2014.01.21
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「言語技術」が日本のサッカーを変える(by田嶋幸三)

独立行政法人国立青少年教育振興機構 教育事業部 企画課長 松村 純子

  「言語技術」が日本のサッカーを変えるという題を見て、皆さんは何を考えられたでしょうか?

  これは、日本サッカー協会(JFA)副会長の田嶋幸三さんの本の題名です。

 1月15日、田嶋幸三さんのお話を聞く機会を得ました。田嶋さんは、浦和南高校主将として全国高校サッカー選手権優勝。古河電工に入社し、日本代表として活躍され、2001年にはU-17日本代表監督として世界大会出場を果たされました。輝かしいサッカーの経歴の持ち主で、現在JFAの各種委員を歴任し、日本代表の強化や若年層の育成に取り組まれていらっしゃいます。

 

ピッチの外」の課題から

 田嶋さんは、授業で質問を投げかけた時、日本の子供たちは、しーんと静まりかえる。なぜなら子供たちの心の中に間違ってはいけないという考え方が染みついてしまっているからだと書かれています。こうした環境で成長していく子供たちから、失敗を恐れない勇気あるストライカーは育たない。ストライカーとは、「俺が考えたやり方で挑戦する」という失敗することを恐れない精神から生まれるものだと述べられていました。

 

  「言語技術」とサッカーの関係についての詳細は、是非実際に本を読んで頂けたらと思いますが、本にも書かれていますが、お話の中で、印象に残った言葉をお伝えしたいと思います。もし心に響いた言葉がありましたら、学校で子どもたちにも伝えて欲しいなぁと思います。

  何故かというと、田嶋さんが作られた「JFAアカデミー福島(全寮制の中学校)」では、これらの名言をアカデミーの寮の階段の蹴り上げ部分に貼って、階段を昇る度に目に付くようにしているそうです。

 階段は下から見上げれば全員が見えますし、ミッションやスローガンは、いつも全員が見ることが大切であり、いいアイデアだなぁと思いました。寮生の身体にこれらの言葉を染み込ませているそうです。

 

練習は嘘をつかない

 田嶋さんが、一番嫌いなことばは、試合に負けた後、「あんなに試合前に話したのに」「ハーフタイムで注意したのに、できなかった」と言った監督の言葉だそうです。練習でやっていない事はできないのです。選手を変えていくのは、練習しかないと述べられています。

 では、これをサッカーではなく、学校教育に置き換えたらどうでしょう?「練習」は「毎日の授業」になるのでしょうか?自分自身の職場に置き換えたらどうでしょう?「練習」は「準備や日々の仕事」になるのでしょうか?こういう名言を聞く度に自分の立場に置き換えて考える癖をつけたいと私は思います。

 

失敗とは転ぶ事ではなく、起きあがらないことである

 これは、カナダ出身の女優(メアリー・ビッグフォード)のものだそうです。

 田嶋さんはこう言っています。「何故、中村俊輔はあんなにすごいパスが出せるのでしょうか。実は、失敗をたくさんしているからです。このタイミングだったら通るとか、通らないとかトライ&エラーをしているのです。失敗を怖れてはいけません。16歳を過ぎると世界大会があって失敗は許されなくなります。失敗したら即負けという世界です。そのためにも草サッカーなどの場で、失敗をたくさんして経験を積んだ方がよいのです。」

 

 以前、『「失敗」と書いて「せいちょう」と読む(by野村克也)』を書かせて頂きましたが、『「失敗」と書いて「せいちょう」と読む』の中で、大切なのは、失敗を次につなげることなのだ。』と書かれていました。

 これだけ沢山の方々が、小さな失敗は必要だと言っているのに、子供たちに、「失敗させたくない」と思われる方が多いのは・・・・どうしてなのでしょうか?

 

学ぶ事をやめたら、教えることをやめなければならない

 この言葉は、元フランス代表監督のロジェ・ルメールのものです。田嶋さんは、この言葉を聞いた時、胸をえぐられるような衝撃を受けたと書いています。常にサッカーは変化し、子供たちも変わっていますし、それを学ぼうという気持ちがなかったら、大事な子供を指導できないと書かれています。田嶋さんは、いい加減な気持ちで教えることを否定する大切な言葉なので、指導者養成においてはこの言葉を必ず紹介しているそうです。

 

 私たち、教育に携わる者は、この言葉を忘れてはならないと私も思います。教員は、教育基本法第9条や、教育公務員特例法第21条に記載されている通り、絶えず研究と修養に努めなければならないのは、話すまでもありません。

 

 話は飛びますが、以前書かせて頂いた「第30全国青少年相談研究集会」が来週開催されます。おかげさまで320人を超える申し込みがありました。平日3日間にも関わらず学校の先生方が36名も申し込んでくださいましたことは、主催者にとって嬉しいことです。。 

 この研修が、先生方にとって有意義なものとなるよう願っています。常ぶ事をやめない先生を社会教育も応援しています。

松村 純子(まつむら じゅんこ)

独立行政法人国立青少年教育振興機構 教育事業部 企画課長
元小学校の教師です。勤務地の異動に伴いしばらくお休みをしておりましたが、2年半ぶりの再登場です。「青少年の体験活動の重要性」を発信したいと思います。




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