2011.02.16
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ドイツの低年齢児教育(6)<幼児教育と学校教育の接続>

独立行政法人国立青少年教育振興機構 教育事業部 企画課長 松村 純子

 12月からシリーズでお送りしている「ドイツの低年齢児教育」も今回をまとめとし一区切りつけたいと思います。

 ベルリン州では、ベルリン州他5つの州で、「Trans KiGs」という移行支援モデルプログラムに参加し、5年間のプログラムが終了しました。
 ベルリン州のプログラムは、幼児教育と学校教育の移行が円滑にいくための支援として、KITA(と呼ぶ保育園と同様なところ)と小学校の連携を行いました。
 子どもの個性を尊重した支援を行うためには、保育園と小学校の教育の質を保証することが重要であり、保育士と教師が同時に一緒の研修を受けることを実践していました。
 6つのタンデムを作り、保育園と小学校がペアになり、12の施設が参加したそうです。16ある区すべてにこのタンデムを広げることが目標だと話されていました。
 また、重要なことは、保育園と学校の協力だけでなく、両親との協力だとも話されていました。

 今回、平成22年の11月に訪独したわけですが、偶然にも同時期に文部科学省から「幼児期の教育と小学校教育の円滑な接続の在り方について(報告)」が出されました。
 低年齢児童の支援制度と方法~保育所から小学校への移行期~というテーマで研修をしてきた私は、帰国してからこの「幼児期の教育と小学校教育の円滑な接続の在り方について(報告)」を読みました。
 この報告の大きなポイントは、幼児期と児童期をつながりで捉える工夫が提案されているところです。訪独する前にこの報告の内容を読んでいたら、もっと日本の具体例をドイツで話すことができたのにと思うと残念に思います

 ドイツと日本では、子どもを取り巻く管轄に大きな違いがあります。
 ドイツは、学校は文部科学省。学校教育外の幼児から青少年期すべてを青少年省が管轄しています。日本は、ご存じの通り、学校は文部科学省ですが、幼稚園も文部科学省です。保育園や学童保育・児童相談所は厚生労働省です。
 幼稚園・保育園の一体化がなかなか進まないのも、この管轄の違いが大きなネックになっていることは自明の理でしょう。
 その点、低年齢児を取り巻く教育すべてを青少年省で管轄しているドイツでは、名称も保育園(ベルリン州はKITA)で統一され、Kindergartenと呼ぶ施設はほとんどなくなったと今回訪問した3つの州で聞きました。
 また、ドイツでは、保育士と教師が同じ目線で対話をするということは今までなかったと聞きました。

 どちらの国にも課題があります。しかし、幼児教育と小学校教育の円滑な接続を望んでいるのは、日本もドイツも同じでした。
 円滑な移行のために何が一番大切かと質問したところ、両方の組織が知り合うことであり、色々な会議や研修を通じて個人的に知り合うことだとの回答がありました。
 また、連携が大切だという認識を持つことだとも言われ、「連携がうまくいけば、内容もいくはずだ」という言葉がとても印象に残っています。

 駆け足の研修でしたが、私は大きな学びを得ることができました。参考までに来年度のテーマは、「青少年教育(学校外教育)と学校教育の連携」とのことです。
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松村 純子(まつむら じゅんこ)

独立行政法人国立青少年教育振興機構 教育事業部 企画課長
元小学校の教師です。勤務地の異動に伴いしばらくお休みをしておりましたが、2年半ぶりの再登場です。「青少年の体験活動の重要性」を発信したいと思います。




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