2014.04.01
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キャリア教育の授業でこそ生徒が幸せになる!

立命館宇治中学校・高等学校 数学科教諭(高校3年学年主任・研究主任) 酒井 淳平

 日に日にあたかかくなってきました。
 学校に勤めていると、12月や1月よりも3月や4月の方が
「いよいよ新しい年がはじまる!」という気持ちになります。

 あわただしい年度末ですが、きっちりしたふりかえりと
来年度への準備・目標設定をする時間は確保したいものです。
 前回「キャリア教育の授業こそが生徒を幸せにする授業」
だと書きました。今回はこのことについて書きます。
 

 1、幸せな人とキャリア教育


前野隆司先生らの研究結果から、幸せな人は下の2つを満たしている人です。

(1)「やってみよう!」
・私は社会の要請にこたえている
・私は有能である
・私のこれまでの人生は変化、学習、成長に満ちていた
・今の自分は本当になりたかった自分

(2)「ありがとう!」
・人の喜ぶ顔がみたい
・私のことを大切に思ってくれている人がいる
・私は人生において感謝することがたくさんある
・私は他者に親切にし、手助けしたいと思う


 これらがキャリア教育とどうつながるかわかりますか。
 中央教育審議会答申では「キャリア教育はキャリア発達を促す教育」
と示されました。同答申では「キャリア発達とは、社会の中で自分の役割を
果たしながら、自分らしい生き方を実現していく過程」とも書かれています。

 「社会の中で自分の役割を果たしながら、自分らしい生き方をする」
役割を果たすということは、他者からの何らかの要請にきっちりこたえることです。

   また役割を果たす過程で自分が持っている力にも気がつきます。つまり
「社会の中で自分の役割を果たしながら、自分らしい生き方をする」
を実行できている人は(1)「やってみよう!」を満たす人なのです。

  さらに自分の役割を果たしながら生きていくときに、人は必ず他者の喜ぶ顔を見ます。
そうしたことが重なると自然と人に手助けしたいと思い、感謝します。
マズローの欲求段階説でいえば「自己実現の欲求」にあたるでしょう。
これは(2)「ありがとう!」にほかなりません。

 このように考えると、中教審答申に書かれたキャリア教育の目標を達成することが、
幸せの条件(1)(2)を満たすことにつながります。だからキャリア教育が生徒を幸せにするのです。

 

2、本校の実践~キャリア教育授業(CSL) 


 本校では今年度より正課の授業としてキャリア教育授業(CSL)を実施しています。
CSLは高校1年生を対象とし、”将来を考えるキャリアデザイン”、
”自ら参加するボランティア活動を通して社会に関わるサービスラーニング”、
”人との関わり方を学ぶソーシャルスキル” の3本柱でカリキュラムを構築しました。

 キャリア教育授業を通して生徒に伝えたいこと、生徒につけてほしい力は
いっぱいありました。1年間の授業を終えて確実にいえること、それは
「CSLは生徒が幸せになるための授業」だということです。

 授業を通してついた力を生徒に聞くと「人と関わる力」「自分を見つめる力」
「将来について考える力」などが上位にあがりました。
これらはこちらのねらいでもあったのですが、年度末の口頭試問(面接試験)を通して
わかったことは生徒たちがボランティア活動で得たものの大きさです。

 生徒たちは授業の一環として自らボランティア活動を探し、参加しました。
活動を終えて多くの生徒が「喜んでもらえてうれしかった」
「私でも役に立てることがあると実感できた」と感想を書いていました。
そして口頭試問では多くの生徒がボランティア体験で得たものの大きさについて語りました。

 生徒たちは「役割を果たし」「要請にこたえ」「人の喜ぶ顔を見る」ことができたのです。
これらが幸せの条件につながることはいうまでもないでしょう。  
 

  「キャリア教育は生徒を幸せにするものだし、キャリア教育授業は生徒が幸せになる授業」。
自分自身実践を重ねる中で前野先生のお話をお聞きする機会に恵まれ、この思いが確信に
変わりました。 

  「生徒が幸せになる授業」という視点を忘れずに、2014年度からも実践を重ねていきたいと
思います。 

 ここまで読んでいただきありがとうございました。気がつけばもう10回というのが本音で、
この間あっという間でした。自分自身このような場を与えていただき、読んでくださる方と出会え
すごく感謝しています。

   生徒が幸せになるキャリア教育は来年度以降も続けていきますし、こういう取り組みを
する学校が増えて、幸せな高校生が増えればと思います。
 ”生徒が幸せになるキャリア教育をぜひ一緒に取り組んでいきましょう!”
という訴えを最後のまとめにしたいと思います。半年間、ありがとうございました。


(参考文献)「幸せのメカニズム」前野隆司著、講談社現代新書、2013年

☆キャリア教育授業の報告書が必要な方はご連絡ください。
 数に限りはありますが、可能な限り送付させていただきます。
(junpei*ujc.ritsumei.ac.jpへお名前、住所、所属をご連絡ください。
   メールを送信する際、*は@にしてください)
 

酒井 淳平(さかい じゅんぺい)

立命館宇治中学校・高等学校 数学科教諭(高校3年学年主任・研究主任)
文科省から研究開発学校とWWLの指定を受けて、探究のカリキュラム作りに取り組んでいます。
キャリア教育と探究を核にしたカリキュラム作りに挑戦中です。

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