表題を見て読んでくださった方のために先に自分の考えを書いておきます。
ふりかえりは本当に重要で必要だと思っています。
ただ「何のためにするのか?」「どのようにするのか?」
この答えがあってこそふりかえりは有効になると思っています。
まずはドラッガーの言葉を紹介します。○に入る言葉はなんだと思いますか?
「強みを知る方法は一つしかない。○である。
何かをすることに決めたら、○をただちに書きとめておく。
9か月後、1年後に○する。
私自身これを50年続けている。 そのたびに驚かされている。」
1、ふりかえりは重要?
ふりかえりの重要性は中教審でも指摘されています。
アクティブラーニングという言葉が広がりだしてから、ふりかえりの重要性も
今まで以上に言われるようになったように思います。
一方で形だけのふりかえりをすることに意味があるのかという疑問の声も出ているようです。
ふりかえりをする時間がないという声も聞きます。この声の裏側には、
ほかのことにあてる時間を削ってまでふりかえりを優先させるべきかという疑問が
隠れているようにも思います。
自分自身、教師になってから「ふりかえりが大切」と何度も言われました。
言われたとおりに行事の後に感想を聞くなどのアンケートなどは実施しましたが、
その重要性はわかっていなかったように思います。
生徒たちが型通りに書いてくる「いい経験になりました。これを活かしてこれからも頑張ります」
という感想を見て満足して終わりでした。
8年前に今の学校に異動になりキャリア教育部を任されたときにも、
イベントを実施すること以上にふりかえりが大切と言われました。
イベント後にアンケートはとり、結果集計もやっていたので、
ふりかえりをしているつもりになっていました。
しかしいつの頃からか、その頃キャリア教育部で取り組んでいたボランティア体験学習の経験が、
生徒にとっては単発の思い出以上になっていないと思うようになりました。
キャリア教育プログラムとして、生徒が本質的何かに気づくようなふりかえりまで実施したい、
こんなことを思うようになりました。この思いは今も変わっていません。
改めて聞きます。ふりかえりは重要ですか?それはなぜですか?
もし重要なら、他のことにあてる時間を削ってまでふりかえりをする理由は何ですか?
2、アクティブラーニングをより深い学びにつなげる! ~リフレクションで創る知の世界~
3月21日、東京大学で、REFLECT主催のシンポジウムが行われました。
「アクティブラーニングをより深い学びにつなげる!」はシンポジウムのタイトルです。
文科省の田村学先生やREFLECT理事の山辺恵理子先生などがパネリストでした。
その内容を少し紹介します。
シンポジウムでまず話題になったのは
「生活科や総合的学習でもふりかえりが重要なキーワードになっているように考える、それはなぜか?」
ということです。みなさんはどうお考えでしょうか。
田村先生は「精緻化・構造化」と「自覚化」という2つの視点からそのことに答えられていました。
人が体験したことや学んだことは、本当はつながりがあり関係が深いのに、
意識しないとバラバラになってしまう。体験したことや学んだことを構造化するため、
そして精緻化するためにふりかえりが重要ということです。
そのことで学んだことや体験したことは安定し、活用的になります。
また体験や学びの自己受容を自覚することで意欲も向上します。
つまり起こったことを自覚するためにもふりかえりが重要なのです。
また山辺先生は「ふりかえりしなさい」というときに意味しているのはreview?reaction? regret?」
という問いを投げかけられました。それを聞いたときに日本では「ふりかえり=反省」
というイメージが根強く残り、「今回はこういう課題が残りました。次は○○します」という
形だけの文章指導をしやすいということに気づきました。
大事なことは目標にそくしたふりかえりなのです。
これに関連して信州大学の伏木先生は、大学での実習経験のふりかえりを説明されました。
信州大学では学校現場に行ったあと徹底的にふりかえりをするそうです。
するとはじめは現場で見たことへの批判などを話していた学生が徐々に
