2015.03.29
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東井義雄先生つながり

ほしのむらのがっこう 学校管理者 松浦 博孝

また前回の続きから

  今回で18回目の掲載となります。大阪の松浦です。よろしくお願いいたします。

 前回は、図画工作科のつながりについてお話をご紹介させて頂きました。

 今回は、東井義雄先生についてお話をお伝えしたいと思います。

 

 

 東井義雄先生 

東井義雄先生のことを知ったのは、今から約12年前の初任の頃のことです。

千葉県での小学校勤務時の校長先生から冬休みの宿題ということで、2学期末に一冊の本を渡されました。それが「教師の仕事・仕事の心」という東井義雄先生の著書でした。

 その本を読んだ感想を冬休み明けに校長先生へ提出しました。その内容を以下の『』内にご紹介します。

 

 『東井義雄先生の名前は聞いたことがありましたが、先生の本を読んだ記憶はありません。もしかしたら大学の授業で名前が出てきて記憶に残っていたくらいかもしれません。校長先生から本を貸して頂いたときには、いったい誰の本だろう?冬休みの宿題?大変だなあと正直、思っていました。

しかし、いざ読み始めると貸して頂いて本当に良かったと思い始めました。本が苦手な私にも教育実践をしていることもあり、引き込まれるようにどんどんと読めていくのでした。その本の中には、教師として人間として非常に大切な事柄がいくつも書かれていました。

 

最初の死刑因の話では、子ども達へかけるひと言ひと言が大切であることを痛感しました。子どもは、たったひと言で助かったり傷ついたりして、その人の一生にまでひと言が関わってくるのです。ただ単に教師になりたかっただけでは済まされない部分があります。

本を読んでいく中で「キカンジュウ」という言葉が出てきました。私自身の1、2学期の授業のやり方を振り返ってみても「キカンジュウ」になっていたように思います。子どもたちの発言よりも私が話をしている時間の方が明らかに長かったです。こっちは「熱心に」教えているのにと思ったことがありましたが、それは単なる「キカンジュウ」になっていただけのような気がしました。

 

算数の時間の話では、問題を解くのに子ども達に先生をさせてやる気を起こさせるのが良かったです。そして、先生が子どもになってみんなも巻き込み、どんどん質問し考えさせていました。子ども達も自分たちが教える立場になってみて必死になって考えています。「キカンジュウ」にならずに子ども達の発言を多くできる授業です。算数以外でもいろいろな場面で、できない子どもが活躍できる場面を作るのも教師の仕事です。みんなが主役になれる授業を、みんなが輝ける授業を考えていきたいです。

授業を行う上では、授業における学習帳や黒板の使い方などの基礎基本も大切です。「黒板は教師の顔の一部分」という言葉に、1、2学期の授業の板書の反省が出てきました。

 

今、「学力低下問題」が騒がれています。ちょっと前までは「生きる力」が大切であると言われていました。この本でも出版年度から考えるとずいぶん前の話だと思いますが、「ほんものの学力」と「にせものの学力」という形で書かれています。

私も学力には、詰め込んでも限界があると思います。自分で考える作業が非常に大事だし、もちろん考えることができるための基礎知識も必要です。どちらも必要なわけで、結局はバランスの問題だと思います。料理に例えると詰め込んだ知識というのは材料になり、考えるのが料理方法です。いかに美味しい料理が作れるかは、材料とその料理を調理する腕です。新しい料理を考えるのも腕を磨くのも自分自身です。いい材料があっても、いい調理方法や腕を持っていなければ美味しい料理は作れません。

 

本著のM君の話には感動しました。子どもの問題行動の裏には必ず理由がある。それを知るのに作文を利用して気づけた子ども達は素晴らしい。子どもは素晴らしい力を秘めています。私の学級の子ども達にもきっと素晴らしい力がある気がしてきました。いかに引き出すことができるかが教師の力にかかっているように思います。本著にあった「人間にくずはないのである。何かの事情でスイッチの入りにくい子どもがいるのである。スイッチさえいれることができれば、必ず灯はともるのである。そして、このことができなければ、授業も授業にならぬのである。」を忘れずに子ども達と関わっていきたいです。そして、子ども達の可能性を信じ、自尊感情を育てて、子ども達の持っている素晴らしい力を引き出す教育を実践していき、同時に自分自身も教師の資質を磨くために常に研究と修養を忘れずに続けていきたいです。』

 

 自分自身が初任の頃に書いた文章です。今から約12年前ですが、十分、今に通じることですし、今もできていないところが多く恥ずかしい限りです。「初心忘れべからず」という言葉がありますが、まさしくその言葉が当てはまる感じです。

