2016.07.05
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アクティブ・ラーニングについて

岐阜県可児工業高等学校 電気システム科 教諭 河合 英光

アクティブ・ラーニングとルーブリックが流行りはじめました。

 最近、ちょこちょこと県内の会議に参加します。そこでよく耳にするのがアクティブ・ラーニングとルーブリックです。次期学習指導要領から、アクティブ・ラーニングやルーブリックを活用した授業を行うことになります。といった内容です。確かに文部科学省の検討会議において、学習指導要領改訂の方向性(案)の中で「何ができるようになるか」「何を学ぶか」「どのように学ぶか」の3つの柱の中の「どのように学ぶか」の要素において「主体的・対話的で深い学び(「アクティブ・ラーニング」)の視点からの学習過程の改善」という文言があります。また、評価の方法としてルーブリックという言葉が多く出てきています。これらの言葉をインターネットで検索すると、アクティブ・ラーニングは約521,000件、ルーブリックは約41,000件がヒットします。(2016.6.29現在)数年前は、こんなにもありませんでした。ここ数年で本当に増えました。そこで、会議の席で私が感じた雰囲気は、「一体、どんなことをすればいいんだ?」「よくわからない」といった感じを受け取りました。たぶん多くの先生方も同じ気持ちなのではないかと思います。だって、私たちはアクティブ・ラーニングやルーブリックを使って指導されてきていないのですから、よくわからなくて当然だと思います。では、どうしたらこの不安は消えるのでしょうか?
(ちなみに、不安や恐れってなんで起きるのでしょうか?『不安』を調べると「何か漠然として気味の悪い心的状態や、よくないことが起こるのではないかという感覚(予期不安)である。」と書いてあります。『恐れ』を調べると「よくないことが起こるかもしれないという心配。」とあります。不安や恐れとは、未来においてどうなってしまうかがわからないときに起こるものみたいです。ということは、アクティブ・ラーニングやルーブリックを活用し、次期指導要領で実践していかなければならないと聞いた時に、不安や恐れを感じた人はアクティブ・ラーニングやルーブリックが何なのか、どうやって使っていけばいいのかが理解していないのだと思います。もちろん、私も不安です。うまくやれるかどうかわからないですから。)では、どんな活動をアクティブ・ラーニングというのでしょうか?

 【アクティブ・ラーニングとは】

・「教員による一方向的な講義形式の教育とは異なり、学修者の能動的な学習への参加を取り入れた教授・学習法の総称。学修者が能動的に学修することによって、認知的、倫理的、社会的能力、教養、知識、経験を含めた汎用的能力の育成を図る。発見学習、問題解決学習、体験学習、調査学習等が含まれるが、教室内でのグループ・ディスカッション、ディベート、グループ・ワーク等も有効なアクティブ・ラーニングの方法である。」(文科省 用語集)

・「学生を巻き込んだ学生自身が活動し、その活動自体について思考する、取り組みすべて」(Bonwell&Eison,1991)

・「授業において、学生が『見たり』『聞いたり』『ノートを取ったり』する以上の活動をするようデザインされた教授内容に関する全て。」(Felder&Brent,2009)

・「アクティブ・ラーニング」というのは、単なる授業の形態を指すのではなく、学習者がどう変わるかということがポイントです。ですから、「アクティブ・ラーニング」に形式を求めるべきではありません。子供が話し合う時間が全体の何割かというようなことではないし、教師がある時間を取って説明したからそれはアクティブ・ラーニングではないとも言えないのです。…「アクティブ・ラーニング」は頭をアクティブにすることがねらいなので、「アクティブな活動」ではなく、「アクティブな学び」と捉えるべきなのです。(無藤隆『新教育課程ライブラリVol.0』ぎょうせい,2016,pp4)

 

結局は…

一番わかりやすいのが無藤先生の説明ではないかと思います。結局、アクティブ・ラーニングとはアクティブな活動ではなくアクティブな思考をさせるために行う授業計画全体のことだと思います。例えば、従来の一方的な教授方法であっても授業の中で効果的な発問を行うことはアクティブ・ラーニングになるのではないでしょうか。ただ、それを考えただけで終わるのではなく、隣同士で意見を交換したり、クラス内で発表したり、ミニッツペーパーを使って記入させたりすると、さらに良い活動になるのではないかと思います。
 「逆向き設計」論で考えるならば、求めるべき生徒像を明確にします。そのためにはどんなことを知っていたり、出来たり、考えることができるようになるのかを具体的にします。そして、具体的にした内容を身に付けるためにはどのような授業をしたらよいかを計画します。それが単元計画書であり、計画の中で考えさせるための手法としてアクティブ・ラーニングを利用するのです。決して毎回アクティブ・ラーニングをする必要はないのです。より深い思考をさせるためには、一方的に教える授業をしなければいけない時もあるかもしれません。(多分、それならすでに私は実践しているという先生もいると思います)。
 アクティブ・ラーニングとは、今までの授業方法を否定して授業方法を変えるものではなく、今までの授業を拡張する手法だと思います。(ロールプレイングゲームでいうならば、新しいアイテムを手に入れて、より強くなるような感じだと思います。ただ、アイテムを手に入れただけでは強くはなりません。強くなるためにはアイテムを使いこなさなければだめだと思います)。ですので、わからなければ調べてみましょう。今はインターネットという便利な情報端末があります。また、Amazonという早ければ次の日に本が家まで届くシステムがあります。そういえば、次期学習指導要領の中に教員研修の充実の項目もあったように思います。私たちは教育のプロとして、生徒たちに教えるためのツールをいくつも持っておく必要があると思います。

河合 英光(かわい ひでみつ)

岐阜県立可児工業高等学校 電気システム科 教諭
「生徒の成長のために我々は何ができるか」を最近よく考えています。そのための方法として「逆向き設計」論を実践しています。京都大学 E.Forum所属

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