1、夢を持つにはどうすれば?
「将来どうしたい?」「夢は何?」
みなさんはこう質問されたらどう答えますか?
学校では必ずといっていいほど生徒にこれらの質問をします。
明確に答える生徒もいれば、これから考えるという生徒もいます。
教員は誰もが、子どもたちには夢や目標を持ち、そこに向かって
夢を育てながら頑張ってほしいと思います。
そんな思いがあるから冒頭のような質問をするのでしょう。
では夢を持ち育てるためにはどうすればいいのでしょうか。
「夢を持て」と言われることは多いですが、どうすれば夢を持ち、
その夢を育てていけるのかについては案外言われないような気がします。
私は夢を持ち育てる方法は2つあると考えています。
そして「2つ」というところにポイントがあると考えています。
みなさんはこの2つは何だとお考えでしょうか。
2、夢を持ち育てる一つ目の方法~イチロー型~
夢を持ち育てる方法の1つ目の方法は「イチロー型」です。
まずは次の作文をお読みください。
「将来の夢」
ぼくは大人になったら、世界一のサッカー選手になりたいと言うよりなる。
世界一になるには、世界一練習しないとダメだ。
だから、今、ぼくはガンバッている。
今はヘタだけれどガンバッて必ず世界一になる。
そして、世界一になったら、大金持ちになって親孝行する。
Wカップで有名になって、ぼくは外国から呼ばれて
ヨーロッパのセリエAに入団します。
そしてレギュラーになって10番で活躍します。
(本田圭祐選手の小学生時代の作文より一部抜粋)
ACミランに移籍したサッカー・日本代表の本田圭祐選手が
小学校のときに書いた作文です。
おそらく本田選手がモデルにした作文は次のものではないでしょうか。
僕の夢は一流のプロ野球選手になることです。
そのためには、中学、高校と全国大会にでて活躍しなければなりません。
活躍できるようになるためには練習が必要です。・・・・
(イチロー選手の小学生時代の作文より一部抜粋)
ご存知の方も多いのではないでしょうか。
NYヤンキース・イチロー選手が小学校の時に書いた作文です。
夢を持ち育てる一つ目の方法「イチロー型」とはイチロー選手や
本田選手の方法そのものです。「なりたい自分像」「夢」を明確に描き、
そこに向けてのステップを作り、一歩ずつ進んでいくというものです。
イチロー選手や本田選手の作文が有名になったこともあり、
この方法は広く知られるようになりました。おそらく学校や家庭でも
「夢がないなら、(イチローや本田のように)夢を持ちなさい
(そうすれば頑張れる)。」というような言葉かけがされることは
少なくないでしょう。
イチロー選手も本田選手も、明確な夢や目標を持ったからこそ
プロになれたし、超一流選手になれた。このことは間違いありません。
明確な夢や目標があるとき、それを達成するには「イチロー型」が
ベストでしょう。夢の実現には明確な目標が必要で、
何となくでは夢は実現しないということも真実かもしれません。
3、夢を持ち育てる二つ目の方法~川畑さん型~
しかし一方で「イチロー型」がすべてではないように思うのも事実です。
自分が子どものころ、「将来の夢は?」と聞かれたときに
明確な答えを言えなかったからこう思うのかもしれませんが。
このように漠然と持っていた「イチロー型がすべてではない」という思い、
これを確信に変えてくれたのがサモアでの研修でした。
夢を持ち育てる二つ目の方法は「川畑さん型」です。
JICAサモアで経済の専門家として活躍されている川畑さん。
懇親会で隣の席になったこともあり、ゆっくりお話しできました。
お話しするまでは、川畑さんは経済の専門家なのだから、
「幼いころから勉強が得意で好き→いい高校・いい大学→
大学院→学んだことを活かせる職業として今の仕事」というキャリアを
勝手に想像していました。
ところが実際の川畑さんのキャリアは全然違うものでした。
・勉強は嫌いで、高卒で就職。
・興味があった海外協力隊に偶然参加する。
・活動先で偶然の出会いから、国際協力の仕事に興味を持つ
・国際協力分野で自分のやりたい仕事につきには大学院卒が必要とわかり、猛勉強
・アメリカの大学に入学→日本の大学院へ→今に至る
川畑さんのキャリアをエッセンスだけ書くとこんな感じでしょうか。
偶然が重なっていますが、川畑さんは自分の持ち場で常に一生懸命頑張り、
その結果偶然に出会われていました。つまり川畑さんのキャリアは
「目の前のことを頑張る中で、偶然の出会いから夢を持ち、
その夢を育てて今がある」というものでした。
川畑さんとの出会いで夢を持ち育てる2つ目の方法が確信に変わりました。
夢を持ち育てる2つ目の方法は
「目の前にある、自分ができることを精一杯頑張ること」です。
私はこれを川畑さん型と名付けました。
4、2つの組み合わせで夢を持ち、夢を育てる
夢を持ち育てる方法は次の2つです。
1、イチロー型
2、川畑さん型
おそらくこの2つを組み合わせて人は夢を持ち育てていくのでしょう。
イチローだって、途中の過程では目の前のことに精いっぱい取り組んだに
違いありません。川畑さんも自らの進む道を発見されてからは、
イチローのようにステップを作って努力されています。
ただ、どちらか一方ではなく、2つの組み合わせであること。このことは
強調したいと思います。
2つの組み合わせとわかれば、イチロー型の典型ともいえる
「なりたい職業→学部→大学」という、一部の職業をのぞいては現実的では
ない進路指導のみで生徒に将来を考えさせえることはないでしょう。
今夢がなくても、目の前のことを頑張れば夢は育ち、見つかっていくのです。
夢を持ち育てる方法は2つ。このことに気づいた今なら
「夢がない」という生徒にも自信を持って次のように言えます。
「夢が見つかってなければ、目の前のことを頑張り、所属する集団の中で
自分がいなくてはならない存在になろう。そして夢が見つかったら
イチローや本田のように、夢へのステップを考え、一歩ずつ進んでいこう」
気がつけば残り2回となりました。
次回はキャリア教育授業の目的について書きたいと思います。
9回目の記事は3月13日(木)公開予定です。
お読みいただければ幸いです。

酒井 淳平(さかい じゅんぺい)
立命館宇治中学校・高等学校 数学科教諭(高校3年学年主任・研究主任)
文科省から研究開発学校とWWLの指定を受けて、探究のカリキュラム作りに取り組んでいます。
キャリア教育と探究を核にしたカリキュラム作りに挑戦中です。
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