2015.04.08
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「なぜ学ぶのか」を考える授業から次のステージへ

立命館宇治中学校・高等学校 数学科教諭(高校3年学年主任・研究主任) 酒井 淳平

  新年度が始まりました。みなさんもあわただしい中にも
  新鮮さがある毎日をお過ごしのことと思います。
  第17期も引き続き執筆させていただくことになりました。
  よろしくお願いします。

 


1、自分から学べるかどうかは人生を大きく左右する


  さっそくですが、質問です。
 

   2015年度、みなさんは何を学びますか?
   それは何のためで、どの程度時間をかけますか?
   普段の生活のどこに学ぶ時間を確保しますか?


  以前つれづれ日誌で「なぜ学ぶのか」を考える授業~キャリア教育授業の
 一環として~を紹介させていただきました。
http://www.manabinoba.com/index.cfm/8,21275,21,185,html

  大変多くの方に読んでいただき、高校生に学ぶ意味を問うことの大切さ
  を多くの方が感じていることを改めて感じました。

  そんな時、今の社会の現状を見てふと、「なぜ学ぶのか」という授業には
  次のステージがあるはずだということに気づきました。

  最近、高校生の勉強時間の二極化が言われています。
(今に始まったことではないでしょうが)。
  確かに高校生の勉強時間に差があることは事実でしょう。
  では今の社会で一番勉強時間に差がある世代は本当に高校生でしょうか。
  実は、今の社会で一番勉強時間に差があるのは社会人ではないかということを
  最近思うようになりました。


  職業に関係なく、仕事にやりがいを持って、充実した人生を過ごしている人は、
  間違いなくよく学んでいます。その人たちは、学ぶべきことも自分で発見し、
  学んだことを実践して、より充実した毎日を過ごしています。
  一緒に学んで高めあえる仲間も見つけ、切磋琢磨してより学びます。

 自ら学ぶことをせず、グチしか言えない大人がいることも事実だし、
 日々学んで自分を高め、充実した毎日を過ごしている大人がいることも事実です。


 いろいろな方と接する中でこのようなことに気づき、
  もしかしたら”20代にどれだけ自分から学べるかで人生は大きく変わるのかもしれない”
  と思うようになりました。
  つまり「何を勉強するべきかを見つけて実行する力」を持っていることが大切なのです。

 

2、「何を学ぶのかを見つけ、実行する力」が学ぶ意味を考える次のステージ


 「○○大学に合格する」という目標を設定すると、入試科目が決まります。
  そのときに何を学ぶのかも自然と決まります。最近は情報も入手しやすく、
  教育業界も年々進化していますから、合格するためのプログラムも
  ほとんど与えてもらえるでしょう。

  しかし大学入試は終わります。では入試という目標がなくなったときに
  何を学ぶのでしょうか?学ぶことを見つけることはできるでしょうか?

 もちろん合格した瞬間学ぶことをやめ、大学デビューすることだけを考える
 生徒もいるでしょう。日本屈指の難関大学の先生が「入学がゴールで、
 それからは何もやろうとしない学生がいる」といわれることを考えると、
 実際にそうなっている学生もいるのでしょう。

 一方で大学生活がはじまれば、授業の課題も出て、再び学ぶべきものを
 与えてもらえる生活がはじまるのも事実です。そこで頑張る学生も多数います。
 しかしその中の何%が「自ら学ぶべきことを見つける力」を持っているでしょうか。
 自ら学ぶべきことを見つける力がないと、就職した瞬間に学ぶことをやめるかもしれません。


 おそらく学ぶべきものを与えられなくなったときこそが勝負なのでしょう。
 そのときに自ら学べる人になっていることが大切なのです。
 このように考えると、「何を学ぶのかを見つけ、実行する力」を育てることが、
 学ぶ意味を問う次の段階として必要なことなのでしょう。

 

3、2015年度へ向けて


  2014年度最後のHR。学級通信で生徒に次のように問いかけました。

 「今日は宿題も取り組むべき課題もない日だとしましょう。
 そしてテスト前でもないとします。そんな今日ですが、帰宅後は
 どんな勉強をしますか?それはなぜですか?」

 予想以上に多くの生徒が、答えに困っていました。

 学級通信では今の現実も書きながら、2年生になれば
「何を学ぶのかを見つけ、実行する力」をつけてほしい、
 それこそが生涯大切な力だと訴えました。

 自分自身、何を学ぶのかを見つけ実行する力がどうすればつくのかは、
 よくわかっていません。しかし生徒を見ていてこの力が大切なことはわかります。
 そして高校時代に「何を学ぶのかを見つけ実行する力」がついた
 生徒が大学でも伸びていることもわかります。

 本校では多くの生徒が内部進学で(受験なしに)大学に進学します。
 高校生活で何かのプロジェクトの中心となって動くなど、積極的に
 行動している生徒は、まちがいなく学習時間も増えているのです。
 こうした生徒たちは「受験」という外発的な動機がなくても、
 プロジェクトなどを通していろんな人、社会と出会い、そして
 学ぶべきことに気づいていきます。その結果が学習時間の増加なのでしょう。


 私事ですが、4月から2年生を担任することになりました。高1からの持ち上がりです。
 今日書いたことはすべて自分にはね返ってくることばかりです。

「なぜ学ぶのか」だけでなく、「何を学ぶのか」を問うという
 視点も忘れずに生徒に関わりたいと思います。
 そして自分は数学の専門力、数学やCSLの授業作り・教材作り、
 ファシリテーションなどを特に学び、学んだことを実践する1年にしたいと思っています。

 
 読んでいただきありがとうございました。
 引き続きよろしくお願いします。

 よき2015年度にしていきましょう。

酒井 淳平(さかい じゅんぺい)

立命館宇治中学校・高等学校 数学科教諭(高校3年学年主任・研究主任)
文科省から研究開発学校とWWLの指定を受けて、探究のカリキュラム作りに取り組んでいます。
キャリア教育と探究を核にしたカリキュラム作りに挑戦中です。

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