2014.07.30
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子どもの貧困問題

独立行政法人国立青少年教育振興機構 教育事業部 企画課長 松村 純子

 厚生労働省が発表した「子ども(17歳以下の子ども)貧困率」(2012調査)が、16.3%と過去最悪の状況となっているそうです。

 子ども達は、進学の断念だけでなく、満足な食事が学校給食だけだったり、医療を受けられないケースもあるようです。

 1月に施行された「子どもの貧困対策推進法」に基づき、基本方針となる大綱は、今月にまとまるはずでしたが、来月に延ばされました。

 今回は、「子どもの貧困問題」について、少し考えてみようと思います。

 

就学支援制度について

 「子どもの貧困問題」については、学校現場で、先生方が一番感じていることだと思います。しかし、家庭の問題にどこまで入りこんでいいのかと悩んでいる先生も多いと思います。

 基本的なことですが、要保護および準要保護児童生徒の認定については、昭和38年に「文部省初等中等教育局長・文部省体育局長」から各都道府県教育委員会教育長あてに通知が出されています。

 また、就学支援制度については、学校教育法において、「経済的理由によって、就学困難と認められる学齢児童又は学齢生徒の保護者に対しては、市町村は、必要な援助を与えなければならない。」(同法第19条)とされています。

 要保護者は、生活保護法第6条第2項に規定する要保護者のことであり、準要保護者は、市町村教育委員会が生活保護法第6条第2項に規定する要保護者に準ずる程度に困窮していると認める者のことです。

 市町村が実施する就学援助事業のうち、国は要保護者に対して行う事業に要する経費について補助を行っています。

 要保護者の補助対象品目は、学用品費・体育実技用具費・新入学児童生徒学用品費等・通学用品費・通学費・修学旅行費・校外活動費・クラブ活動費・生徒会費・PTA会費・医療費・学校給食費と定められています。

 

一人親家庭の貧困率

 全ての一人親家庭にあてはまるわけではもちろんありませんが、一人親世帯の貧困率は、54.6%に上るそうです。日本ではその大半が母子家庭であり、非正規雇用で働いているのが実態です。

 非正規で働く母親が2つ3つと仕事を掛け持ちしても生活苦からなかなか抜け出せないようです。

 母親が夜遅くまで、働いているため、子ども達だけで自由に過ごす時間が多く、夜更かしや朝寝坊が多いようです。担任していた時、朝、連絡なく休んでいる子どもの家に電話をし、2時間目の休み時間に迎えにいくとまだ寝ているということがあったと思い出しました。

 その時も子ども達に規則正しい生活習慣を身に付けることが必要だと感じました。

  

NPO法人の取組

 困窮している家庭の親は、子どもの教育や成長の目を配る余裕がないことが多いようです。

 国公立の青少年教育施設は、安価で事業を実施していますが、自然の中にあるため、交通費はかかってしまいます。

 費用のかかる旅行やキャンプなどにつれていくことも難しいので、NPO法人を中心にご飯を食べたり、一緒に遊んだりする「子どもらしい生活」ができるよう支援する活動も各地で始まっています。

 これらNPO法人と子ども達をつなぐには、先生方の協力も必要でしょう。

 先生方には、地域でどんなNPO法人が活動しているのか把握されているか、またNPO法人の活動が情報提供がされているのか気になるところです。

 校務分掌で、渉外担当は、教頭先生になっていることが多いですが、地域担当という文章があるともっと地域とつながれるのではないかと思っています。

  

体験格差

 今、子どもの世界に「体験格差」が生まれています。この「体験格差」は、家庭の経済格差から生じ、さらに経済格差が学力格差を生んでいると考えられています。

 今回の発表を受け、青少年教育機構としても、様々な部署でこの「子どもの貧困問題」に対応した取組を進める予定です。 

松村 純子(まつむら じゅんこ)

独立行政法人国立青少年教育振興機構 教育事業部 企画課長
元小学校の教師です。勤務地の異動に伴いしばらくお休みをしておりましたが、2年半ぶりの再登場です。「青少年の体験活動の重要性」を発信したいと思います。




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