2015.06.19
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評価に取り組むことでキャリア教育授業が進化した!

立命館宇治中学校・高等学校 数学科教諭(高校3年学年主任・研究主任) 酒井 淳平


 人間は一生のうち逢うべき人には必ず逢える
 しかも一瞬早過ぎず一瞬遅すぎないときに (森信三)
 

1、授業全体を評価するルーブリック作成に着手する


 前回はルーブリック作成、それを用いての評価について書きました。
 課題はあるものの、私たちはルーブリックで評価することは
 効果的であるという一定の確信を持つことができました。
 次の段階でやるべきことはキャリア教育授業全体を評価
 するルーブリックの作成です。
 そんなときまた新たな出会いがありました。
 
 立命館大学講師で、大学教育(学生の学びと成長)がご専門の河井亨先生。
 ご縁があり、河井先生からご指導いただけることになりました。
 河井先生も京都大学・溝上先生の研究室出身です。
 将来の見通し調査もそうですが、溝上先生には感謝の言葉しかありません。
 
 ともあれ私たちは河井先生という強力な助っ人と出会い、
 年度当初に生徒に配布できるルーブリックを作るということへの
 挑戦を始めました。
 

2、ルーブリックを4月に配布できた!


   ルーブリック作成について多少のノウハウは得たつもりでいた私たちは、
 シラバスで授業目標は明記したのだから、
 ルーブリックを作るくらいのことは少し頑張ればできる
 だろうという甘い考えを少し持っていました。
 ところがここでも目標のあいまいさに直面します。
   たとえばCSLの目標の一つに「自ら情報をキャッチし
 自分から一歩を踏み出せる人になる。チャンスを活かせる高校生になる」
   という項目があります。

   これは多くの生徒を見る中で大切なことだと感じたから
 設定した項目で、生徒のCSL活動(≒ボランティア活動)
 の取り組みで評価しようと考えました。

 ところが河井先生から指導を受ける中で、活動を通して大きく成長
 するとはどういうことか?一歩踏み出す生徒とはどういうことか?
 という疑問に直面します。やはり目標はあいまいでした。
 
 幸い、前年度の生徒たちが書いたものは残していました。
 また生徒たちは高校2年生として学校に在籍していたので、
 その後どうなっているのかを追跡することは難しくありませんでした。
 生徒たちがボランティア活動をしたときのノートを読み返し、
 高2になってどうなっているかを調査することで、
 ようやく評価規準が定まっていきました。
 
 そして前回同様、こうしたプロセスを経て授業担当者の間で
 評価基準が共有できました。今回はさらに、
 ”3月にはこの段階の生徒を○%にしたい”など目標も
 今まで以上に具体的に共有できました。
 生徒の学びと成長のための評価が始まった瞬間かもしれません。
 河井先生とのセッションを重ね、ルーブリックが完成しました。
 CSLの評価は最後に生徒が提出する「自分マニフェスト」が
 中心になるだろうということを考え、生徒に示す到達状態と
 こちらが持つ判定方法、2つのルーブリックが完成しました。
 こうして、4月はじめの授業で生徒たちにルーブリックを
 配布するということができました。
(実際のルーブリックや評価結果などは文科省の研究指定報告書に書きます)

 今思うと、次年度の準備を前年度の秋からはじめていたこと、
 生徒の書いたものをすべて残していたこと、
 こうしたことが大きなことでした。

 学校現場にいると目の前のことに追われてしまいます。
 しかし、だからこそ先のことを考えて実践することが大切なのだと
 改めて感じました。文科省の研究指定は3年で、初年度に
 3年分の計画を立てますが、その重要性にも改めて気づきました。
 

 

3.もしかしたらこのプロセスは必然かもしれない

 
 今振り返って、ずいぶん遠回りをしたようにも思います。
 本来はキャリア教育の授業を組み立てるときから、
 ここまで考えておくべきだったのでしょう。
 しかし、当時の自分にはその力量はなかったように思いますし、
 実践を重ねたからこそ、ここまで到達できたようにも思います。
 もしかしたらこのプロセスは必然なのかもしれないとさえ思います。
 (私たちがそうであったように)実践することを考えるときに、
 まずはいい実践を形作るのが精一杯ということは少なくないのかも
   しれません。

「キャリア教育は評価が大切」まさにその通りです。
 しかし実践を形作ったことがない人にそれを強調しすぎると
 キャリア教育への負担感ばかり感じさせてしまうかもしれません。
 
「イベント型のキャリア教育はいけない」これもその通りです。
 しかしイベント型のキャリア教育さえも不十分な学校に
 このメッセージばかりが伝わると、結局何をしていいのか
 わからなくなる危険性があります。
 
 全国いろいろな学校があり、その学校の実践プロセスによって
 必要な助言は異なるのかもしれません。キャリア教育について
 そろそろこうしたことも考えたほうがいい時期なのではないでしょうか
 

4.最後に
 

 文科省の研究指定は今年度で終わります。
 しかしルーブリック評価については、その後の追跡調査こそが
 大事だと感じています。高い評価を得た生徒たちは、
   それが高2以降の成長にどうつながるのか、学業との相関はあるのか、、、
 少し考えただけでも重要なテーマがいくつも思いつきます。
   来年度以降、どのような形で研究できるわかりませんが、
 文科省の指定が終わっても研究を続けたいと思っています。

   おそらくその研究の成果で、キャリア教育授業を高校に
 おくことでどのような成果が見こめるのか、
 高2以降や大学で大きく成長する生徒はどんな生徒か
 ということなどが明らかにできるでしょう。
   こうした研究を継続できる方法も考えていかないと
 いけないと思っています。

   お読みいただきありがとうございました。
 次回で評価について書くのは最後になります。 
 次回は評価をする上で重要な視点、何のために評価するのかなど
 実際に評価に取り組む中でわかったことについてまとめたいと思います。
 

 

酒井 淳平(さかい じゅんぺい)

立命館宇治中学校・高等学校 数学科教諭(高校3年学年主任・研究主任)
文科省から研究開発学校とWWLの指定を受けて、探究のカリキュラム作りに取り組んでいます。
キャリア教育と探究を核にしたカリキュラム作りに挑戦中です。

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