2007.09.02
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読書のすすめ

文京学院大学女子中学高等学校 英語科(英語クラス検討委員) 佐藤 泰正

 今、生徒に向けての推薦図書を何にするか頭を悩ませています。『読書』といえば秋、何を今頃と思われるかもしれません。しかし、学校という場では、生徒たちにまさに旬というタイミングで情報を提供するため、かなり早い時期から最適なものを提供すべく準備をしています。

 本校では、司書教諭と、分掌として図書を担当する教員が中心になり毎年生徒に向けて、各教員と各教科からの推薦図書文集を「書香」と名付けて、生徒全員に配布しています。数年に一度、その内容の全面改定が行われるのですが、今年がその年に当たっています。すべての教員が夏休みの宿題として、個人/教科担当者という立場から数冊の本を紹介することになっており、目下この宿題を仕上げなければと焦っているところです。

 司書の先生に伺うと、このように推薦図書という形で読書指導を行う学校は、私立学校に限っても多数あるとのことでした。他校の発行物を拝見しましたが、中には大変に重厚なものもあり、しかも、生徒にその推薦図書の中から強制的に何冊かを読ませる指導をされている学校もあるそうです。

 本校の場合にはこの「書香」に加えて、図書委員会主催の教員/生徒による読書紹介の講演会を年に1~2度実施したり、学級単位の貸し出し図書、英語クラスには全員で回し読みをしていくペイパーバック集、読書週間の設定などで対応しています。これらが機能しているからでしょうか、昨年度の本校での貸出図書は8,800冊で、現在まで毎年数千冊単位で貸し出し図書は増えているとのことです。昨年最も多く図書を借りた生徒ですと、1年生で年間339冊、2年生で125冊、3年生で83冊に上ります。

 発行当初の「書香」の頁をめくってみると、当然のことながら、本当に様々な種類の図書が並んでいました。私が名前すら知らなかった著者の作品、あまりにも専門的で生徒にとっては難しすぎたり、また逆に平易すぎるように思えたりでなかなか進んで読んでみようとは思ったりはしないものまで、ジャンルも幅広く、学校からの推薦図書という枠には収まりきらないものでした。でも、今にしてみれば、これこそが推薦図書なんだなぁと実感しています。同じ傾向のものばかりが並んでいたりしたら、紹介された人間の視野や選択の幅を狭めてしまったり、私のような食わず嫌いだと本を手にすることすらなくなってしまうかもしれませんから。

 因みに、現在多くの学校の司書の先生方に共通している問題は、生徒たちの視野をいかに広げるかということだと言います。最近の生徒たちには「ライトノヴェル」と呼ばれる作品群が大人気なのだそうです(スミマセン、勉強不足で、どれも未読です)。そのどれもが、舞台設定も過去も現代も未来もごっちゃまぜ、登場人物は生徒と同年代の子供たち、会話を中心に構成され、話の展開もどんどん広がっていくもので、ピタリとつぼにはまった生徒は、それこそ「やめられないとまらない」状態でのめりこんでいくとのこと。読書のきっかけとしては良いのでないかと思うのですが、現在の中学高等学校の生徒たちは、その先の更に広大で豊穣な読書の世界―古代から現代まで連綿と引き継がれてきた人類の遺産には、なかなか進んでいかないというのです。次の一歩を、どうしたら踏み出してくれるのか、それぞれの学校で工夫を凝らしているそうです…。

 このような現状で、微力ながら、私なりに出来るだけ色々な種類の本を紹介したいと考えています。以下に、今までに私が生徒に紹介した本で、覚えているものを挙げてみます。

 モンテ=クリスト伯(デュマ)
 ゲイルズバーグの春を愛す(フィニィ)
 ナルニア国物語(ルイス)
 幸福な王子(ワイルド)
 空の青さを見つめていると(谷川俊太郎)
 イヴと七人の娘たち(サイクス)
 「漫遊記」シリーズ(種村季弘)

 うーむ…、我ながら節操がないというかなんというか。大学時代には児童文学についてかじっていたもので、どうしてもそのような方面が多くなってしまっているかもしれません。

 さて、教科にとらわれず出来るだけ異なった視点から図書を選定しなければとない知恵を絞っているのですが、みなさんならどのような本を紹介されますか。

佐藤 泰正(さとう やすまさ)

文京学院大学女子中学高等学校 英語科(英語クラス検討委員)
こんにちは佐藤です。都内の私立女子校で教壇に立って、もう20年以上になりました。学校生活のこと、英語学習のこと、その他、思うところを発信していきます。

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