2013.11.06
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イベントをきっちりふりかえることは大切なキャリア教育

立命館宇治中学校・高等学校 数学科教諭(高校3年学年主任・研究主任) 酒井 淳平

1、ホランド理論(6つのパーソナリティータイプ)

 前回の最後に「(文化祭で)クラスで劇に取り組む過程は、生徒が自分の興味や価値観に気づく

過程であり、キャリア教育の場」ということを書きました。

今回はこのことについて書きたいと思います。

 今年度、私のクラスは劇に取り組みました。劇を完成させるには、いろいろな役割が必要です。

読者のみなさんなら次の6つのうちどの役割を選びたいですか?それはなぜですか? 

 

1、キャスト S

2、監督(必要に応じて脚本を書く) E

3、道具(作る)R

4、衣装、道具のデザインなど A

5、会計、劇の練習の計画作り、 C

6、脚本調査、他クラスの視察、劇の研究 I

 

 人には好みがあり、それはそれぞれ異なります。その背景にはおそらく幼少期からの経験

があるのでしょう。いろんなことを経験をする中から上手くできたものや、面白いと思ったもの

が好み・興味となっていくのではないでしょうか。

 ジョン・L・ホランドは、パーソナリティの特徴を6つのタイプに分類し設定しました。

ホランドのいう6つのパーソナリティータイプはR,I,A,S,E,Cです。

ホランドは、人は通常3つのパーソナリティータイプの組み合わせとして表すことができ、

どれか一つが強く、あとの二つのタイプはそれほど強くないとも言っています。 

 

<6つのパーソナリティータイプ>

R(Realistic)

  道具、物、機械、動物などを扱うことを好む。

  手作業、機械作業、農作業、電気関係のスキルを伸ばす。

  組み立てや修理に関する職業を好む。

I(Investigate)

  つきつめて掘り下げる研究者タイプ。頭を使うのが好き。

  数学や科学の能力を伸ばす。科学や医学分野の職業を好む。 

A(artistic)

  慣例にとらわれず創造的な活動を好む。

  言語、美術、音楽、演劇などのスキルを伸ばす。

  創造的な才能をいかせる職業を好む。

S(Social)

  人に伝える、教える、手助けするなどに関連する活動を好む。

  人と一緒に仕事をする能力を伸ばす。

  教育、保育、カウンセリングなどの職業を好む。

E(Enterprising)

  他人を導いたり、他人に影響を与えることができる活動を好む。

  リーダーシップ、説得力、人と仕事をするのに必要なスキルを伸ばす。

  商品の販売や人の管理などに関する職業を好む。

C(Conventional)

  情報を明確に秩序立てて整理できる活動を好む。

  組織的、事務的、計数的処理能力を伸ばす。

  記録管理、計算、コンピューター操作などに関する職業を好む。

 

   実ははじめに書いた劇のの6つの役割はホランドの分類に基づいて作ったもので、

役割の後ろのアルファベットがホランドの分類を表しています。

  身近な人とはじめに書いた6つのどの役割を希望するか、それはなぜなのかを

話しあってみてください。その人らしさや自分らしさに気がつくと思います。

  

2、行事のふりかえりで自分に気づく

   ホランドは「個人は自分のパーソナリティと一致するような環境で仕事をすることにより、

より安定した職業選択をすることができ、より高い職業的満足度を得ることができる」とも

提唱しています。

  どんな進路選択をしても、どんな仕事についても、人は自分の力を所属する集団に役立てる

ことで組織の一員になり成長します。「自分の力を役立てる」というのは簡単ですが、

実際に行うのはそんなに簡単なことではありません。ただ自分の好みや興味とやるべきことが

一致したときに満足度が高まることは間違いありません。こう考えると、集団の中で自分の力を

役立てるときに、自分の好みや興味を知っておくことは大切です。 

 

   文化祭は全員が参加する行事で、みんなが必ず何らかの活動に取り組み、何かしらの貢献を

します。その過程で自分の好みや興味にも気がつくことでしょう。きっちりしたふりかえりを

することで、文化祭準備過程でなんとなく気づいていた自分(好みや興味など)を意識化する

ことができます。

   このようにして自分に気づくこと、なんとなく気づいていた自分を意識化することは大切な

キャリア教育だと思います。「自分がどこで活躍したらいいかわからない」

「自分のやりたいことがわからない」という生徒は案外多いです。そんな生徒にとって、

何らかの貢献をした行事をふりかえるということは、自分の良さや好みに気づき、それを

次の行動につなげる絶好の機会です。自分の良さや好みに気づくときにはホランドの理論が

参考になります。今回は文化祭を例にしましたが、学校では様々なイベントを実施します。

イベントを「自分に気づく」という視点でふりかえることは、大切なキャリア教育なのです。

 

 最後に文化祭のあとに書いた生徒の感想文を紹介します。

 私はこの感想を書いた生徒に面談で

「すごく集団全体をよく見れていると思う。今までもそんなことはあった?」

「クラブで、全体をよく見れるという長所を活かしてチームに貢献できることはある?」

などと話をしました。他の人の好みや良さに気づいた生徒が、次は自分の良さや好みにも

気がついてくれたらと思います。

 

「劇の練習をしているときは一人ひとりの性格がよく出ていたと思います。積極的に練習に

参加する人、裏方に徹する人、リーダーシップを発揮する人、テンションが上がりすぎて

ときにはふざけてしまう人・・・。今までこんな目で7組を見たことがなかったけど、

7組はみんな個性があって面白いクラスだなと思いました。これからはもっともっとクラスの

みんなと話をしたり、ふざけあったりして、お互いのことをよく知っていきたいと思います。」

 

<最後に> 

 本校のキャリア教育授業では現在「働くこと」について扱っています。

 11月2日(土)の公開授業のテーマは「働くことについて考える」でした。

 次回は「働くこと」について授業の内容を紹介しながら書きたいと思います。

 

★ホランドについて詳しく知りたい人はたとえば以下のページを見てください。

 http://jibun.atmarkit.co.jp/ljibun01/rensai/career03/career01.html

(@IT自分戦略研究所、第3回的職探しに役立つホランド理論。シャープマインド 松尾順) 

酒井 淳平(さかい じゅんぺい)

立命館宇治中学校・高等学校 数学科教諭(高校3年学年主任・研究主任)
文科省から研究開発学校とWWLの指定を受けて、探究のカリキュラム作りに取り組んでいます。
キャリア教育と探究を核にしたカリキュラム作りに挑戦中です。

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