2014.08.15
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

オリンピックボランティア

独立行政法人国立青少年教育振興機構 教育事業部 企画課長 松村 純子

 2020年の東京オリンピック開催に向けて、一般財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会が東京都庁内に設置されました。

 先日、都庁内の組織委員会を訪ねる機会がありましたので、今回はオリンピックボランティアについてお話しいたします。

 

約8万人のボランティア育成

 2012年のロンドン五輪では、7万人のボランティアの方々が活動されたようですが、2020年の東京五輪では、約8万人のボランティアの活動を予定しているようです。

 ボランティア募集は、2016年のリオ五輪後から職種ごとに順次募集を開始する予定だそうです。

 ロンドン五輪では、7万人のボランティア募集枠に20万人の応募があったようで、オリンピックでボランティア活動をしたい方は沢山いると予想されます。

 

ボランティアは無償、そして「お・も・て・な・し」の心

 オリンピックを運営するには、ボランティアの存在が不可欠です。しかし、オリンピックボランティアは、報酬がでません。全くの無償ボランティアとなります。従って、食費はもとより交通費、宿泊費も全て自己負担となります。

 

 東京オリンピック招致の際に、話題になった「おもてなし」というフレーズは、競技大会のキーワードとなるでしょう。 6年後の2020年東京オリンピック・パラリンピックを成功させるためには、ボランティア活動を行う全員が「おもてなし」の気持ちを持って活動を行わなければなりません。

  

ボランティア活動の内容

 通訳や医療といった専門の職種については資格などの条件がありますが、最も多くの人員を必要とする会場整理などは誰でも参加できます。夏休み期間中ですから、大学生など青少年の活躍もおおいに期待されます。

 ボランティア活動の内容も競技運営のサポートなどのスポーツボランティア、通訳ボランティア、案内ボランティア等多岐にわたります。

 案内ボランティアについては、会場内だけでなく、協議会場付近に加え、空港や駅など各所にブースを設けてボランティアが常駐することも考えられそうです。

 

大学との連携

 6月23日(月)に全国の大学と一般社団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会による連携協定締結式が、行われました。
この協定は,2020年に開催する東京オリンピック・パラリンピック競技大会の成功に向け,大学と同組織委員会がそれぞれの資源を活用し,オリンピック教育の推進や大会機運の醸成等,大会に向けた取り組みを進めるため,相互に連携・協力体制を構築することを目的としています。参加大学は本学を含めた国・公・私・短大合わせて552大学で,日本の大学のおよそ半数にのぼります。

 

オリンピック教育とは

 「一般財団法人嘉納治五郎記念国際スポーツ研究・交流センター」の資料によると、オリンピック教育のねらいは、単に「オリンピックを学ぶ」ことだけではなく、オリンピックを題材として、世界に広がる多様な価値を学ぶことにあります。オリンピックの理想を取り入れながら、体育やスポーツという分野にとどまらない教育活動や文化活動が対象や目的に応じた方法を用いて、各国で行われています。

 

 オリンピズムの理想をより具現化するために、IOCは、その価値として、「卓越(Excellence)」、「友情(Friendship)」、「尊敬(Respect)」の3つを設定し、この3つのオリンピック・バリューをよりどころとして「スポーツ・フォー・オール」、「スポーツを通じた平和活動」、「スポーツを通じた教育活動」、「女性とスポーツ」、「スポーツを通じた開発」、「スポーツと環境」の6領域にわたる活動を行っています。

 

 「スポーツを通じた教育活動」の一つとして、オリンピックの価値教育プログラム:OVEP(Olympic Values Education Programme)を作成しています。このプログラムは、若者を対象とした教育プログラムの充実を図り、オリンピック・バリューをさらにグローバルなものとして展開していくことを意図しており、5つの教育的価値「努力する喜び(Joy of effort)」、「フェアプレイ(Fair play)」、「他者への尊重(Respect for others)」、「卓越さの追求(Pursuit of excellence)」、「身体、意志、心の調和(Balance between body, will and mind)」が示されています。

 

日本におけるオリンピック教育

 1998年の長野冬季大会の際に行われた一校一国運動は、その代表例です。長野市内の小中学校、特別支援学校の各校が応援、交流する国や地域を決め、文化交流に取り組んだ一校一国運動は、IOCからも高い評価を受けたそうです。その後開催された複数の大会において、オリンピック教育プログラムの一部として継承されるとともに、日本国内における国際理解教育の一環としてもインパクトを与えるものとなりました。

 

 現在では、学習指導要領の改定に伴い、中学校、高等学校の体育分野に「オリンピック」という文言が明記され、教科としての体育において、オリンピックを学ぶこと、オリンピック通して学ぶことが定められています。日本におけるオリンピック教育の実践は、1964年東京大会から長い歴史を有し、数多くの蓄積があります。体育に限らず、特別活動や課外活動も含む学校教育、また生涯学習としても学ぶことができるはずです。

 

青少年の活躍の場

 2020年の東京オリンピック・パラリンピックは、日本の青少年の活躍の場だと思います。

 自己肯定感の持てない日本の子供達、海外留学したがらない大学生、コミュニケーション能力が低い青少年等々、最近の日本の青少年に対するイメージは悪くなる一方です。

 6年後、競技大会の場でオリンピックボランティアの中心となっているのは、現在の中・高校生です。「おもてなし」の心は、急には育ちません。今から6年後の東京オリンピックに向けて、様々な取組をして行く必要があると思います。

 

 学校教育に携わる先生方だけでなく、青少年教育に携わる当機構も、組織委員会の皆さんと一緒に今からできることを考えていきたいと思います。

松村 純子(まつむら じゅんこ)

独立行政法人国立青少年教育振興機構 教育事業部 企画課長
元小学校の教師です。勤務地の異動に伴いしばらくお休みをしておりましたが、2年半ぶりの再登場です。「青少年の体験活動の重要性」を発信したいと思います。




ご意見・ご要望、お待ちしています!

この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)

pagetop