2013.12.31
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学校におけるキャリアカウンセリング(2)~面談はチャンス!~

立命館宇治中学校・高等学校 数学科教諭(高校3年学年主任・研究主任) 酒井 淳平

この原稿が公開されるのは12月31日ですね。
2014年になってから読まれる方も多いかもしれません。

みなさんにとって2013年はどんな年だったでしょうか。
そして来たるべき2014年はどのような年にしたいと思われますか?
こうした節目があることは、自分をふりかえるいいきっかけになりますね。


中学校や高校におけるキャリアカウンセリングのポイントとして
以下の3つがあります。

 

<学校におけるキャリアカウンセリング・3つのポイント>
1、生徒の話をじっくり聞く
  (自分への気づき、整理する、思い込みの修正)
2、思いを行動にうつす支援をする
3、自分で決めたという実感を持たせる


前回は「面談の前に大切なこと~教師という特殊性~」と
ポイント1-1「話をじっくり聞く(自分への気づき)」について書きました。

今回はポイント1の続きと、
ポイント2「思いを行動にうつす支援をする」について書きたいと思います。
 

ポイント1-2 話をじっくり聞く(聞くことで話を整理する)


 人は漠然とした不安を持つことがよくあります。これは生徒も同じでしょう。
話を聞いてもらうことことで、生徒は自ら整理し、決断できるようになります。
 

 ある生徒が「先生、理系にいきたんですけど大丈夫でしょうか?」と
面談で訴えました。その生徒の成績はかなりよく、正直何が不安かわかりませんでした。

 この生徒とは以下のように面談しました。

 

「大丈夫でしょうか、って何か不安なことがある?」

「理系に進みたいんですけど、先輩が理系は勉強が難しいって言ってて、
 本当に私が行っても大丈夫かと思うようになり、、」

「正直、今の成績はかなりいいし、数学の授業では応用問題にもくらいついているから、
 先生からみたらどうしてそのように思うのか少し不思議なんだけど、、、」

「なんか勉強についていけるかどうか不安が、、、」

「ついていけるか不安。どんな不安がある?」


 こうして話を聞いていくと「漠然とした不安があること」が明らかになりましたが、
それは本当に漠然としたものでしかなく、話をする中で

「高校入学時も同じ不安があったけど乗り越えられたこと」
「クラブの先輩でも理系で頑張っている人がいっぱいいること」
「きっちり授業と家庭学習さえやっていけば、決して無理なレベルではないこと」

などに自分で気がついていきました。面談を終えてすこしほっとしているように見えました。

 

 面談で私がしたことは、話を聞き、生徒の言葉を返して、質問したことだけです。
確かに「同じくらいの成績の先輩は理系でも十分頑張っている」という事実は伝えました。
それも彼女の漠然とした不安を確認してから伝えています。

「お前の力なら大丈夫!」で済ませたくなるところですが、おそらく同じようなことは
友人からも言われているはずです。あえて面談で不安を訴えているということを考えると、
じっくり話を聞き、不安などの漠然とした気持ちを整理する支援が大切だろうと思います。

 

キャリアカウンセリングのポイント1-3 思い込みの修正

 確かではない情報を信じ込み、その情報だけで選択をしようとする生徒もいます。

 数学が好きでも得意でもないのに、理系を希望している生徒がいました。
理科に興味があるわけでもなさそうで、むしろ法学などに興味がありそうでした。
なぜ理系を希望するのか聞くと、「理系の方が就職がいいから」と答えました。
好きでもなく、得意でもない進路を選んで本当に就職はよくなるでしょうか。
 

 このように「理系に行けば就職がよくなる」など生徒たちが勝手な思い込みをしていることは
少なくありません。他にも内部進学を希望している生徒で、学部の噂にふりまわされて、
自分の学びたいことと違う学部に行こうとしている生徒もいました。保護者が昔のイメージ
そのままで生徒に話をし、その影響を受けている生徒もいます。


 私たち教員が「なぜその選択をしたのか」ということをじっくり聞くことで、
間違った情報や思い込みによる進路選択は避けれるように思います。

 

 また自分が何かを選択したときに、その根拠を誰かに聞いてもらうことで、
自分の根っこにある思いこみや偏見に気づくことはみなさんも経験があるのではないでしょうか。

 生徒と面談する機会は生徒が自分の思いこみに気づくチャンスにもなります。
「話を聞く」ということは「思い込みの修正」という点からも大切です。

 

キャリアカウンセリングのポイント2 ~思いを行動にうつす支援~

 キャリアカウンセリングのポイントの2つ目は「思いを行動にうつす支援」です。
いろいろ話を聞いてもらっても、結局のところ、自ら何かをしないと何もかわりません。
(これは就職支援の現場でもまったく同じということをよく聞きます)


「学部のことがわからないから決めれません」という生徒がいました。
大学のパンフレットなど必要な情報は渡していますが、確かに高校1年生にとって学部を
考えるのは難しいことかもしれません、

 

 私はこういうときこそ「自ら行動し情報を収集できるように支援するチャンス」だと思います。
たとえば「学部がわからないから文系も理系も決めれません」という生徒と以下のように面談しました。
参考になれば幸いです。
 

「わからないって言うけど、今までどんな情報集めた」
「大学のパンフレット見たけど、よくわかりませんでした」
「パンフレット以外に情報収集は?たとえば大学のホームページのここは見た?」
「いや見てないです。」
「ここを見たら学部について詳しく情報があるから、家で一通り見て、
 次の面談までに気になったキーワードを書いてきて。」
「わかりました」
「他に文系や理系について情報収集する方法はある?」
「あ、クラブの先輩に理系の人も文型の人もいるから聞いています」
「それはいいと思う、一人だと偏るから複数聞いたほういいと思うよ。それはいつまでにするつもり?」
「今週中にはできます」 ・・・・
 

 何か行動をして、自分の中に情報やイメージをインプットしないと、
やりたいことなんて見えてくるはずがないし、何も選択できないでしょう。
生徒を見ていると何もしていないことに気がつかず、「わからない」と言っているケースは
少なくないように思います。もっともどう行動していいのかわからない場合もあるでしょう。
その点で面談の場は、生徒が次の行動をとれるよう支援する場にもなります。
面談をきっかけに生徒が行動を起こすことができれば、それは面談の大きな成果ではないでしょうか。


 前回と今回で2つのポイントを書きました。ただ多くの生徒と関わる中で、
もしかしたらもっとも大切なことはポイント3ではないだろうかと実感しています。
次回はこのことについて書きたいと思います。

 ここまで読んでいただきありがとうございました。引き続きよろしくお願いします。  

酒井 淳平(さかい じゅんぺい)

立命館宇治中学校・高等学校 数学科教諭(高校3年学年主任・研究主任)
文科省から研究開発学校とWWLの指定を受けて、探究のカリキュラム作りに取り組んでいます。
キャリア教育と探究を核にしたカリキュラム作りに挑戦中です。

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