2007.06.12
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もったいないね

東京都 栄養教諭 宮鍋 和子

「もったいないねぇ。じゃぁ、後、どれか3口だけ、がんばって食べて、終わりにしようか。」

「今日は、全員、完食しよう!」と目標をたて、最初から食べ切れそうにない子は、手をつける前にお友達に分けたり、最後に食べられるように、ほかのお皿によけておいたりするようにしました。にもかかわらず、給食終了時、5人の子どもが、食べかけのお皿を前に、「残してもいいですか」と聞いてきます。しばらく、様子を見ていましたが、完全に「残し」モード。くら~く、お皿とにらめっこをしています。昼休みの関係もあるので、「もったいないねぇ。じゃぁ、後、どれか3口だけ、がんばって食べて、終わりにしようか。」と声をかけました。

「どれでもいいのぉ」
「あとは、残してもいいの」
と目を輝かせて聞いてきます。

「いいよ。3口だよ。ほら、このお皿なら、3口で空っぽになっちゃうじゃない」
(うんっとほおばっての3口ですが・・・)
「わたしは、どれにする。こっちのサラダ、あと一口だね」
「くだものでもいいの?」
「いいよ。3口は食べるんだよ」

急に、箸の運びが速くなります。
一度食べ始めるとびっくり。結局3人が完食!!
「全部!食べたぁ!」
うれしそうに、からになったお皿をみせにきます。
「すごいじゃない!全部食べられたんだぁ」
「おなかいっぱい!」
「そうだね。全部食べちゃったもんね。」

あんなに暗くお皿をにらんでいた子どもたちとは思えない笑顔。
残してしまった2人も、結局、3口以上を食べ、ちょっと満足げです。

「最初は、全部食べるつもりだった」と訴える子どもたち。「食べよう!」とした意欲をほめながら、自分自身を慰めていただけに、子どもたちの笑顔がうれしくなりました。


「MOTTAINAI」

 今月は、世界環境月間です。全校朝会で校長から「もったいない」についてのお話がありました。給食でも、食缶に大量の野菜等が残ってくると「もったいないなぁ」と悲しくなります。

 「MOTTAINAI」は世界の共通語となりつつあります。日本の「もったいない」という言葉は、いまや世界中に広まっています。なのに、どうでしょう?日本に住む私たち自身が「もったいない」の意味を正しく理解できているでしょうか。

 一昔前は、「もったいない」と言うと「ケチ」とか「貧乏くさい」などと思われていたようですが、果たしてそうでしょうか?「もったいない」と感じるためには、物の有難みが判るということが大前提になります。物の有難みがわかるためには、様々な知識と経験と思いやりの気持ちが必要になります。給食でいうならば、この食べ物を残すということが、世界の中でどれだけの意味を持つのか、この給食が教室に運ばれてくるまでにどれだけ多くの人の手を介しているのかを知り、その人々に思いを寄せられるか。そして、食べられるために命を落としていく多くの家畜や魚たちをどのように考えられるのか。食べ物が自らの体内でどのように働くのか。等々、様々なことを推測する力が必要になります。


 「平気で食べ物を残す。これって、かっこ悪いことかも?」どうしたら、そんな簡単なことに気づいてもらえるのか、これからも、子どもたちとの格闘の日々が続きそうです。

宮鍋 和子(みやなべ かずこ)

東京都 栄養教諭
定時制高校、聾学校(高・専)、中学校と勤務し、2007年春より小学校に勤務することになりました。学校給食を通して、子どもたちと一緒に、成長できたらと思います。

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