法をメール本文に記載することを義務付けていますが、守られていない迷惑メールも数多くあります。

出会い系メールは、日本国内で見ると一番多く出回っている迷惑メールかもしれません。よくあるのが、「女性との出会いを無料で」といった感じのタイトルで、特定のサイトに誘導するものでしょう。ただし、この手のものであれば無視すればいいので、それほど危険ではないかもしれません。大人でもそうですが、子供にとって危険なのが、間違いメールを装った迷惑メールです。これについては、次回で詳しくご説明します。

詐欺を目的としたメールには、架空請求と前回ご説明したフィッシングメールの2つが代表的なものとして存在します。“代表的な”と書いたのは、“詐欺”という行為にはさまざまなものがあり、“これだけ”と限定できないからです。これについても、次回でご説明します。

悪意を持ったメールには、相手にウィルスを送りつけるものや、相手のメールボックスを溢れさせてメールの受信を妨害する「爆弾メール」と呼ばれる迷惑メールなどがあります。最近ではメールのウィルスチェックが進歩したためか、ウィルスメールが直接ユーザーに届くことは少なくなりましたが、油断は禁物です。

最後の「チェーンメール」は、人によっては迷惑メールと感じないことがあるかもしれません。善意を装って、この内容を広く知ってもらいたいといったような書き方をするものがあるからです。しかし、実際には不要なメールをネズミ講のように出し続けることになりますし、メールサーバなどに余計な負荷をかけることにもなります。子供には、これは「迷惑メールである」ときちんと教えるべきでしょう。

インターネットにおいて、メールはウェブと並ぶ重要なサービスのひとつです。しかし、その送出コストの安さから悪意を持って利用されてしまっているのが実情です。普通に郵便を出すと葉書1通で50円、封書だと80円かかりますが、インターネットのメールだと、ゼロに近いコストで出すことができますから。^^;

大事なことは、メールを使うときに「何に注意しなければいけないか」ということを子供にきちんと教えることだと思います。そのためには、大人自身が、知らない相手から来たメールはどう処理すればいいかといった基本的なことから、メールの真偽を見分ける術といった経験を要することまで、幅広い知識を持たなくてはいけません。

いまの子供は、メール中心のコミュニケーションを行っています。本来なら電話すればいい場面でも、チャットするようにメールを使いますよね。

だからこそ、メールとは何かということを考えさせることが大切になる。そう考えています。

渡辺 俊雄(わたなべ としお)

株式会社オーグメント 代表取締役
1958年、東京生まれ。メーカー系システムエンジニア、大手コンピュータ出版社の書籍編集者、インターネット関連組織の広報などを経て2006年に独立。大学生と高校生の二人の子どもを持つ。

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