2007.08.07
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栄養教諭制度と派遣委託  「学校給食」ってなに?

東京都 栄養教諭 宮鍋 和子

夏休みに入ったので、子どもたちの様子はちょっとお休み。
今回は、栄養教諭制度と学校給食の現状についてご紹介します。

7月26・27日の二日間、全国栄養教諭・学校栄養職員研究大会に参加してきました。
会場での第一印象「参加者が少ない!!」出張旅費や参加費がでなくなっている自治体も多い上、公務におわれ「出張どころではない」という声も聞かれます。私も、自腹で参加することが多く、毎年「どうしよう?」と悩みます。とはいえ、参加すれば、全国の状況や、他の自治体の取り組みを学んだり、日ごろ疑問に感じていることを相談できるなど、忙しい思いをする価値はあるのですが・・・(ネットなどの情報源では得られない現場の生の声が聞けるのが、大会の利点です)

今回は、「栄養教諭」という立場、視点からの研究発表や情報交換が多く、1人で3~5校と掛け持ちする栄養教諭の現状を垣間見てきました。

残念ながら、東京都は栄養教諭制度をまだ導入していない2(都)県のうちの1つです。何やかんのいいながら、「食育の推進は、栄養教諭でなくてもできる」そのような考えが根本にあるように感じています。

東京都は給食の調理業務の民間委託を20年以上前から導入し「給食は誰が作っても一緒」という考えが定着してしまいました。では、食育は「栄養教諭」でなくてはできないのか。おそらく「誰がやっても一緒」と考えているのではないでしょうか。

現在、全国の学校給食の現場は、公務員である調理員が調理にたずさわる「直営」、献立作成や食材選定などは行政が担当し調理員だけが民間業者から派遣される「派遣委託」、施設等の管理も含めた「全面委託」の三種類により運営されています。(今回は弁当のデリバリーと簡易給食は含みませんでした)

文部科学省は、行政の栄養士が直接調理員を指導できる上、安上がり(実際は高くなることがわかってきているのですが)な「派遣委託」を推進していますが、「派遣委託」という形状は、違法な契約であり、今後、是正されていくことと思います。(どこが問題(違法)なのか知りたい方は別途ご連絡ください)

では、3つめの「全面委託」による運営とはどのようなものか。これは栄養士、献立の作成、食材の選定・発注、給食費の徴収、施設の管理運営のすべてを含めた全面委託です。給食の管理は委託業者にゆだねられるわけですから、各校1名の設置基準のない栄養職員は大幅に削減される恐れがあります。食育推進は現在いる教諭が担当してくれれば、現在、一校一名の栄養士が配置されている自治体でも、1人で何校も兼務というのは、あたりまえとなっていくことでしょう。将来的には、栄養教諭は都に1人か2人、その他は、外部からの派遣講師でまかなう。そんなことも可能かもしれません。栄養教諭としてがんばっていらっしゃる先生方の報告をうかがい、改めてそのような未来が近くに迫っていることを痛感しました。

給食の未納問題やアレルギー対応、食材の安全性への不安。「食育」も注目される昨今ではありますが、教師や保護者、地域の方々にとって、「学校給食」はどのように映っているのでしょうか。

教職員の発するたった一言が、給与にも進退にも影響するようになりました。教職員同士も、保護者の方々とも地域の方々とも本音で語り合う勇気も場もなくなっているのではないでしょか。「食育」を通じ、「「学校給食」ってなんだろう?」という疑問に本音でぶつかり合えると、日本の「食」を取り巻く問題にいっぽ踏み込めるのではないかと思うのですが・・・。


学校給食とかかわりのある問題 みなさんは、いかがお考えですか?

〇アレルギーや環境ホルモン、様々なストレスが引き起こす健康異常。
〇安全な食品の確保を困難にする生産・流通の複雑化。
〇健康や食品に対する情報の氾濫。
〇急激な国際化にともなう日本の伝統や食文化の衰退。
〇好きなものを好きなときに食べられることの身体的・精神的弊害。
〇人間関係の希薄化に伴う挨拶や感謝する心の減退。
〇経済効率と教育現場での安全性の確保と責任問題。
〇非常勤職員や低賃金労働者(パートなど)の増加と働く意欲や将来の雇用問題
〇災害時と給食施設・行政職員との関わり

宮鍋 和子(みやなべ かずこ)

東京都 栄養教諭
定時制高校、聾学校(高・専)、中学校と勤務し、2007年春より小学校に勤務することになりました。学校給食を通して、子どもたちと一緒に、成長できたらと思います。

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