2007.07.22
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生徒に評価される

文京学院大学女子中学高等学校 英語科(英語クラス検討委員) 佐藤 泰正

 前回に「生徒を評価する」ことの難しさ/危うさについて、考えを述べさせていただきました。今回は、その裏返しである「生徒に評価される」「教師を評価する」ということについて述べさせていただきます。

 近年、受験(特に中学校受験)が加熱する中で学習塾の存在が大きく注目されています。塾もしくは予備校の評価というのは、生徒が集まるか集まらないかという、極めて分り易い数値である程度の判断が下されることになります。もちろん、評価そのものというのはそれ程単純に導き出されるものではなく、教育内容をいかに広く知らしめるかという宣伝力や、生徒を効率良く指導する運営力を抜きにしては語れないと思われます。

 一方、学校に対する評価は少し異なり、外部から何らかの評価が下されることはあまりないという印象が持たれることが多いようです。それは、学校そのものの閉鎖性や教室に入れば教員の一人一人の裁量に任されて教育活動が運営されがちであることに起因するのでしょう。そのような状況に対しての改善策として、学校側からの公開授業や学校開放のような方策も取られていることも、みなさんにとっても周知の事実でしょう。

 さて、私の勤める文京学院大学女子高等学校では、Communication Boxという工夫を行っています。これは、1年に2回、生徒による授業評価を全学で実施するというものです。以下にCommunication Boxの実物を提示します。


《授業に関するコミュニケーションボックス》
英語科 科目名 英語I                            担当 佐藤泰正    

 (1)授業のスピードはどうですか。
 1.ちょうど良い
 2.どちらかといえば速い
 3.速すぎる
 4.遅い

 (2)説明は分かり易いですか。
 1.分り易い
 2.どちらかといえば分り易い
 3.どちらかといえば分りにくい
 4.分かりにくい

 (3)板書や教材/教具の使いかたは良いですか。
 1.はい
 2.どちらかといえばそう思う
 3.どちらかといえばそう思わない
 4.いいえ

 (4)授業のレベルはあなたにとってどうですか。
 1.ちょうど良い
 2. どちらかといえば高い
 3.高すぎる
 4.低い

 (5)この授業での学習内容に興味が持てましたか。
 1.はい
 2.どちらかといえばそう思う
 3.どちらかといえばそう思わない
 4.いいえ

【記述回答】この授業について意見があれば具体的に書いてください。


 上記のようなアンケートを全クラスに事前に配布して、1年生では情報の時間を利用し、他学年では係生徒がまとめて、校内のPCで集計します(もちろん無記名方式です)。結果は担当教員がまとめて、各担当者に渡されます。これらの数字は教員の評価につながるものではなく、個人保管されることになります。このような資料により、独りよがりな授業とならないようにしていく訳です。

 どの教員にとっても、この資料を目にするのはあまり気の進む作業ではありません。しかし、間違いなく生徒の本音が詰まったものです。これに目を通しながら、『トホホ…』と肩を落としたり、『ウムウム!!』と納得したり、『そうなのか…』と目からウロコの思いをしたりと、年度毎の生徒の理解度の違いを確認したり、毎年新たな教科指導上の工夫を思いついたり、生徒の気持ちを再認識させてもらっています。時に辛辣な意見も寄せられはしますが、本校にとって何より貴重なものとなります。これらの意見を真摯に受け止め何らかの行動を起こすことで、生徒との信頼関係は強まっていきます。

 これを経て、前回に触れたような生徒を評価する作業にも、慎重さや客観性を持たせようと気も引き締められていきます。教育の受け手と授け手の両方による評価はこれからも工夫して続けていければ、学校全体は風通し良くなっていくと思っています。


佐藤 泰正(さとう やすまさ)

文京学院大学女子中学高等学校 英語科(英語クラス検討委員)
こんにちは佐藤です。都内の私立女子校で教壇に立って、もう20年以上になりました。学校生活のこと、英語学習のこと、その他、思うところを発信していきます。

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