2015.02.23
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地域でできること、地域だからできること <継続できる仕組みづくり >

NPO法人まどり 代表理事 水木 千代美

ご褒美のシールを選ぶ小学生 晩御飯の時間 中高生の学習の様子

 新しいさたけ教室のはじまり

 年度末に、次年度に向けての保護者説明会を行いました。来年度は有償になること、この取り組みは、地域での学習支援の仕組みを作ることを主な目的としていることを、あらためてお話しました。結果、6名の中高生の継続希望があり、新年度も教室を実施することになりました。

 
学習支援教室の継続可能な仕組みを作ることを目的としていますので、生徒側は授業料を無理なく支払うことができ、講師の大学生には講師料を支払うことができ、スタッフや会場にも薄謝が支払えるという三方よしの形を目指しました。
 
中高生は毎週金曜日、18~19時は晩御飯の時間、19~21時が学習時間。会場の広さの都合で、生徒は8~10名、講師1人に生徒3~4人を設定。授業料は2時間1,000円。講師料は交通費込の2時間2,000円。会場費1,000円、ボランティアスタッフの謝礼1,000円×2名を設定。生徒が9人として収入が9,000円、支出は講師料2,000円×3名で6,000円、会場費1,000円、ボランティアスタッフ2,000円の計9,000円と設定しました。
 
しかし、実際は生徒が6名ということもあるのですが、講師:生徒=1:3~4の設定が、講師:生徒=1:1~2でないと学びの場としては難しいことがわかり、生徒6名に対して講師を3名に変更し、スタッフには無償で協力してもらい、会場費を青少年対策委員会から補助してもらうことでなんとか運営できることになりました。
 

心に残った嬉しい出来事

 次年度に向けての説明会後に、まだ1人、継続か否かの返事をもらっていない中学生がいました。前回の話に出てきた、ゴム鉄砲を作り、プリントをトイレに流したグループの中の1人です。1対1で話す機会に、「なあ、○○くん、来年からはお金がいるから、おばちゃんは、おいでとは気軽に言われへんねんけど、来させてくれるんやったら来たら?1人の方が勉強できるんちゃう?」と声をかけました。
 
 その中学生は今年も来ています。4月の最初の教室の日、早めに来て、晩御飯を食べ、19時の勉強が始まる30分前から21時までの2時間半、しっかり勉強した時の嬉しさは忘れられません、終わりの会の時に、大学生の先生から、「〇〇くんの真面目に勉強する姿に感動した」と言われた時の、照れた顔も忘れられません。
 

人の縁に支えられて

 無料教室の時に20人ほど来ていた中高生の、3分の2は、塾に行く、習い事と重なる、親が決めたから、などの理由で辞めました。他の塾に行かせてもらう、習い事の時間と重なる、などで辞めるのは構わないのですが、有料になったことで来られない子どもが出ていなければいいなと思っていました。経済的に厳しい家庭の子どもには、無料で受けさせたいと思いますが、ぎりぎりの運営ではそれも叶いませんし、それ以前の問題で、私が個人情報を知ることも難しいですし、また、同じ地域に住む者として、それを知ることにも抵抗がありました。

 
そんなある日、メールで、寄付の申し出がありました。学習支援の報告をしているFacebookを見た方からでした。教室を行っているコミュニティカフェは、50年ほど前に町びらきをした千里ニュータウンの一角にあります。大家さんは当時から本屋さんをしており、今も一緒に営業をしています。寄付の申し出は、当時、隣に住んでいた方からの申し出でした。「昔、子どもの頃に、立ち読みしていたお詫びを寄付で恩返しが出来れば」と。その話には大家さんも大喜びで、この話を縁にその方と再会できたことを、それ以上に喜んでくれました。50年余りの月日を越えて、大家さんが繋いでくれた縁です。
 

地域ファンド「ゆめまちファンド」

 いただいた寄付を元に、生活保護受給家庭の子どもが通う場合は、授業料が半額となる制度を作りました。佐竹台地区青少年対策委員会(略:青対)に「ゆめまちファンド」という口座を作り、地域の寄付で、地域の子どもの学習支援を支える仕組みです。現在、生活保護受給家庭の子どもはいませんが、いつでも受け入れることができるセーフティネットとなっています。
 
 さたけ教室は小学生の部もあります。現在7名の小学1~4年生が来ています。高校生2人がボランティアで見ていて、開催日は同じ金曜日の16~18時、中高生の部の前に開催しています。参加する子どもたちからは、1か月500円を教材のコピー代としていただいています。今後の取り組みとして、小学生の部を教える中高生ボランティアは、中高生の部に参加する場合は月謝が半額になる、また、ボランティアの対価として、ポイントが溜まれば、図書券などに変えることができる、大学生になったら、教える側になる、などの取り組みにつなげたいと思っています。
 

勉強の先にあるべきもの

 教室を運営して気付いたことは、私が中高生だった約30年前と変わらず、進路は好きなことや向き不向きなどは関係なく偏差値で選ぶということ。勉強が苦手な子どもの、モチベーションを上げる理由にはなかなかならないのが現状です。できれば、勉強に前向きに向き合える、勉強のその先を見せてあげたい、とそう思うようになり、教室と並行して別の取り組みをはじめました。それはまた次回に。
 
【写真の説明(左から)】
・ご褒美のシールを選ぶ小学生
・晩御飯の時間
・中高生の学習の様子

水木 千代美(みずき ちよみ)

NPO法人まどり 代表理事
次世代にmよりよい環境を引き継ぐためのNPOを運営しています。地域の皆さんと、「地域で子育て」を日々行っています。"普通のおばちゃん"の活動をお伝えしていきたいと思っています。

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