「なぜ自分はそう思ったんだろう」と考えていくようになるそうです。
これはまさにメタ認知ですが、伏木先生は「ふりかえりを重ねることの大切さ」
を強調されていました。 実は自分もCSLの授業でふりかえりの重要性を実感していて、
このシンポジウムでもコンセプトマップ作成などの実践と、それによる生徒の気づきなどを
紹介させてもらったのですが、これについてはまた機会があればと思います。
ふりかえりは大事だけど、ただやればいいというものではない。
ふりかえる側が学びや体験を「精緻化・構造化」「自覚化」できることを意識し、
目標にそくしたふりかえりを行う。シンポジウムでこんなことに気づきました。
そしてはじめのドラッガーの言葉から、ふりかえりによってこそ人が大きく成長することがわかります。
3、ふりかえり・ミニワーク
はじめの問いの答えを紹介します。 ○に入るのは順に、
「フィードバック分析」「何を期待するか」「期待と結果を照合する」です。
つまりドラッガーの言葉は以下のようになります。
「強みを知る方法は一つしかない。フィードバック分析である。何かをすることに決めたら、
何を期待するかをただちに書きとめておく。9か月後、1年後に期待と結果を照合する。
私自身これを50年続けている。そのたびに驚かされている。」
この言葉がふりかえりの重要性を端的に表現しているように思います。
読者には学校の先生も多いと思いますので、最後に教師向けのふりかえりを紹介します。
オランダのコルトハーヘンは成長し続ける専門家の成功モデルを体系立てました。
それがALACTモデルです。理論として学んだ理論は現場ではなかなか活かされない、
だけど現場にこそ学びの場がある。背景にはこのような問題意識があります。
そして経験を中心とした学びの一環としてふりかえり(リフレクション)があります。
詳しくは本を読んだ上でワークショップに参加されるのが一番です。
最後に簡単なワークを紹介します。
実はこのワークは立命館附属校の研修で自分が経験したものです。
研修ではコーチ、相談者(自分=ふりかえる人)、コーチのコーチの三者でワークをしましたが、
一人でもできなくはありません。ぜひともこの夏にやってみてください。
1)ふりかえりをしたい場面を一つ選んでください。
生徒との対応、同僚との対応などのちょっとした場面でかまいません。
たとえば「授業中怒鳴った場面」「会議での同僚の一言」などです。
うまくいったなと思う場面かずっと気にかかっている出来事がいいでしょう。
2)その場面について、以下の8つの問いに答えてください。 順番は気にしなくて構いません。
<1>私はそのとき何を考えていましたか?
<2>私はそのときどう感じましたか?
<3>私はそのとき何をしたかったのですか?
<4>私はそのとき何をしたのですか?
<5>相手はそのとき何を考えていましたか?
<6>相手はそのときどう感じましたか?
<7>相手はそのとき何をしたかったか?
<8>相手はそのとき何をしましたか?
いかがでしたか。どう感じましたか?ふりかえった場面について
新しい何かが見えたのではないですか?このワークでの気づきをぜひ書きとめておいてください。
今回紹介したのは8つの窓を用いたふりかえりです。本当にごく一部しか紹介できていませんが、
自分もまだまだ勉強中です。またこの続編が書けるよう、学びと実践を重ねたいと思います。
最後に、はじめの問いをもう一度考えてみてください。
「ふりかえりは必要ですか?なぜそう思いますか?」
いよいよ7月も終わります。夏休みで、いつもと違う時間を過ごす方も多いと思います。
よき夏にしましょう!
お読みいただきありがとうございました。 引き続きよろしくお願いします。

酒井 淳平(さかい じゅんぺい)
立命館宇治中学校・高等学校 数学科教諭(高校3年学年主任・研究主任)
文科省から研究開発学校とWWLの指定を受けて、探究のカリキュラム作りに取り組んでいます。
キャリア教育と探究を核にしたカリキュラム作りに挑戦中です。
ご意見・ご要望、お待ちしています!
この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)
「教育エッセイ」の最新記事
