2011.03.07
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子どもと向き合うこと

北海道真駒内養護学校 教諭 遊佐 理

つれづれ日誌第七期のはじめ(昨年の4月)に、執筆者一覧の自己PRを変更し、そのときに「プロフェッショナル」という言葉を入れました。
第七期の終わりには、その中で「プロフェッショナルのひとつの側面」について僕の考えをお伝えしました。


僕がプロフェッショナルという言葉を意識し始めたのは、NHKの番組がきっかけでした。
そこには、様々な分野のプロフェッショナルの方が紹介されていて、これぞプロフェッショナルという仕事ぶりを見て、僕もかくありたいと思っていました。
そして、特別支援教育に携わる教員としてのプロフェッショナルとは何だろうと考えはじめました。


「様々な視点を持つこと」
「自他尊重のコミュニケーション能力」
「もがきながらも前に進んでいくこと」
などなど。

言葉はいろいろ思いつきます。
確かに、どれも大切なことですが、本当に大切にしなければならないことって何だろう、と自分の実践を振り返ったときにある言葉が頭に浮かんできました。

「子どもと向き合うこと。子どもと真剣に向き合うことで、子どもからたくさんのことを教えてもらえる」

この言葉は、教育つれづれ日誌でもおなじみの川上康則先生から教えていただいた言葉でした。
はじめてお会いしたとき、直接お話うかがうチャンスがありました。その時の研修会のテーマが「ザ・授業」で、川上先生が授業をするときに何を一番大切にしているのかを知りたくて、僕が突然聞いた時にお答えいただいた言葉でした。

僕は、この言葉を聞いたときに、自分も同じようなことを考えていたので、とてもうれしかったことを覚えています。


僕が担任だったころ、毎日希望を持って学校に通ってくる子どもたちと向き合うことをとても大切にしてきました。そうすることで、子どもたちの心を読み解き、つまずきの背景を探り、次にどんなことをすればいいのか見えてくると思っていました。

たとえば、登校後、教室に子どもたちを連れてきて、最初に抱っこしたとき、ちょっといつもと違う感触があるな、と思ったことがありました。
その子は、言葉で表現することが苦手なので、「どこがつらいのか」「何を伝えたがっているのか」、その子の表情や僕の手の感触などで探っていきます。
そのとき、以前の経験から「のどが渇いている」「たんがからんでいる」「筋肉が緊張して痛い」「僕と話がしたい」「絵本を読んでほしい」といった仮説が思いつくので、可能性が高いものから順に解決していきます。
その時、子どもの表情や身体の状態を感じ取りながら解決の糸口を探っていくことで、その子が何を求めているのか見えてくることがあります。

また、別の時には、学習中にどうしてもできない課題がありました。
そのときに、その子にいろいろ支援しますが、それと同時に子どもが何を見ているのか、どんな言葉を発しているのか、手や指がどんな動きをしているのか、などを観察していきます。
そうやって子どもたちと向き合って子どもの様子を見ていると、「前に教えたことを忘れている」「形がしっかりと見えていない」「プリントの文字が小さすぎる」「教室が暑くて集中できない」など、子どもがどこにつまずいているのか、ちょっとした指の動きや言葉のはじっこや視線の先などに現れることがあり、次にどうすればいいのかが見えてくることがあります。

僕は、その瞬間がとても好きです。


今も、相談や補欠などで向き合う子どもたちと短時間でも真剣に向き合うことを大切にしています。


時にはなかなか解決できず、自分の力不足が明らかになって反省することもありますが、どんなときも子どもと向き合い、自分の感性をフル回転させながら子どもの様子を見ていくように心がけています。

それが僕にとってのプロフェッショナルでしょうか。
みなさんの参考になれば幸いです。


プロフェッショナルという言葉からイメージするものは、同じ仕事をしている人たちの間でもそれぞれ違うものではないかと思います。

ただ、どのプロフェッショナルの方も自分の仕事に情熱と誇りを持っていらっしゃるように思います。

僕も、自分に与えられた仕事に対して情熱と誇りを持ち、これからも頑張りたいと思います。

遊佐 理(ゆさ おさむ)

北海道真駒内養護学校 教諭
特別支援教育コーディネーターになって3年目。特別支援教育のプロフェッショナルとして、笑顔で人と人とをつなぐことを目指して頑張っています。

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