2014.03.17
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インターネット依存(2) ~治療から予防へ~

独立行政法人国立青少年教育振興機構 教育事業部 企画課長 松村 純子

 以前、「インターネット依存 ~青少年の喫緊の課題への対応~」について書きましたが、今回は「インターネット依存(2) ~治療から予防へ~」と題し、予防の取組事例を中心に書きたいと思います。

 前回紹介させていただきました「全国青少年相談研究集会」ですが、平成26年1月20日~22日に無事終了いたしました。「わが国のネット依存の実態と治療の実際」と題した1日目の基調講演は、席がなくなるのではないかと心配したほどで、3日間の延べ参加者数は、738名でした。

 このことからも、「インターネット依存」に対する関心の高さが、わかります。

 すでに、専門の病院で治療が必要な子どもたちも大勢いるので、治療は必要だと痛感しますが、対症療法だけでなく、風邪等と同様に予防することも必要だと感じています。

 

ネット安全安心全国フォーラム ~青少年が自ら気づき、考え、共有する時代へ~ 

 平成26年3月8日に文部科学省が主催する「ネット安全安心全国フォーラム」に参加してきました。

 サブタイトルに「~青少年が自ら気づき、考え、共有する時代へ~」とありましたが、青少年が体験から気づき、考え、学んだ過程についての事例発表がありました。いくつかの事例を簡単に紹介いたします。

 

(1)「高校生ICT Conference2013 ~考えてみよう!情報モラル・情報リテラシー教育の5W1H~」

 「高校生ICT Conference」は、次世代の社会を支える高校生が、自ら考え、他者の意見を聴き、議論し、意見をまとめ、発表することにより、将来のインターネット社会に臨む環境整備の一助となることを目的に活動されています。

 「高校生ICT Conference」が持つ3つの意味は、当事者である高校生自身の気づき、年少の子どもに行動できる高校生の育成、次世代の保護者の育成。だそうです。

 平成15年度から、大阪私学教育情報化研究会を中心に実施され、平成23年度からは、新たな取り組みとして、「熟議」の手法を導入し「高校生熟議」と題し、「ケータイやインターネット」という高校生にとって身近なテーマを設定したそうです。

 

 2011年度の、熟議テーマは「ネットとケータイの問題点」「私たちにとってのケータイやインターネット」「これからのネットとケータイを考える」の3つで、11校52人が参加。

 2012年度は、東京会場では「スマホって何?」、大阪会場では「スマホ時代の在り方・使い方」、サミットのテーマは「高校生が考えるスマートフォン時代の情報モラルと利活用」で、17校79人が参加。

 2013年度は、北海道・東京・奈良・大阪・大分の5会場で2回「高校生熟議」を開催し、1回目のテーマは「何が知りたい?!情報モラルとリテラシー」、2回目のテーマは「高校生だからできる『情報モラルとリテラシー教育』」、サミットのテーマは「考えてみよう!情報モラルとリテラシー教育の5W1H」で、51校267人が参加。

 3年間で参加する高校生が5倍に増えていることに驚きましたが、当日は、高校生サミットに参加した高校5校の中の3人が「輝かしい未来に向けて私たちが出来る事」と題し、小中学生に向けて、家族に向けて、行政に向けて、ケータイ事業者に向けて、ケータイゲーム事業者に向けて、高校生自身の言葉で堂々と発表していました。

 輝かしい未来に向けて、「スマホに使われるのではなくて、スマホを使おう!」と言った女子高校生の言葉が印象に残っています。

 

(2)「中学生ワークショップ(ネット依存度チェック制作)」

 「中学生ワークショップ」は、中学生がインターネット活用やリスク対策などを議論することで、自分たちの課題を考え、状況の改善に結びつけることを目的にワークショップを行っています。

 今回は、「ネット依存」について話し合いました。

 静岡の特定非営利活動法人e-Lunchが中心となり、ワークショップで出された意見をもとに「ネット依存度チェックアプリ」を試作し、公開されました。

 この事業は、大学生がメンターとなり、事業を進めたところが、ポイントだと思います。当日も事業に関わった大学生が、発表しました。

 

 青少年が意識し続けたい5つの心得

 事例発表の後、パネルディスカッションが行われました。

 パネラーのネット教育アナリストの尾花紀子さんが、お話された中でお伝えしたいと思うことがあります。

 尾花さんは、情報モラルについて「高校生になるみんなに贈る5つの心得~カッコイイ利用者になるために、これだけは実践しよう!」という講演をされています。

 お伝えしたいのは、その中の「青少年が意識し続けたい5つの心得」です。

 その1:世の中、大事なことはたいてい面倒くさいんだ!

  →それでも頑張ってやってみよう。きっといいことがある。

 その2:ならぬものはならぬのです!

  →ネット利用のルールやモラルを守って使えば、トラブルは遠ざかる。

 その3:古い傷は、忘れたころによみがえるかも?!

  →将来の自分を困らせるようなことは、絶対にやめよう。

 その4:スマホの時代だからこそ帰るコールをしよう!

  →歩きスマホは、本当に危険。暗い夜道はなおさら。忘れないで。

 その5:インターネットは永遠に実験中、考えて使おう!

   →これからも新しい技術は出続ける。用心しながら使える大人になろう。

 デジタル用語ではないこの言葉が、進級・進学を控えた今の時期に青少年に必要なのではないかと思いながら、帰路につきました。

 世の中から、スマホやインターネットを無くすことはもうできません。どうやって付き合っていくかを子どもも大人も考えなければならないのだと思います。

 

 本年度もあと2週間ほどで終わりますが、H26年度に青少年教育施設を活用して、インターネット依存の事業を行う予定です。

 インターネット依存については、これからも情報提供したいと思います。 

松村 純子(まつむら じゅんこ)

独立行政法人国立青少年教育振興機構 教育事業部 企画課長
元小学校の教師です。勤務地の異動に伴いしばらくお休みをしておりましたが、2年半ぶりの再登場です。「青少年の体験活動の重要性」を発信したいと思います。




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