2007.08.19
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English Camp報告

文京学院大学女子中学高等学校 英語科(英語クラス検討委員) 佐藤 泰正

前回お伝えしたEnglish Campの続きです。本校英語クラスでは、English Campという名称のもと、英会話の集中講義や英語に関連する活動を実施しています。その中の一つ、はとバスツアーの様子を報告します。

 外国人の観光客を対象とした東京観光ツアー「シティラマ東京モーニング」に、 7/28、 7/29、 8/4、 8/5と参加生徒を4分割し参加しました。バス内で英語の観光案内を聴くのはとても面白くてためになるものでした。日本を英語でどのように紹介するのか、時に冗談を交え聞き手を飽きさせないツアーガイドさんの技術はさすがで、英語を教える者としては大変参考になりました。しかし、生徒の目的は東京観光ではありません。生徒には同じバスに乗っている海外からの参加者に対して以下のように質問することが課せられているのでした。

English Camp事前事後シート(抜粋)

参加前
1.ツアー参加中に他の観光客の方に英語で質問する英文を
 事前に用意しておきましょう。
2.話しかける時の自己紹介文を英文で書きましょう。
3.以下の質問を5つ以上英語でしてみましょう。他にも各自
 の質問を考えておきましょう。
  ・出身国はどちらですか。
  ・日本にいらしたのは何度目ですか。また、日本の印象
   はどのようなものですか。
  ・日本に対する印象を3つ単語で表してください。
  ・日本のどの街に興味がありますか。
  ・東京以外にも旅行をしますか。また、他にどこか行かれ
   ましたか。
  ・あなたの国で今話題になっていることは何ですか。
4.価格比較調べ学習…日本文化の衣食住についての紹介
 や質問をしてみましょう。
  ・水のペットボトル/コーラ1本/ハンバーガー1個いくら
   するか。
5.インタヴューをした旅行者の方の記念写真を一緒に並んで
 撮ってみましょう。
*ガイドさんに質問してみるのも良いでしょう。

参加後
1.各質問の返事はどのようなものだったかまとめましょう。
2.このツアーに参加して興味深かった内容や
 初めて知ったことを日本語でまとめましょう。
3.ガイドさんの話で特に興味深かった内容をまとめましょう。
4.あなたが日本文化の素晴らしさを紹介するなら何か、日本
 語でまとめてみましょう。
5.今回参加して一番印象に残っていることをまとめましょう。
6.英語に関する今後の目標を立てましょう。


 当日(7/29)は44人乗りのバスがほぼ満席でした。昨年も引率として参加をしましたが、今年は昨年以上に英語圏以外の方たちが多数参加しているようでした。中でも、中国や韓国からなどアジア圏の方に加えて、スペイン語圏(この日はメキシコからの観光客の団体がいました)の方が多かったです。バスに乗り込んだ際には、いろいろな言葉が飛び交っていましたが、いざバスが出発すると、皆が英語でのガイドを熱心に聴いていました。この様子に生徒たちは、様々な言語の人たちのCommunication Tool、即ち『国際語』としての英語を実感しているようでした。

 ガイドをされていた日本人の方は中年の男性でした。その英語は流暢ではありませんでしたが(失礼)、それでも内容はしっかりと伝わっていました。異文化間/異言語間のCommunicationとは自然に成り立つものではなく、伝えるべき内容を準備すること、また相手から自分が得たいと思っている情報を聞き取ろうとする意志を表示すること、この双方があってはじめて成立するということが生徒たちにも理解できたことと思います。このような経験を経てこそ、実際に海外に出た時に『ただいるだけ』の存在にはならずに意思疎通を交わしていくことができるのでしょう。

 この観光案内では、明治神宮⇒皇居⇒浅草⇒銀座という順路で、それぞれの場所でバスを降りて、説明を聴きながら見学しました。生徒たちは、最初のポイントの明治神宮本殿に向かう途中で、こっそりと私に「どうやって話しかけよう」と心配そうに話しかけてきました。しかし、明治神宮からバスへ戻る途中で、「今がチャンスだ」と促しますと、次々に意を決したように周りの人たちに話し始めました。するとほぼ100%の人たちが気さくに生徒たちの問いかけに応じてくれたのです。その時、私が少し英語で話の接ぎ穂を作ることは容易でしたが、大切なのは、自分たちで『口火を切る/Break the Ice』という体験そのものです。大げさな言い方をすれば、これこそが異文化体験における通過儀礼だと思うのです。これを一回経験してしまえば、それ以降は自然体で自分たちの準備した質問を問いかけている生徒たちでした。中には相手の方から生徒に質問してきてくれたり、自分の日本での体験談を語ってくださる方もいました。

 ここから先は、心配することはありませんでした(中には、ツアー終了後に外国人観光客から秋葉原を案内してくれと頼まれている生徒もいました)。多少の差はあっても、生徒たちの中には、このツアーに対する達成感があったと確信しております。「何だ、生ぬるい」と感じられる方もいらっしゃるかもしれませんが、実際には英語クラスとはいっても、高等学校入学段階では個別に、個人的な質問をNative Speakerと交わしたことのある生徒は殆どいません。海外にいきなり飛び出すのも一つの手段かもしれませんが、このような小さな体験を積み重ねていくことも欠かせないことだと考えています。身の丈に合った着実な指導をこれからも展開していきたいと思います。

佐藤 泰正(さとう やすまさ)

文京学院大学女子中学高等学校 英語科(英語クラス検討委員)
こんにちは佐藤です。都内の私立女子校で教壇に立って、もう20年以上になりました。学校生活のこと、英語学習のこと、その他、思うところを発信していきます。

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