2013.02.26
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待ち時間の選択肢

駿台学園 英語科常勤講師 四ツ分 祥子

駿台学園は運動部に入っている生徒が多いのですが

中高一貫校なので

グラウンドや体育館の使用も中高で分け合っています。

だから、放課後になると

練習場が空くまで食堂や教室で時間も持て余すこともしばしば。

 

もちろん、課題など「やらねばならぬこと」があれば

食堂で他の生徒がおしゃべりしているかたわら

黙々と問題集を解いている、ということもあるようです。

待ち時間というのは、有効利用すれば

文武両道が成り立つ良いきっかけになります。

 

ただ一方で、待ち時間を課題のみに充てても

本当の意味で「文」を育てることにはならない気もします。

英語でいうなら

穴埋め問題や記号問題がいくらできても

異世界感を得るのは難しいということです。

異世界、というのは、他国についての知識にとどまらず

生徒が今までに知らなかったこと、つまり

環境問題についてかもしれないし

英語圏の方がネットで使う :) や ASAP のような記号についてかもしれないし

ビジネスパーソンが使う洒落た言い回しについてかもしれません

(ちなみに :) は右回りに90度回転させて"スマイル"、ASAPはAs soon as possible"なるべく早く"の意)。

こうした異世界に触れるには

「太郎は大阪に住んでいる」という文ではなく、せめて

「サリーはニューヨークに住んでいる」であるべきだし

「英語はアメリカで話されている」よりは

「フランス語はアルジェリアで話されている」がなおよい。

しかしこれも、体系的に学ぶことにはなりません。

 

体系を知るきっかけがないと

文ひとつひとつが読めても結局読解ができないと思うのです。

だから

まずは日本語でいいから読書をする、

異世界を垣間見れるような映画を見る、

音楽に触れる、

といった体験をさせないといけない。

特に、(待ち時間も含めて)部活に関わる拘束時間が長い生徒たちに対しては

あるいは、塾や習い事で、家庭での自由時間が極端に少ないと思われる生徒たちに対しては

授業や行事にそれらを取り込む必要もあるけれども

時間があればぱっと手を伸ばせるところに

本はもちろん、視聴覚教材まで充実した図書室のような施設が必要になる。

だから私は、

ただ課題を与えるだけではなくて

自分で興味関心を抱いて行動するところまで一人でできるように

いくつかのモデルを彼らに与えておきたい。

そうやって、待ち時間にできることの選択肢を増やしておきたいのです。

そうすれば、彼らは勝手に異世界に触れ、

背景となる知識を五感で習得していくからです。

 

私は、Youtubeに挙がっているオードリー・ヘップバーンがUNICEF親善大使をしたときの

インタビューを課題に出したり

特別時間割を利用して『34丁目の奇跡』というクリスマス・ストーリーを観賞させたりと

やや突飛なことをしてきました。

それらを教材として使用した意図は

Youtubeだって映画だって、勉強材料になるということを

生徒たちに体感してほしかったからです

(もちろん、メディアリテラシーという次の問題が

 新たに出てくるのですが)。

 

いま、実感として得ているのは

生徒はごく自然にネイティブが聞いている英語に触れてみたがるし

事前の指導次第では

自然な英語を聞き取ることは不可能ではない、ということです。

 

あと1週間で、今年度の授業は終わりますが

あぁ・・・できれば最後にCNNを聞かせたい・・・。

四ツ分 祥子(よつわけ しょうこ)

駿台学園 英語科常勤講師
塾講師5年、私立高校にて非常勤講師2年を経験。2011年度から新天地で常勤講師として勤務。

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