2014.10.02
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「なぜ学ぶのか」を考える授業~キャリア教育授業の一環として~

立命館宇治中学校・高等学校 数学科教諭(高校3年学年主任・研究主任) 酒井 淳平

 1、あらためて自己紹介


京都の酒井淳平です。半年ぶりにこの場に復帰できてうれしく思います。引き続きよろしくお願いします。
私の専門は数学で、今は高校1年生対象のキャリア教育授業のカリキュラム作り・実践もしています。

本校のキャリア教育授業(CSL)の取り組みは昨年度から文科省の
「高等学校普通科におけるキャリア教育の実践に関する調査研究」に指定していただいています。
実践も2年目となり、昨年度築いた基礎の上に、生徒の成長の可視化、働く魅力を伝えるプロジェクト、
キャリア教育実践を評価する指標作りなど新たな試みに挑戦しています。

前回に引き続き「高等学校におけるキャリア教育」というテーマを中心に、本校の実践や生徒の様子、
私のキャリア教育についての考えなどを報告したいと考えています。
感想やご意見などいただけたらうれしいです。

今回はキャリア教育授業の一コマを紹介します。テーマは「なぜ学ぶのか」です。

 

2、「なぜ学ぶのか」を考える授業

 

2014年2月、リクルートキャリアガイダンス編集部の方から
「なぜ学ぶのかを考える授業を一緒に作り実践しませんか」との電話がありました。
自分自身どこかで形にしたいテーマだったので引き受けることになりました。

今振り返ると、授業作りを引き受けたときの自分はこのテーマがキャリア教育授業にどれだけ
重要ということには気がついてなかったように思います。

リクルートキャリアガイダンスの山下編集長や江森さんと何度か打ち合わせをし、授業が完成しました。
授業は2時間構成で、1時間目は講義+ワーク、2時間目はワールドカフェ形式で実施しました。

1時間目の授業は中学生からの「なぜ勉強するのか教えてほしい」という問いに答えるところから
はじめました。その後いろいろな人(マララさんの国連スピーチやドラゴン桜でのセリフなど)の
学ぶ理由を紹介し、どれに一番共感するのかを尋ねました。学ぶ理由の背景などを説明しながら、
授業の中で3度「なぜ勉強するのか」を問いました。
1時間の授業の中で生徒たちの学ぶ理由は大きく変化し、視野も広がっていきました。

2時間目は話し合うテーマを3つ用意しました。
まずは「美容師になるときに理科がどう役立つか」など教科と職業のつながりを話し合いました。
次に席替えをして「ホテルマンになるにはどんな教科を学ぶ必要があるか」など職業と教科のつながり
について話しあいました。最後に元の席に戻って「自分が学んでいることはどう役立つのか、
自分は学んだことをどう役立てたいのか」という学びと自分の結びつけを行いました。
生徒たちは思い思いに自分の夢を語り始め、聴く側の生徒も応援のメッセージを送っていました。

授業について、指導案や生徒の感想など詳細はリクルートキャリアガイダンス、電子ブック

http://souken.shingakunet.com/career_g/2014/05/vol402201405-ce5a.html)をご覧ください。

 

3、教室は未来につながっている~キャリア教育の根幹~

 

キャリア教育というと将来の職業や学部を選ぶものと狭くとらえられがちです。
しかし本当にそうでしょうか。

今回、授業を受けた生徒は「今日の授業で見えない未来について考えることができ、
勉強は日々の生活で活かして自分の成長のために必要と知ることができました」
「今勉強していることはすべて役に立つのだと思った」などと感想を書いていました。
今回の授業を通して、生徒たちは目の前の勉強と、自分の将来・社会とをつなぐことができたようです。
勉強の意味を問うこともキャリア教育として大事な要素ではないでしょうか。

将来は現在の延長上に作られます。今、目の前にあることは確実に将来につながります。
しかし目の前にあることが将来につながることに気づくかどうかは自分次第です
(これは大人にもまったく同じことがいえるように思います)。

学校は勉強するところで、生徒は勉強に一番多くの時間を費やします。
だからこそ目の前にある勉強に対してどう取り組むのか、
「なぜ勉強するのか?」という問いに対する答えを自分でどう見つけていくのか、
これらは間違いなく学校で行うキャリア教育としてもっとも重要なものでしょう。

国立教育政策研究所の長田徹氏は「教室と社会がつながれば学習意欲は向上する」とインタビューで
語っておられました。国立教育政策研究所での研究でもこのことは明らかになったようです。
本校の生徒たちの感想やその後の様子からもこのことが読み取れました。

将来への礎をつくるのがキャリア教育ならば、「なぜ学ぶのか」はキャリア教育として
欠かせないテーマである。これは自分自身「なぜ学ぶのか」の授業を実践し、
生徒の反応を見て強く感じたことです。みなさんはどうお考えでしょうか。

ここまでお読みいただきありがとうございました。
このように書いてきましたが、やはりキャリア教育は学部選び、職業選び(+イベント実施)
という認識は多くの方が持っているように思います。
しかしキャリア教育=学部選び、職業選び(+イベント実施)という狭いとらえ方は生徒の成長を
考えると危険だとさえ思います。次回はこのことについて書きたいと思います。

酒井 淳平(さかい じゅんぺい)

立命館宇治中学校・高等学校 数学科教諭(高校3年学年主任・研究主任)
文科省から研究開発学校とWWLの指定を受けて、探究のカリキュラム作りに取り組んでいます。
キャリア教育と探究を核にしたカリキュラム作りに挑戦中です。

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