2011.02.02
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ドイツの低年齢児教育(5)<プレスクール>

独立行政法人国立青少年教育振興機構 教育事業部 企画課長 松村 純子

 今回は、日本人にとっては驚きでしょうが、就学年齢に達しているものの、能力開発を要する子ども達が1年間通う「プレスクール」についてお話します。 

 今回訪問したコアバッハ市には、4つの小学校がありますが、そのうちの2つの小学校に「プレスクール」が併設され、学区を越えて子ども達が学んでいました。
 そのうちの一つマーカーブライテ小学校を訪問しました。この小学校は、1学年2クラス編成で185人の子ども達を11人の教師が指導していました。
 「プレスクール」の担任は教師ではなく、社会教育士という資格を持った人が担任です。教員免許は持っていません。

 ドイツでは、親が希望し、就学するだけの学習能力があれば1年早く入学することが可能です。いわゆる飛び級です。その反対に、就学年齢に達していても、学習能力の支援が必要だと判断された子は、親の意思により、就学の準備期間として一年間「プレスクール」に通い、その後一年生として入学することができます。
 また、小学生から、いわゆる留年(落第)もあるのです。小学校に入ってから、落第するなら、その前にしっかり基礎を学んで入学させようと考えた親は「プレスクール」に親の意思で入学させます。

 このプレスクールの試みは、「移行期」のワンクッションになると考えられます。しかし、ヘッセン州でも、18年前から実施していますが、ドイツの中でそれほど広がっていないとのことでした。
 学習能力の支援が必要だという判断は、保育園に通っている時に決定するそうです。もちろん、診断されても「プレスクール」に入らない場合もありますが、保育園との連携はかかせないと話されていました。

 また、「プレスクール」の指導者は、子ども達のよいところも悪いところも小学校と話し合い、小学校とのつながりを保っています。1年生への申し送りは、個人プラン(支援)を書式で報告し、入学後の担任に対してその子の弱いところを小学校に入学してからも観てもらえるようにしているそうです。

 日本の場合は、小学校への飛び級はありませんし、落第もありません。その学年の学習を理解していなくても、学年は上がっていくわけです。
 この「プレスクール」を見学し、一人ひとりに合った本当の意味の学習支援とはどんなことなのだろう・・・と改めて考えさせられました。
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松村 純子(まつむら じゅんこ)

独立行政法人国立青少年教育振興機構 教育事業部 企画課長
元小学校の教師です。勤務地の異動に伴いしばらくお休みをしておりましたが、2年半ぶりの再登場です。「青少年の体験活動の重要性」を発信したいと思います。




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