2011.08.29
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日豪語学協働学習

河内長野市立美加の台小学校 指導教諭 梅田 昌二

   

 今から5年前の2006年、9月8日(金)に初めてオーストラリアの小学校との交流授業が行われた。これは2003年8月に、テレビ会議交流授業推進のためにオーストラリアへ行って3年後のことである。それだけに、とても嬉しい記念すべき出来事だった。私にとっては種を植え、水をやり、やっと3年目に芽が出てきた大切な宝の木である。交流校はオーストラリアのビクトリア州のメルボルン近郊のセントレナードカレッジの3年生だった。日本側は私の前任校の南花台東小学校4年生である。オーストラリアの子どもたちは幼稚園から日本語を学んでいる。この学校の児童達も上手な日本語で簡単な自己紹介をしてくれた。日本からも簡単な英語であいさつをした。残念ながら、決まったセリフを紙を見ながらの発表でしかなかったが。ただこの交流授業で痛感したことは、お互いの国の語学学習には、テレビ会議システムによる交流授業が効果的だということだ。

 日本の子どもたちもオーストラリアの子どもたちも、通常の生活環境の中では学んだ外国語を使う機会はほとんどない。将来役に立つからという理由だけでは、子どもたちは外国語を意欲的に学ぼうとはしない。しかし同世代の異文化に暮らす子どもたちとのコミュニケーションは大好きである。定期的にネットでの語学協働学習を続けていく中で、グローバルコミュニケーションの楽しさや異文化への興味関心が高まっていく。その意味で、このプログラムは両国の子どもたちにとって、有効かつ友好につながる貴重な交流授業になると確信している。

 残念なことだが日本の外国語教育のお粗末さは、世界的に有名である。先進国を自負しながらグローバルコミュニケーションのできないまま生徒を社会に送り続けている。国際化と情報化の進む中で世界から失笑をかっている。これが現実である。先月、台湾の交流校へ行ってきた。高雄市にある河濱国民小学である。先生方とお話をする機会があった。ほとんどの若い先生達は英語が堪能である。同じ初等教育にかかわる者どうしである。しかし、その能力には大きな差がある。本人の努力もさることながら、日本の教育のなせる業である。日本も本気なって子どもたちの「生きる力」につながる外国語教育に取り組むべきである。

 ようやく今年度から小学校での5.6年生での外国語活動がスタートした。しかし、その内容たるや甚だ貧弱である。「教科」としての扱いでなく「週1時間の領域」にとどまり、成績もつけない中途半端な現状である。しかも、文部科学省の予算措置はほとんどなくALTを雇うこともできず、現場教員の大きな負担になっている。子どもたちも先生方も楽しく英語を学習できる環境を速やかに整備する必要を痛感している。しかし、残念なのはまた10年間、現状が変わらないということである。情報革命といわれる激動期の社会において10年スパンで指導要領を変えていては、時代遅れになることは当たり前である。平成の子どもたちに「昭和の教育」を行っている。 本当に残念でならない。

 そんな思いの中でこの「日豪語学協働学習」に取り組んでいる。私が運営にかかわっている河内長野市立教育メディアセンター では、このプログラムを可能な限り多くの学校、児童・生徒に提供できるように努力している。幸いオーストラリアの学校の参加校も増え、現在は5校になった。それらの学校の日本語授業の中で学期に1回ずつクラス単位で日本と繋ぎ協働学習を行っている。日本は外国語活動の時間を利用して定期的に行っている。今年度の1学期には、河内長野市内14校すべての小学校でこの「日豪語学協同学習」が行われた。そのプログラム実施回数は30を超えた。9月からまたスタートする。今後も微力ながら、子どもたちの英語学習が楽しくできるよう「日豪語学協働学習」の継続・発展に努力したい。

梅田 昌二(うめだ しょうじ)

河内長野市立美加の台小学校 指導教諭
10年前の2001年1月に韓国交流校を訪問、その先進性に驚嘆。以後、学校の情報化と国際化に微力ながらも悪戦苦闘の日々を継続中。

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