2011.06.17
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自分を語ること

駿台学園 英語科常勤講師 四ツ分 祥子

新任の進路指導部員は

毎年この時期になると

高校3年生に受験体験談を

することになっているそうです。

かくいう私の高校生活は

部活に行事にあけくれて

勉強のことは頭の片隅に時々ちらつく程度。

計画性の高い受験生活など送れるわけもなく

1年目はあえなく失敗。

浪人生として1年間を予備校で過ごすも

さほど勉学に励むこともせず

ただ毎日を、囚われの身のような心地で

やり過ごしていました。

お金も力もない頃ですから

狭い世界に閉じこもるしかなかった私にとって

受験まで1ヶ月を切ってから

脱獄するには合格しなければ

という気になって

苦手な世界史のみを毎日繰り返し

試験前日に

たまたま頭にたたき込んだ朝鮮の現代史が

記述問題とどんぴしゃで

運よく明るい世界に逃げ出せました。

私の受験体験など、格好いいものではありません。

 

* * *

 

しかし生徒は私の話を聞きに来ます。

なぜなら授業の一環だからです。

せっかく聞いてくれるのだから

なにかお土産を持ち帰ってほしいわけですが、さて…

というところで、私は逆に

生徒に質問をしてみました。

「皆さんは、今日

 何を求めてやってきたのですか」

 

* * *

 

普通に「質問ありますか」と

聞いてもいいのですが

あえて挑戦的に聞くと

生徒も「えっ」という顔をして

それなら色々質問してやろうという気になるようです。

 

模試でA判定はでましたか。

勉強に飽きたらどうしましたか。

大学って、独学で受かりますか。

大学の時間割は、全部自分で決めるものなんですか。

そもそも、どんなふうに勉強していましたか etc.

 

素朴な疑問をばんばんぶつけてきてくれました。

 

* * *

 

大学では、質問する力が主として求められます。

 

君はどう考えるの?

その理由は? 根拠は?

どんな問題点があって

その穴をどう補うの?

 

といったアウトプットができてなんぼです。

しかしこれは

定期考査を

教科書丸暗記でこなしてきた生徒にとっては

未知の作業でもあります。

それに

大学で求められる質は

小中高の学校生活では経験したことがないほど高いのです。

一方で

小中高でインプットを疎かにしてしまうと

アウトプットする道具が少なくなって

結局、生み出せるものが陳腐になってしまいます。

 

* * *

 

私には、格好いい受験生活は語れません。

しかし、高校から大学を経て社会人になるまでの

成功や挫折については語れます。

受験生たちには

大学以降の生活でしっかりと自分の意見が言えるようになるために

今はインプットの作業に夢中になってほしいです。

私は

生徒が受験生になる前に

生徒がアウトプットする機会を

見逃さないよう心がけたいです。

 

四ツ分 祥子(よつわけ しょうこ)

駿台学園 英語科常勤講師
塾講師5年、私立高校にて非常勤講師2年を経験。2011年度から新天地で常勤講師として勤務。

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