2014.09.18
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インターネット依存(3)~セルフチャレンジキャンプ~

独立行政法人国立青少年教育振興機構 教育事業部 企画課長 松村 純子

 

 3月17日の「インターネット依存(2)~治療から予防へ~」の中で、平成26年度に青少年教育施設を活用して事業を行う予定と書かせて頂きましたが、今回は、この夏に青少年教育施設で実施しました「セルフチャレンジキャンプ」についてお伝えいたします。

 

 9月11日付けの読売新聞の16面にも紹介されましたが、この夏ネット依存傾向の子ども達を対象に国立の青少年教育施設で「セルフチャレンジキャンプ」を実施しました。

 みなさん既にご存じの通り、本事業の背景には、青少年のスマートフォンを所有する割合やインターネットの平均的な利用時間が増加傾向にあり、ネット依存への対策が喫緊の課題となっていることがあります。

 

 本事業は、文部科学省から国立青少年教育振興機構が受託したものです。「青少年教育施設を活用したネット依存対策研究事業」の趣旨は、文部科学省委託要領・公募要領に「青少年教育施設を活用し、ネット依存傾向の青少年を対象とした自然体験や宿泊体験プログラムの実施を通じたネット依存対策を図る。」と明記されています。

 

事業概要

 8月16日(土)~24日(日) の8泊9日間、御殿場市にあります国立中央青少年交流の家で実施しました。

 参加者は、男子10名(中1:1名、中3:1名、高1:1名、高2:2名、高3:4名、大1:1名)でした。

 関東5名、東北2名、北陸1名、近畿1名、九州1名と全国から参加がありました。

 この後、フォローアップキャンプを11月と1月の2回予定しています。

 

プログラム企画の基本的な考え方

 プログラム立案にあたっては、以下のような考えで進めました。

 (1)久里浜医療センターと連携し、韓国のレスキュースクールを参考に日本版レスキュースクールの試行事業として実施する。

 (2)治療としてだけでなく、教育的観点も取り入れ、体験活動を通じたプログラム内容とする。

 

プログラム

 主なプログラムを紹介します。

 治療としては、認知行動療法を毎日実施しました。ネット依存学習を2日目・4日目・7日目に行い、心理士によるカウンセリングを2日目・6日目に行いました。治療の分野は、久里浜医療センターが中心となり実施しました。

 

 体験活動・自然体験活動は、(1)野外炊飯(食事作り)(2)ウォークラリー・トレッキングを軸に組み立てました。

 (1)野外炊飯は、食事を自分で作ることにより、食べる意欲もわいてくると考えたからです。定番のカレー作りで練習し、流しソーメンやピザ作り、そしてオリジナル料理(メニューから考え、自分たちで買い出しに行き、調理も行いました)とバラエティーにあふれたものとなりました。

 (2)ウォークラリー・トレッキングでは、参加者の体力を考え、施設外を歩き、足ならしを行いました。2回行った富士山トレッキングは、洞窟探検・富士宮口から御殿場口までとこちらも少しずつ負荷を加えていきました。

 体験活動・自然体験活動は、青少年教育施設が中心となり実施しました。

 

 また、今回の事業で大きな役割を担ったのが、「メンター」と呼ばれる大学生です。国立青少年教育振興機構の法人ボランティア10人が参加者と9日間マンツーマンで過ごしました。

 

研究仮説

 ネット依存対策研究事業ということから、以下のような研究仮説を立てました。

 (1)ネット依存治療の最終的な目標は、「ネットの使用がなくなる。」又は「ネットの使用頻度が減る。」であるが、本事業に参加することにより、基本的な生活習慣を取り戻し、日常生活を改善するきっかけとなる。

 (2)長期間ネットから離れることで、ネットやネットゲームへの関心が減少することが期待できる。

 

 この事業の成果については、今後実施される11月と1月の2回のフォローアップキャンプ後に、事業企画運営委員会で検証していきます。

 したがって、今回は、夏に行われた事業の紹介にとどめたいと思います。

 本事業の今後に興味を持って頂けたら、幸いです。

松村 純子(まつむら じゅんこ)

独立行政法人国立青少年教育振興機構 教育事業部 企画課長
元小学校の教師です。勤務地の異動に伴いしばらくお休みをしておりましたが、2年半ぶりの再登場です。「青少年の体験活動の重要性」を発信したいと思います。




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