2013.10.18
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キャリア教育の土台として必要なことは?

立命館宇治中学校・高等学校 数学科教諭(高校3年学年主任・研究主任) 酒井 淳平

 「キャリア教育」という言葉を聞いて、どんなことをイメージしますか。
 学校におけるキャリア教育はどうあるべきだと思いますか?

 読者のみなさんは、子ども(生徒)だったときどんな夢を持っていましたか?
 今はどんな夢を持ち、日々生活されていますか?


1、私が現在挑戦していること~キャリア教育授業のモデル作り~

   第14期の随筆者に参加させていただきありがとうございます。
   京都の酒井淳平と申します。私は現在高校1年生を担当し、本業(?)の
数学に加えてキャリア教育授業のカリキュラム作り・実践をしています。

   今年度、本校の取り組みは文科省の「高等学校普通科におけるキャリア教育
の実践に関する調査研究」に指定していただきました。 
 

  「キャリア教育は大事だ!」と言われる一方で、いつ誰がどのような内容を
教えるのかなど非常にあいまいな部分も多く残っています。大学進学率の高い
普通科の高校では取り組みが進みにくいとも言われています。

   しかし生徒が自分や社会と向き合う時間をきっちり確保することは重要です。
キャリア教育が教育過程の中に入れば、実践は進みレベルも上がります。
調査研究を通して高等学校普通科におけるキャリア教育授業のモデルを作りたい
と思い、日々試行錯誤しています。
 

   この日誌では、「高等学校におけるキャリア教育」というテーマを中心に、
本校の実践や生徒の様子、私のキャリア教育についての考えなどを報告したいと
考えています。感想やご意見などいただけたらうれしいです。
   よろしくお願いいたします。


2、人は夢がなければ生きていけない~Mくんの挑戦~

  「人は夢がなければ生きていけない」。Mくんが生徒に向けて語った言葉です。
Mくんは私に「学校でこそ夢を育てるキャリア教育を実践することができる」
ということを教えてくれました。

    Mくんは「世界の水問題の解決に向けた取り組みを行いたい」という夢を持ち、
「夢プランコンテスト」に応募します。「夢プランコンテスト」とは本校が
キャリア教育の一環として行っている取り組みで、生徒の夢を募集し、それを
学校として応援するというものです。Mくんは1人1円募金など様々な取り組みを
行いながら、夢を目標にして行動します。

    Mくんは最終的に「カンボジアの村に井戸を9基提供する」ということを実現し、
その後自費で井戸を見にカンボジアへ行きます。現地でMくんは水がないことよりも
もっと深刻な問題に気づきます。それは夢がなかったこと。M君の言葉を借りれば
「村には絶望感のようなものが漂っていたように感じた」とのことでした。
Mくんはこの経験から、帰国して生徒たちに「人は夢がなければ、、」と語ったのです。


   実はこう語るMくん自身、夢をなくした時期がありました。夢を持ってスポーツ推薦で
本校に入学したMくんは病気のためスポーツを断念せざるをえなくなります。
「学校を辞めようと何度も思った」。スポーツをやめた直後の学校生活をふりかえって
Mくんはこういいます。もしかしたらMくんはカンボジアの光景と過去の自分をどこか
重ねていたのかもしれません。
   しかしMくんは「世界の水問題の解決」という夢を目標にし、それに向かって努力
することで大きく成長します。夢プランコンテストの活動だけではなく、勉強への姿勢、
学校での様子などMくんの変化は多くの教員が驚くほどでした。


3、キャリア教育の土台として必要なことは?

   キャリア教育を通して「勤労観を身につけさせること」「将来のことを考え、自ら進路
選択できるようになること」などは大切です。しかしその根本にあるのは夢や目標を持ち、
それに向かって努力することです。夢や目標を考えるときに「将来への憧れ」や「こんな
ことをしたいという思い」が必要です。こう考えるとキャリア教育で、いや学校教育で
「将来への憧れ」や「こんなことをしたいという思い」を育てることができなければ、
どんな取り組みもうまくいかないでしょう。
 

    人は身近の人に影響され、そこから憧れやモデルを見つけます。生徒たちが「将来大人
になった自分」を考えるときに、身近な「大人モデル」がどんな人なのかは大変重要なこと
です。このように考えていくと、「夢を持って働いている大人の姿を見せること」はキャリア
教育の根本として何よりも重要なことかもしれません。

   私たち教員は生徒が毎日接する大人です。そうだとすれば私たち教員がこの仕事に夢を
持って働いている姿を見せることは、キャリア教育の土台として何よりも大切なことでは
ないでしょうか。

  みなさんは今はどんな夢を持ち、日々生活されていますか?


4、最後に

   キャリア教育=講演会・インターンシップなどのイベントと思われている方が多いかも
しれません。私は確かにイベントは大事だけれど、実は日常の学校生活にこそキャリア教育
として扱えること、扱うべきことがたくさんあると思っています。

   本校では先月末に文化祭が終わりました。私のクラスは劇に取り組んだのですが、その過程
はまさに「生徒が自分の興味や価値観に気づく過程」であり、キャリア教育の場でした。

  次回はこのことについて書きたいと思います。


*最後に1つ紹介です。
11月2日(土)に本校でキャリア教育研究会を開催いたします。
主な内容はキャリア教育授業の公開と、キャリアガイダンス前編集長角田浩子様の講演です。
興味ある方がおられましたら立命館宇治中高、酒井淳平までご連絡ください。
(junpei*ujc.ritsumei.ac.jp ←メールを送る際は*を@にしてください)


<
URL>
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/career/detail/1338651.htm

(文科省のページ、キャリア教育の実践に関する調査研究指定校一覧)
http://www.ujc.ritsumei.ac.jp/ujc/division/career/yumeplan.php
 (本校キャリア教育、夢プランのページ)

酒井 淳平(さかい じゅんぺい)

立命館宇治中学校・高等学校 数学科教諭(高校3年学年主任・研究主任)
文科省から研究開発学校とWWLの指定を受けて、探究のカリキュラム作りに取り組んでいます。
キャリア教育と探究を核にしたカリキュラム作りに挑戦中です。

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