2007.05.27
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生徒に行動を起こさせるために…

文京学院大学女子中学高等学校 英語科(英語クラス検討委員) 佐藤 泰正

 生徒のやる気を引き出す工夫として、今回は行事の活用例を紹介します。

 今年度本校では、 5月21日(月)に体育祭が行われ、 5月28日(月)から前期(本校では二期制を取り入れています)中間試験が始まります。このような行事日程はほぼ例年通りとなっています。
 ずいぶんと詰まった日程だと感じられるかと思いますが、本校生徒にはこのような流れが自然なものとして受け入れられているようです。本校では、体育祭・学園祭・国際交流などを含め、ほぼ全ての行事は生徒(実行委員)の手に委ねられていて、担当の教員と相談をしながら運営していきます。

 1年生にとっては、学校生活に馴染み、クラスに馴染み、部活動に馴染んだ頃です。これからは、学校行事に慣れていかなければなりません。年度始まって間もない時期に設定されている体育祭に、上級生が集中して取り組んでいる様子を見て、手探りでついていく感じです。

 2年生は、昨年は全体の流れも分からずに、半分は言われるままの受け身だったものが、今年は下級生に指示を出す立場になりました。目の回るような忙しさの3年生を補助することも求められます。来年の自分たちの番に備えて観察しつつ、任された仕事にはりきって取り組んでいます。

 3年生は待ったなしです。毎年引き継がれる体育祭、自分たちがまとめるんだという半ば誇らしげな、半ば気負いたった気持ちを持って、緊張の面持ちで取り組んでいます。

 本校では体育祭を実施する施設として東京体育館を使用しています。公共の施設で、様々な団体の使用予定が詰まっているため、運行の遅れは許されません。そのため、事前の準備は4月から綿密に進められていきます。体育祭の運営―1,100名以上の生徒が参加できるアイディアに富んだ楽しめる種目を考え出したり、誰がどこで何をするか、仕切るのは誰かといった細々した事柄までまとめていかなければなりません。

 したがって、3年生は自分たちの時間-学習の時間を削って準備をしていかなければなりません。予備校や塾に通う生徒も多く、話し合いの時間調整も簡単には取れません。生徒達は、いわば追い詰められた状況の中で、時間の使い方や物事への優先順位を身に付けていくのです。このような重圧の下、この体育祭は毎年素晴らしい思いでに満ちたものとなります。下級生達はその様子を見ながら、どのように行動するべきなのか肌で学び取ることになります。

 体育祭が終わった日から丁度一週間後に中間試験が行われることになっています。中には「準備ができない~」と悲鳴を上げる生徒もいますが、それでも頭を切り替えて試験の勉強に取り掛かります。教員側は「今度は勉強だぞっ」と声がけを行いますが、生徒たちにとっては分かっていることなのでしょう。特に3年生は、これを境に「今度は受験で」という気持ちを持つようになるのです。

 生徒のやる気は、「しなさい」と押し付けることからは生まれてきません。学校行事を成功させた、自らの手で乗り切ったんだという達成感が、次の取り組みに目を向けていく原動力となります。つまり、各生徒たちがそれぞれに自分のどこに問題点があって、どうすればそれが解決していけるのかについて考える。

 課題は無理やり与えずとも、周りにたくさんあり、全員が同じものに取り組むこともないはずです。やる気を出す時期も異なっても構わないのです。私たちのすべきこととは、生徒の力を信じて見守ること、立ち止まってしまっている生徒に対しては、時機を見て問題点を指摘するなどして、生徒自身に気づかせていくことなのだと認識しています。

 どの生徒も、一つの行事を契機として成長していけるのです。3年間に積み重ねた様々な経験によって、高等学校を卒業し、社会に出てからも問題解決の糸口を自ら見つけ、支え合っていく人間関係を築いていけると考えています。

佐藤 泰正(さとう やすまさ)

文京学院大学女子中学高等学校 英語科(英語クラス検討委員)
こんにちは佐藤です。都内の私立女子校で教壇に立って、もう20年以上になりました。学校生活のこと、英語学習のこと、その他、思うところを発信していきます。

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