2014.01.17
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学校でのキャリアカウンセリングでもっとも大切なこと

立命館宇治中学校・高等学校 数学科教諭(高校3年学年主任・研究主任) 酒井 淳平

お読みいただきありがとうございます。
今年もよろしくお願いします。

2014年が始まりもう半月以上たちました。
本校ではまもなく中学入試が始まります。
入試会場で、本校に合格するために頑張ってきた
子どもたちや保護者の姿を見ると、こちらも気が引き締まります。
 

1、キャリアカウンセリングでもっとも重要なこととは?

4回目、5回目と学校におけるキャリアカウンセリングの
ポイントを書いてきました。ポイントは以下の2つでした。

 
「1、生徒の話をじっくり聞くこと」
「2、思いを行動にうつす支援をする」

 

この2つのポイントは確かに重要です。しかし生徒と接していると
「あることをしなかった生徒はここ一番で頑張れないのかもしれない」
と思うときがあります。学校だけの話を思っていましたが、
民間企業の方とお話していると、企業の方も同じことを言われていました。
今回はこのことについて書きたいと思います。あることとは何だと思いますか。

 

いきなりですが、一つ質問です。ある生徒が
「僕は理系行っても大丈夫ですか?」と聞いてきました。
手元にはテストの成績や模擬テストの成績などがあります。
生徒の性格もある程度把握しています。
この生徒にどう答えるのが良いと思いますか?
じっくり話を聞き、思いを行動にうつす支援をし、
それ以外に何が重要だと思いますか。
 

2、壁を乗り越えるエネルギーになることは?
 

「自分で来たいと思ってきた学校やし頑張る」
生徒からこんなセリフを何度も聞いたことがあります。一方で
「保護者(先生)に勧められ、志望校をかえさせられた」
という生徒も0ではありません。

普段はほとんど気にならないこれら2つの発言ですが、
”勉強についていけない”、”クラブが上手くいかない”、
”人間関係に苦しむ”など何らかの壁にぶつかり、
その壁を乗り越えようとするとき、大きく影響するときがあります。

 

自分で決めたという実感を強く持っている生徒は、目の前の壁を
自分で乗り越えようと頑張れる場合が多いのですが、
人に決めてもらったと思っている生徒は、ときとして壁に
押しつぶされてしまいます。つまり「自分で決めた」という実感が、
壁を乗り越える大きなエネルギーになるときが少なくないのです。

 

おそらく読者のみなさんも多かれ少なかれ、
「自分で決めたから頑張れた」という経験をお持ちではないでしょうか。
生徒たちもそれは同じなのでしょう。
「自分で決める」ということをちゃんと経験した生徒は、
ここ一番というときにより頑張れると感じる場面には必ず出会います。
 

 

3、”自分で決めた”という実感を持たせる支援を!

進路選択でどんな道を選んでも、その先で上手くいかないこともあるし、
不条理なことにも出会います。つまりほぼ間違いなく壁にぶつかります。
壁にぶつかったときどうなるのか、これは大きなポイントです。

日本の学校教育は丁寧ですが、一方でただ通っていれば
何でも与えてもらえるという側面があることは否めません。
(最近その傾向がより強まってる気がします)
そんな中にいると”自分で決める”という作業を怠ってしまいかねません。
そうなると自然と判断基準も他人任せになります。

判断を他人に任せるのはある意味楽かもしれません。
でも実はすごく辛く、大切な力をつける機会を失うことなのです。
そして悲しいかな、就職する会社さえも自分で決められない
大学生がいるという現実もあり、そういう学生は就職先で壁に
ぶつかったらすぐに仕事をやめてしまう場合も少なくないのです。。

 

もちろんいろいろ考えて不安になっている生徒の声に耳を傾ける
ことは必要です。また何かを決めるときに100%自分で決める
ということはほとんどないでしょう。誰もがいろいろな人の意見を聞き、
いろんな人に影響されながら物事を決めていきます。
でも最後の最後は「自分で決める」という経験をさせること。
少なくとも「自分で決めた」という実感を持たせること。
これが何より大切なポイントだと思います。

 

「自分で決める」ということはいいことも悪いことも含めて、
結果まで自分で責任を持つということです。
もちろん「自分で決めること」は怖いでしょうし、話を聞き、怖さを
言語化していくサポートは必要でしょう。
でも本当に生徒のことを思うなら、”最後は自分で決めるしかない”
ということを実感させることが何より大事なサポートなのです。
そして「自分で決めた」という実感が、次の世界で頑張る
大きなエネルギーになるのです。

 

ここまで書けばはじめの質問の答えはわかるでしょう。
今回の文系・理系選択でも最後の最後まで悩んだ生徒がいました。
私はその生徒に情報は与えましたが、
「どっちもメリット・デメリットはあるし、最後は自分で決めよう」
を言い続けました。その生徒は
「よし、理系に進んで頑張ります」と自分で宣言し、理系を選びました。
自分で決めることができたという事実を大切にしてほしいと思います。

 

4、最後に
 

3回に渡ってキャリアカウンセリングについて書いてきました。
私なりの意見であり、違う意見をお持ちの方もおられるかもしれません。
カウンセリングについて、感想やご意見をお聞かせいただけたらうれしいです。

次回からは話題を少し変えていきます。
引き続きよろしくお願いします。 

酒井 淳平(さかい じゅんぺい)

立命館宇治中学校・高等学校 数学科教諭(高校3年学年主任・研究主任)
文科省から研究開発学校とWWLの指定を受けて、探究のカリキュラム作りに取り組んでいます。
キャリア教育と探究を核にしたカリキュラム作りに挑戦中です。

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