2013.11.27
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ミクロネシア諸島自然体験交流事業(2)「ホームスティ」

独立行政法人国立青少年教育振興機構 教育事業部 企画課長 松村 純子

      

ミクロネシア諸島自然体験交流事業の第二弾は、「ホームスティ」について書きたいと思います。

 1.チューク州ってどんなところ? 

  ミクロネシア連邦のチューク州へ行くには、飛行機で成田からグアムまで約3時間30分。飛行機を乗り継ぎ、グアムからチューク州まで約1時間40分かかります。日本との時差は、1時間です。

 

 チューク州とは、ミクロネシア連邦を構成する4つの州(ポンペイ州、チューク州、ヤップ州、コスラエ州)の一つです。日本への招聘は、4つの州を対象に実施していますが、日本の子どもたちの派遣は、ポンペイ州とチューク州の2つの州で毎年交互に行われています。

 ミクロネシア連邦は、大小607の島々と環礁から出来ている国家で、そのうち65の島に人が住んでいます。その中のチューク州は、大小290に近い島で構成され、約40の島に人々が生活をしています。

  

 チューク州の人口は、ミクロネシア連邦の人口の約半分を占め、その3分の1は、州都であるウエノ島に住んでいます。

 ウエノ島は、世界最大級のチューク環礁にある島の一つです。周囲200kmにおよぶ環礁の中には、大小90の島が輪を描くように連なっていて、そのうち80の島は無人島です。人が生活している島は、山が多く豊かな緑に恵まれ、自然とともに伝統的な暮らしをしています。

 

 チューク州の気候ですが、気温は年間を通してほとんど変わらず、平均気温は27℃です。湿度は年間を通して高く、1月~4月は、乾期。5月~12月は雨期です。

 チューク州の人々は、英語も話しますが、普段はチューク語を話します。日本語の「こんにちは」はチューク語で「ララ・ンニム」です。

 

2.ホームスティ びっくり物語

 チューク州の人たちの多くは、大家族で、子ども達が大好きです。また、とてもおおらかで、細かい事や時間などはあんまり気にしないようです。

 一昨年度までは、日帰りのホームビジットでしたが、昨年度の派遣から1泊2日のホームスティを実施することになりました。

 心配はホストファミリーとのマッチングでした。前日にやっとホームスティ先の家族の名簿が届き、リーダーと共に子どもたち、サブリーダー、リーダーのホームスティ先のマッチングを行いました。しかし、名簿に記載されている12家族が本当にホテルに時間どおりに来ていただけるかは、当日の昼にならないとわからないのでディレクターの私は、もし家族が少なかったら、2人組を3人組に変えようと考えていました。

 また、多くの家族が来ていただいた場合は、お断りできるかをコーディネーターに相談し、現地の青少年局の担当者に確認したところ、「大丈夫」という返事を頂いたので、その場合は、断るという事を決めました。 

 

びっくりその1

 ホームスティ当日の午前中、異文化体験として「椰子の葉のバック作り」を行っていると、何人かの家族がじっと見ています。なんだかおかしいなと思い、コーディネーターに確認してもらうとなんとホストファミリーが来ていました。約束の時間は、お昼後なので再度来て頂く旨を伝えていったん帰っていただきました。

 ちゃんと時間を伝えたのだろうかと不安になりましたので、どういう方法でホストファミリーの募集をしたのかと尋ねると島の有線放送で全島民に流したというのです。これは大変な事になるなぁと思っていたところ、お昼後には沢山の家族が集まっていました。

 名簿にある家族から、子ども達とのマッチングを行いました。少し不安げな顔をしながらも子ども達は、次々とホームスティに出発しました。 

 

  びっくりその2

 参加者のほとんどがいなくなった頃、ふと見ると子ども達の数と待っている家族の数が合いません。どうもホストファミリーの方が多いのです。予想していた事態ですので、「お断り」をお願いしましたが、「セパレート」とチューク州のビックマザーが言います。どうやら2人組の子どもたちを分けろと言うのです。仕方なく、年上の子と年下の子でペアを組んでいたので、まず年上の中学校2年生の男の子を一人ずつホームスティに行ってもらう事に決まりました。

 一安心したのもつかの間、更に名簿にいない家族が来てしまい、またまたチューク州のビックマザーが「セパレート」の一声です。一番年下の小学校5年生の二人なので、ペアを分けたくないので、「無理です」「分けて欲しい」とのやりとりが続きましたが、最終的に、「一人で行けるか」を小学校5年生の男の子に直接聞く事にしました。

 子ども達は最初、困ったような顔をしていましたが、一人が「このお兄ちゃんの所ならいい」と言うともう一人も「僕も一人で行ける」としっかりした顔つきで言いました。

 一番年下の小学校5年生の男の子がなんだかちょっぴり頼もしく思えました。

 

  びっくりその3

 そして、最後に残った女性リーダー。ホストファミリーに紹介すると何とも怪訝そうな顔。「子どもはいないのか」と言います。これには、女性リーダーも参った様子で悲しそうな顔。

 前に勤めていた施設で、招聘したミクロネシア連邦の参加者のホームスティ先を探した事がありましたが、日本でも子どものホストファミリーは見つかりましたが、大人のホストファミリーが、なかなか見つからなかった事を思い出しました。

 日本もチューク州も同じだなぁとなぜか納得してしまいました。

 

  びっくりその4

 このホームスティのマッチングには、更に続きがあります。

 もうこれで全員ホームスティに出発したと思っていると、また家族が来ました。もう子ども達はみんなホームスティ先が決まり、誰もいないので困ったなぁと思っていたところ、先ほど「セパレート」と言っていたビックマザーがまだその場にいました。よく見るとこの家に二人の男の子がホームスティに行くではありませんか。私が「あの家族に子ども達を分けて一人一人にしましょう」と提案すると「ノー」との声。自分の所に来る子ども達は「絶対二人」と言うのです。

 これには、さすがに参りました。 

 

 終わりよければ全て良し

 初めてのホストファミリーとのマッチングは、最初にあった名簿はほとんど役に立たない状態で驚きの連続でしたが、子ども達がホストファミリーと楽しい二日間を過ごす事を願い、私たち本部スタッフは、何かあったらすぐ駆けつけられるよう、ホテルで待機していました。

 おかげさまで何事もなく、翌日の午後、ホストファミリーと一緒にホテルに戻ってきた子ども達は、涙でお別れをし、その後口々にホストファミリーとの思い出を報告しあっていました。

 子どもたちの話を聞いていると、どのホストファミリーも親戚や近所の子ども達を自分の家に招き、大勢で日本の子ども達の為に、歓迎していただいた事がよくわかりました。

 初めは、どうなる事かと心配しましたが、「終わりよければ全て良し」と思えたホームスティでした。子ども達の作文にもホストファミリーへの感謝の言葉が沢山綴られていました。 最後に参加者の作文の一部分を紹介します。

 「日本のようにきれいに舗装された道路、おしゃれな建物、水や食べ物が満足にあるとは言えないけれど、人の優しさ、あたたかさが何よりも嬉しかったです。 このような人々の心の広さや優しさは、きっとチュークの雄大な自然によるものだと思います。チュークの大きな自然と人々の心に触れることができたこの10日間の思い出は、きっと私の心に一生残るものだと思います。」

松村 純子(まつむら じゅんこ)

独立行政法人国立青少年教育振興機構 教育事業部 企画課長
元小学校の教師です。勤務地の異動に伴いしばらくお休みをしておりましたが、2年半ぶりの再登場です。「青少年の体験活動の重要性」を発信したいと思います。




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