ほとんどは指定校推薦・AO入試で進路が決まっているものの
一般での大学受験を控えている生徒もいるので
高校3年生の授業は12月で終わりです。
普通、期末考査後には授業がないのですが
彼らに「はなむけの言葉」でも、と思って
貴重な一時間をいただきました。
* * *
私もそうでしたが
高校生は怖いもの知らずです。
人生どうにかなるもので
勉強には意義を見出せないし
あれこれ理由をくっつけながらサボってでも生きていける、
そう思える時期です。
社会に出ること、そこで生き抜くということを知らないのです。
とても贅沢な時期です。
生徒たちは、そんな温室から飛び出して
いろんなことを自分で決定する自由を手に入れます。
と同時に、突然に
「生徒」という守られた存在ではなくなります。
* * *
最後の授業で
解答用紙を返却し、答えあわせを終えたところで
私に残された時間は10分でした。
わたし「時間がありますね。
私は中等部所属ですから
皆さんと話す機会はそんなに多くありませんでしたね。
今日は最後の授業なので、ちょっと喋ります」
生徒A「じゃあ先生の彼氏について話して!」
わっはっは、と笑い飛ばす私。
本当に、最後までマイペースなクラスだったなぁと可笑しくなります。
* * *
生徒の多くは、誤解しています。
『やっと高校を卒業して
一人の人になって
校則や子供じみたルールから、ついに開放されるのだ』
と信じています。
でもそれは、間違いです。
「大学進学が決まっている人」
私の呼びかけに、クラスの半分くらいが手を挙げます。
「専門学校に行く人、これから受験する人、就職する人」
そのたびに、何人かが手を挙げます。
まるで告白でもしているように、ためらいがちにはにかんだふうに―。
一息ついて、私は続けました。
「君たちの行き先はバラバラです。
自分が望んだ場所かもしれないし、失望しながら行く場所かもしれない。
でも、覚えていてほしいんです。
どこへ行ったとしても、良いことと悪いことは半分ずつやってきます。
それが普通なんです。
だから、嫌なことがあっても、そこでめげないでほしいんです。
世の中、理不尽なこともある。
なんでこんな目に、と思うこともある。でもそれが普通。
それはそれで楽しんでほしい。
『世の中ってこんなもんかなー』って。
そのうち良いこともあるだろうってわかっていれば
前向いて歩き続けられるんです」
言いながら、実は自分自身に言い聞かせているな、と思いました。
私の言葉がどのくらい届いていたかはわかりません。
いつもの調子で「ドラマの1シーンみたい!」とはやし立てる生徒もいました。
けれど私は
それまで内職していた生徒(この日は英単語帳を開いていました)が
本に顔を向けたまま、じっと話を聞いているのを感じました。
それから、遅刻してきた生徒が瞬きもせずにこちらを見ているのも。
そうした態度は、1年間教えてきた彼らからの
ひとつの答えでした。
* * *
もう会わないかもしれないけど。
Good luck!
Have a good life!
君たちの高校生活を、分けてくれてありがとう。
四ツ分 祥子(よつわけ しょうこ)
駿台学園 英語科常勤講師
塾講師5年、私立高校にて非常勤講師2年を経験。2011年度から新天地で常勤講師として勤務。
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