2014.01.02
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ミクロネシア諸島自然体験交流事業(4)「チュークの人々との交流を通して感じたこと」

独立行政法人国立青少年教育振興機構 教育事業部 企画課長 松村 純子

   

 あけましておめでとうございます。

 2014年が、平和なよい年になりますよう願っています。

 そして、読者の皆様にとって幸せな年になりますように。

 

 ミクロネシア諸島自然体験交流事業シリーズもいよいよ今回が最終回です。

1.トノアス島の紹介

 州都であるウエノ島(統治時代には春島と呼ばれていました)から、無人島(ピサール島)に行く途中にトノアス島(夏島)に寄りまし
た。ウエノ島から、ボートで30分。日本の統治時代には、夏島と呼ばれ、軍港や南洋庁のトラック支庁が設置されていました。日本の統治以前は、ドイツが管理基地を置くなどかつては行政の中心でした。

 太平洋戦争で連合軍の徹底的な攻撃を受け、トノアス島はそのほとんどを破壊され、旧日本軍が建てた木造の建造物はなくなりましたが、日本統治時代の戦跡や石碑などが今も残っていました。中心地には、神社の跡もあり、旧日本軍の基地を土台として学校も建てられています。現在は、船で州都ウエノ島に通勤している人達が多い島です。 

 

2.シノ小学校の子供たちとのスポーツ交流

 トノアス島のSINO小学校の子供たちとスポーツ交流を行いました。SINO小学校の子供たちは、学年末休業に入っていましたが、日本の子供たちとの交流のために登校してくれました。お互いに合唱を披露した後、日本チームの「相撲部」の子が「型」を見せたところ、チュークの男の子二人が、逆立ちしながら足で戦うという技を見せてくれました。

 チュークの子供たちの運動能力の高さには、びっくりです。チュークの子ども達は運動能力抜群で、走ること、泳ぐこと、何でも大好きといった感じでした。実地踏査の時に、急なスコールがあり、高校の校舎内で雨宿りしていると近くの小学校の子ども達が、校舎も雨漏りするので、スコールで誰もいない高校の校庭を走り回って遊んでいました。

 雨の中、スライディングをする子、相撲を取る子、鬼ごっこ?のような事をする子・・・。雨が降ったら、活動中止で雨天プログラムにすぐ変更する日本の子供たちとは大違いです。

 「雨もまた楽し!」と感じられるチュークの子供たちは幸せだなぁと思いました。

 日本チーム対チュークチームの対戦は、今までチュークチームが全勝ということでした。そんなわけで今年は、日本とチュークの混合チームでスポーツ交流を行いました。リレーもサッカーもおおいに盛り上がり、子供たちのスポーツ交流には、言葉は必要ないと実感しました。

 

3.水の大切さ

 水が貴重なのは、無人島だけではありません。ホテルでも時々シャワーの水が出なくなりますが、チュークの人々の家には、お風呂はありません。雨水を貯めてシャワーとして使っています。

 水道の蛇口をひねれば、沢山の水が出てくる日本とは大違いです。

 従って、ホームスティに行く前に「絶対に生水を飲んではいけない」と何度も子供たちに指導しました。

 しかし、アイスティの中に入っている氷の存在にまで頭が回らなかったようで、出されたアイスティの氷が雨水だと聞かされ、青くなった団員もいたようです。幸い無事にホテルに戻って来ましたので、笑い話で終わりました。

 

4.挨拶と笑顔

 私たち団員がバスの中から、「ラランニウム(こんにちは)」と挨拶するとチュークの誰も彼もが、笑顔で「ラランニウム」と返してくれました。

 団員の感想文にもその事に触れている子がいましたが、今の日本の教育に欠けているのは、「笑顔の挨拶」ではないだろうかと感じました。忙しさに追われる大人達が「笑顔の挨拶」を忘れているのに、子供たちに「挨拶は大事だ」と説いても無理というものでしょう。

 

5.おもてなしの心・おもいやりの心

 チュークは、日本のように電化製品であふれている生活ではありませんが、日本より豊かな生活をしているように感じたのは、何故でしょうか。

 ホームスティから戻った子供たちは、手作りのムームーをお土産に頂いていました。日本の家庭では、母親がミシンを踏んで洋服を縫う事は、ほとんど見られなくなりました。自分で作るより安い洋服が沢山売られているからです。

 ホームスティで初めて出会ってから、子供たちとリーダーのサイズを採寸してオーダーメードでアロハの上着を縫ってくれたママは、帰りの空港に間に合わせて届けてくれました。ホストファミリーのママが寝ずに、洋服を縫ってくれた事を日本の子供たちはどのように感じたでしょうか。

 

6.最後に

 最後に参加者の作文の一部分を紹介します。ほんの一部分ですが、どの子もこの事業に参加し、沢山の事を感じ取った事がわかります。

 この事業で感じた事を日常の学校生活の中で是非活かして欲しいと願っています。そして、団員がもう少し大人になったら、グローバルな社会で活躍する人もいるだろうと期待しています。

 

 「日本で蛇口をひねると水がでるのが当たり前だと思っていた私は、とてもびっくりしました。この事業に参加して思ったことは、参加する前まで水を出しっぱなしにしたりしていたので、これからは、このことを思い出して水を大切に使いたいと思いました。(6年女)」

 

 「私が忘れられないのは、チュークの子ども達の笑顔。私はチュークの子供達から笑顔の大切さまで教えてもらいました。私もずっと笑顔は大切だと分かっていましたが、ここまで大切だと思っていませんでした。 笑顔を見れば、それだけでもう友達でした。(中1女)」

 

 「学んだことは大きく分けて2つあります。1つ目は、チュークの人々の温かさです。2つ目は、仲間の大切さを感じることができました。(中2女)」

 

 「今回の体験で最も心にのこったことは、水はとても大切だと言うことです。今回のチームのキャッチフレーズである「僕らは小さな親善大使だ」ということを自覚して日本に帰ったら、このことを伝え、自分でも大切にすることを実行していきたいです。(中2男)

松村 純子(まつむら じゅんこ)

独立行政法人国立青少年教育振興機構 教育事業部 企画課長
元小学校の教師です。勤務地の異動に伴いしばらくお休みをしておりましたが、2年半ぶりの再登場です。「青少年の体験活動の重要性」を発信したいと思います。




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