2007.07.08
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生徒を評価する

文京学院大学女子中学高等学校 英語科(英語クラス検討委員) 佐藤 泰正

 もうすぐ夏休み…。高等学校での夏休みは、子どもから大人へとそれぞれの生徒たちが大きく成長を遂げていく転機となる重要な時期です。

 まずは、人頼みでない自主的な学習習慣が定着し、それを自分なりのやり方で反省し、修正を加えていくという自己点検の期間となるでしょう。

 同時に、高等学校卒業~社会人という将来に向けて、自分がこれから何をしていくべきなのかという自己発見の期間でもあります。

 また、まとまった時間が取れるために、それまでに取り組んでみたことのないような活動―部活動/ボランティア活動などを通して、新しい人間関係や社会の仕組みを知る自己啓発の期間でもある訳です。

 外からは何も変わっていないように見えて、内面でじわじわと変化をしていくはずですから、やはりそれぞれのやり方、考え方を尊重していかなければなりません。教える方の側でも極力指示を減らして、各自の意思の赴くままに任せてあげるべきなのでしょう。

 ただし、学校としては勉強面で最低限の釘をさしておかねばなりません。本校の場合には2期制ということもあり、生徒にとっての休業前には一苦労となる期末試験がありません。

 そこで、前期の期末試験を元にして保護者に宛てて成績注意の通知をお渡しすることになっています。各担任に対して注意生徒は誰かを報告して、担任がそれをまとめて文書とするという訳です。

 夏休みには、生徒の気持ちが一気に緩んでしまわないよう補習や勉強会などが設定されていて、このように成績面で心配のある生徒の保護者に対して注意を喚起することで、これらの学習活動に生徒が参加するようことを促してもらおうというものです。

 現在上記のような作業を保護者会(今年度は 7月 7日(土)に設定しています)に向けて進めているところです。

 この際に、自分でいつも注意していることがあります。それは、『自分の受け持ち科目の成績だけが各々の生徒の評価の全てではない』ということです。
 教員といえども、生徒を測る尺度としてはついつい自分の手元にある数字だけに頼ってしまうこともあるものです。目に見えるものだけで生徒を判断をしてしまうことが、起こりえないとは言えません。生徒の中には、特定の科目だけが特に苦手だったりということもあるのです。

 以前、私の授業では居眠りが続いた生徒がいて、担任に相談をしたことがありました。

私 :「あの子、英語の授業では注意をすることが続いてい
   ますが、他の科目は大丈夫ですか?」
担任:「えっ?!あの生徒は将来の進路を理数系と考えて、
   数学の時間は一番集中して授業に臨んでいますよ。」
私 :「…(絶句)」

 そうです、自分の見ている生徒がその生徒の全てではないのです。どの生徒にも、好ましい部分とそうではない面があり、自分が見ているのは、その悪い面かもしれない。

 ですから教師の側は、自分の持っていない情報を多面的に収集することで生徒の全体像を把握する力が求められると思います。他の教員と細かな情報交換をして、生徒の声に謙虚に耳を傾けることが不可欠です。

 何かで注意をされた生徒というのは、大抵の場合、大きな問題を引き起こしたというのではありません。むしろ、一回の失敗を契機として捲土重来を期しているに違いないでしょう。

 外からは何も変わっていないように見えて、内面でじわじわと変化をしていくのが生徒です。私たち教師は、それぞれのやり方、考え方を尊重して、生徒たちの成長を我慢強く見守っていくしかないのです。

佐藤 泰正(さとう やすまさ)

文京学院大学女子中学高等学校 英語科(英語クラス検討委員)
こんにちは佐藤です。都内の私立女子校で教壇に立って、もう20年以上になりました。学校生活のこと、英語学習のこと、その他、思うところを発信していきます。

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