 

 

教育の原点

数年前の夏休みにお休みをもらって家族旅行で鳥取方面へ出かけました。その途中で家族に無理を言って兵庫県の但東町に寄ってもらいました。理由は、東井義雄先生の記念館があるからです。

 

東井義雄記念館では、様々な東井義雄先生の資料を拝見しながら今の自分を振り返らせてもらいました。その中で東井義雄先生の著書も並べられていて「村を育てる学力」の復刻版も販売されていたのですが、その時に目に留まったのが「バカにはなるまい」という東井義雄先生の著書でした。本の題名に驚き思わず購入しました。読んで心に残った部分を『』内で以下にご紹介します。

 

『この本を読んで一番心に残ったところは、101ページの「脳性マヒの重荷の中で」です。以下に抜粋します。

 

もう一つ、この本「十七歳のオルゴール」を書いたのは、町田智子さんという十七歳の娘さんです。この人も脳性マヒにかかって、体は不自由で、ことばも自由に話せない。その人が書いたこの字ですが、一生懸命、力いっぱい書いております。一生懸命書いておりますが、皆さんのようにすらすらと字が書けない。この町田知子ちゃんが

こんな子に生まれて よかったんですか お母さん

こんな子でも 愛してくれますか お父さん

あなたがたの家をこわしてしまった私 

心の中で泣いているでしょうね ごめんなさい

私はいま明るく生きています それが親孝行だと思ってもいいですか

お父さん お母さん それ以外なにもできません ゆるしてくださいね

せめて、力いっぱい明るく生きることによって、お父さんお母さんにかける心配を小さくする。それしか私のできることはないと、力いっぱい生きている。そして、一生懸命に、書きつけている。

なんでこんな子生んだのかと お母さんを責めたわたし

ほんとうは わたしが責められないといけないのにね

お母さん あなたは普通の子と同じように おなかを痛めて わたしを生んでくれた

その期待にこたえられなくて ごめんなさい

わたしは悲しみに出合った それらはわたしにとって 生きる喜びにつながった

生まれてきてよかった 生んでくれてありがとう

この世って すばらしいところですね お母さん

 

この町田知子さんの言葉から何を感じるでしょうか?私は、いのちの教育の原点を感じました。すべての人に読んで感じてもらいたいと思いました。』

 

記念館に行った後に東井義雄先生の生家である東光寺と先生が最初に教師として勤務された豊岡小学校に寄りました。ちなみに豊岡小学校は、私の妻が小学校2年生まで過ごした学校で、何かご縁を感じます。東井義雄先生から教育の原点を再確認させて頂いた家族旅行となりました。

これからも常に感謝の気持ちを忘れずに教育の道を進んでいきます。

 

ほしのむらのがっこう

社会人になってから約20年、教育の道に入ってから約18年の歳月が過ぎました。

本格的に教育現場で活動したのが今から約14年前です。そして大阪での教員生活で担任を持ち始めて約10年です。その頃から個人のブログを始めました。

 

そこには、毎日ではありませんが、教育の実践記録が日記風に残っています。日々の子どもたちとの生活を書いています。私事もありますが、何か皆さんの参考になることがあったら幸いです。以下がそのブログのリンクです。良かったらご覧下さい。

 

『サムライ教師の気まぐれ日誌』http://blog.goo.ne.jp/mataka21

 

 今まで主に私は、インプットを主とした教育活動をしてきました。この今までインプットして実践してきた教育活動をアウトプットする場を設けたいと思い、この度、学びの場を開設しました。それが以下のリンク先です。

 

『ほしのむらのがっこう~みんなの学びの場~』http://hoshimura.exblog.jp/i0/

 

 この教育つれづれ日誌も私にとって素敵な学びの場です。私の地域で学びの場を開設して、地域から地区、地方、全国、世界へ学びの場がつながっていけたらと考えています。

 

 「学びの場には場所は関係なく、志あればどこででも学べる」

 

そんな思いを大切にしながら本物の学びを追及していきたいです。

しばらくは、教育つれづれ日誌を再び休載します。無理言って月に一度、イレギュラーで入れて頂いていました。本当にありがとうございました。

 

 また次の機会にお会いできる日を楽しみにしています。

 それではその日まで失礼いたします。

松浦 博孝(まつうら ひろたか)

ほしのむらのがっこう 学校管理者


社会人経験を得て「であい・つたえあい・つながりあい」をテーマに子どもとともに学ぶ子どもから学ぶ教育活動を展開。様々な学びの場へ自分から積極的に参加して常に教育者修行を行う。同時に様々な武道修行も行っているサムライ教育者。

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