2011.01.24
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地域学習を支えるもの

北海道真駒内養護学校 教諭 遊佐 理

今まで、つれづれ日誌では地域学習のことについていろいろな面から紹介してきました。

僕自身、この場で発信するためにいろいろまとめていくことによって、現時点での評価や今後の課題などいろいろなことが見えてきました。

今回は、今までの取り組みから見えてきたことについて紹介していきたいと思います。

地域学習をはじめとした交流及び共同学習は、新学習指導要領に掲載されていることであり、新学習指導要領の解説には以下のように書いてあります。

「障害のある子どもと障害のない子どもが一緒に参加する活動は、相互のふれあいを通じて豊かな人間性をはぐくむことを目的とする交流の側面と、教科等のねらいの達成を目的とする共同学習の側面があるものと考えられる。『交流及び共同学習』とは、このように両方の側面が一体としてあることをより明確に表したものである。」

つまり、一緒の場にいて何らかの活動をすることで相互に刺激しあって成長できる部分が必ずあるということなのだと捉えています。

なぜ、交流及び共同学習が必要であるか、その根拠としてあげられるのは、最近話題になっている障害者の権利に関する条約であり、インクルーシブ教育の考え方だと思います。
障害を持った子どもたちの生きづらさは、この社会が作り出したものであり、障害を持った子どもたちも社会の一員とするのであれば、同じ場で学ぶための合理的配慮をするのは社会の義務である、と考えるのが障害者の権利に関する条約の基本的な考えだと僕は捉えています。
そのような考えに基づくと、将来の社会生活で同じ場にいる互いの子どもたちのことを理解することが必要であり、そのための取り組みが交流及び共同学習であるという考えに至ります。

ちょっと難しい話になってしまいましたが、ここからは地域学習をうまく進めるためのコツについて改めて紹介したいと思います。

1点目は「ちょっとやんちゃな子どもたちとつながる」ことです。
実は、地域学習で一番仲良くなってくれるのは普段はちょっとやんちゃな昔で言うところの「ガキ大将」タイプの子どもたちです。
この子たちは感性が鋭くて人付き合いが良く、何の気負いもなく「何が好きなの?」「どうして歩けないの?」などと気づいたことを聞いてきます。それに対してしっかり答えることができれば、常に「どうした?」「大丈夫だからな」と気を配ってくれ、ドッジボールをするときなどは身体を張って守ってくれ、最後の地域学習では代表してお別れの挨拶などもしてくれます。
ちょっとやんちゃな子供たちと仲良くなることで、周りの子供たちともつながりやすかった、というのが自分の経験から得られたことでした。

2点目は「担任の先生とつながる」ことです。担任の先生は特に「地域学習をどのように進めればいいのか」と悩んでいることが多く見られ、その悩みを抱え込んでいる場合があります。
こちらから気軽に電話やファックスをしながら、相手がどんなことを思っているのかを聞き出し、それに対してできるだけ具体的にこちらの考えを提案できるのが望ましいと考えています。
前回の書いた記事にもこのことを詳しく書いてみたので、そちらも参考にしてみてください。

3点目は、「地域学習の学習内容と本校の学習内容をつなぐ」ことです。
地域学習で「かけ算の筆算」や「漢字の書き取り」などの内容が来た際には「繰り上がりがない足し算」や「ひらがなの書き取り」などの課題を用意して地域学習に参加します。ここで大切になってくることは、地域学習で行うことは、できるだけ普段の学習で行っている内容や方法を取り入れることだと考えています。いつも使っている学習プリントや教材を用意することで、普段通りの力を発揮することができ、また、地域学習校の子どもたちも本校の子どもがどんな支援が必要で、支援があればどんなことができるのかを知る良い機会となっていると思います。
そして、普段の学習を地域学習でもすることで、地域学習の評価をそのまま個別の指導計画の評価にすることもできるというメリットもあります。
それらの成果があることを他の教員にも伝えて共有し、それに向けて地域学習の内容を考えていくということが大切だと思っています。


以上、これ以外にもコツはあるのですが、簡単に3点紹介しました。


逆に、課題となっていることもいくつかあり、教員の動向のこと、打ち合わせのこと、地域学習のねらいのこと、などなどいろいろな指摘を受けます。
特に、地域学習のねらいとして「地域生活を豊かにするきっかけ」を挙げていますが、放課後の生活や、学校を卒業した後の地域生活を考えた際、地域学習で取り組んでことがどんな場面でどのように生かされているのかについてその実際について調べ、その上で、地域学習で取り組む内容についても改めて考えるような、そんなプロセスが必要ではないかと思っています。
今すぐできることではないと思いますが、いつかそんなことができるようになれば、と思っています。

最後に、時折文章の中に出てくる「相互理解」について、僕の考えを紹介したいと思います。
つれづれ日誌を書き始めてから、ずっと「相互理解」について考えていました。何をどのように理解すれば相互理解と言えるのか…。
今も、悩み続けているのですが、そんな中でも少し考えがまとまってきました。

相互理解とは、互いの良いところだけではなく、苦手なところやできないところも理解し合うことではないかと思います。特に、苦手なところやできないところについてはみんなそれぞれ違うこと、そして苦手なことやできないことに対してどのように支えればいいのかを理解し合うということが大切であるような気がしています。


いろいろ考えてきましたが、地域学習はいろいろな課題があり、簡単にことが進まないこともよくあります。特に、本校の子供たちが願っているような形で実施できないときには、自分の力不足を痛感します。
しかし、本校の子どもたちだけではなく、地域学習校の子どもたちにとっても良い刺激となりうること、それが将来の共生社会へのきっかけになることを信じ、ひたすら頑張って取り組んでいくしかないのかな、とも思っています。

交流及び共同学習を進めている先生方の参考になれば、と思って書きました。

皆さんの取り組みが着実に成果として実を結ぶことを祈っています。

遊佐 理(ゆさ おさむ)

北海道真駒内養護学校 教諭
特別支援教育コーディネーターになって3年目。特別支援教育のプロフェッショナルとして、笑顔で人と人とをつなぐことを目指して頑張っています。

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