2013.11.25
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「なぜ働くのか」を考える授業~キャリアデザイン授業~

立命館宇治中学校・高等学校 数学科教諭(高校3年学年主任・研究主任) 酒井 淳平

1、「なぜ働くのか」を考える授業

 11月2日、キャリア教育研究会を実施し、キャリア教育授業(CSL)
の授業を公開しました。公開したのは「なぜ働くのか」について考える授業、
キャリアデザインの根幹ともいえる授業です。
 

 みなさんは「なぜ働くのか?」と聞かれたら、どう答えますか?
 また生徒に「働くことの意味」を伝える授業をするとすれば、どんな授業をしますか?


 「働く」ことの意味はいろいろあります。働いてお金を稼がないといけないことは
事実ですし、そのためだけに働いている人もいるでしょう。
一方で結果としてお金を稼ぎながら、いい仕事をして輝いている大人もいっぱいいます。
そんな人たちを紹介しながら、生徒たちが「働く」ことについていい印象を持ち、
「自分なりの働く意味」や「どんな働き方がしたいのか」を考える授業にしたいと思って
今回の授業を作りました。
 

 私事ですが、昨夏にJICA教師海外研修でサモアに行く機会がありました。
今回の授業では、サモアで入手した題材も使いながら、いろいろな人の働き方や
働くことへの思いを伝え、「なぜ働くのか」という質問を3度繰り返しました。
生徒たちは同じ質問を繰り返し考える過程で徐々に考えが深まっていったようです。
 

 

2、対象を自己から他者へ~生徒や参加者の感想から~

 今回は高校1年生を対象とした授業でしたが、研究会に参加された方にも授業に参加して
いただきました。参加された方からは「働く意味を考える時間になった」と言っていただき、
「なぜ働くのか?」という問いは大人にも大切だと改めて実感しています。
 
 生徒の感想で多かったものをいくつか紹介します。
 
・授業の最初に書いた「働く意味」と、最後に書いたことは全然違っていた。
 考えが深まったということだと思う。

 
・働くことを通して実現したいことを見つけたい。
 自分の仕事で誰かを助けられるというのはすごいと思う。この授業を忘れないようにしたい。
 
・はじめてこんなに「働く」ということについて文章にしたと思う。
 私の「働く」に関わるのは私だけじゃないことに気がついた。
 そのまわりの人たちに与える影響のことも考えられる人になりたいです。

・仕事をするのは、生活をするためということもあるけど、自分の仕事をよりよくしたり、
 誰かのためになるように働くなど自分もまわりも幸せになるために働くと思いました。


・最初は自分が生きていくために働くといった考えだったけど、働いている人とかサモアの人の話
 とかを聞くと、みんな誰かのために働いていた。それを聞いてあっ!と思った。
 よく考えたら私の夢も誰かのために、、という考えだったので、そこに気づかされました。


 公開授業後の講演でキャリアガイダンス編集顧問の角田様は、今後のキャリア教育の方向性の一つ
として「対象を自分から他者、そして社会課題に向けることが重要」と指摘されました。

 キャリアというと自分のことのように思いがちですが、人は社会の中で生きていきます。
自分の将来を考えるときに、他者や社会への視点は欠かすことができません。
生徒たちの感想を見る限り「他者に目を向けること」は一定達成できたように思います。
目の前の文理選択だけでなく、この授業を通して「他者」「社会」にも目を向けて将来を考えて
いってほしいと思います。

 

3、働くことを考える授業の大切さ

 中学校や高校で「なぜ働くのか」を考えさせる機会は案外ありません。
 しかし私たちの多くがそうであるのと同じように、生徒たちも働くことを通して社会とつながり、
社会の中で生きていきます。そもそも国も企業も働く人がいなければ成り立ちません。
 こう考えると「働く」ということについて考えさせることは大切です。
 今回の授業を受けた生徒たちが、自分なりに働く意味を感じ、働くことを通して社会に貢献
してほしいと思います。
 

 最後に質問です。「みなさんはなぜ働くのですか?」


 今回、サモアの子どもたちがどんな職業につきたいと思っているのか、それはなぜなのかに
ついてはふれる余裕がありませんでした。実は私が授業を作る際に、サモアでの調査結果は
大きな影響を与えました。このことについてはまたの機会にふれたいと思います。

 

4、次回へ続く

 学校では来年度の選択科目登録がつい先日終わりました。本校は高校2年生から
文科コース・理科コースにわかれますが、生徒たちはその選択を終えたことになります。
 文理選択というひとつの大きな決断をするということもあり、それぞれの生徒に
悩みや葛藤がありました。私はこの間担任として全員の生徒と面談をしてきました。
 そんな時期ですので、次回は進路選択に向けてのカウンセリング場面を取り上げ、
キャリアカウンセリングについて書きたいと思います。


*今回実施した授業の指導案は以下のURLをもとにしています。
 JICA教師海外研修に参加し、帰国後実践した授業です。よろしければご覧ください。
http://www.jica.go.jp/kansai/enterprise/kaihatsu/kaigaikenshu/report_kansai/2012.html
【「JICA」日本語ウェブサイトトップページ( http://www.jica.go.jp )】

酒井 淳平(さかい じゅんぺい)

立命館宇治中学校・高等学校 数学科教諭(高校3年学年主任・研究主任)
文科省から研究開発学校とWWLの指定を受けて、探究のカリキュラム作りに取り組んでいます。
キャリア教育と探究を核にしたカリキュラム作りに挑戦中です。

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