2011.01.19
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ドイツの低年齢児教育(4)<全日制学校>

独立行政法人国立青少年教育振興機構 教育事業部 企画課長 松村 純子

今回は、ドイツの全日制学校についてお話したいと思います。

 ドイツの全日制とは、日本の感覚でいう「全日制」とは違います。前にも書きましたが、小学校の教員が、朝から午後まで授業をするわけではないのです。
ドイツの全日制は、日本で言う「学童保育」と捉えた方が正しいです。いわゆる保育士が中心となって子ども達の放課後のケアをするものです。

 「全日制」を導入している学校は、契約している施設や隣接している学校へ子ども達が移動し、午後を過ごします。小学校の教師も午後は、子ども達と一緒に下校します。ドイツの教師は、教材研究を家でやる事が当たり前となっているので、日本で言う「持ち帰り残業」という感覚はありません。

 今回、訪問したベアギッシュ・グラットバッハ市のヘアボン小学校は、敷地内に隣接している学校に移動する「開放式の全日制学校」でした。開放式=オープンという意味で、全員が行くのではなく申し込み制です。授業時間以外の7:30~16:45まで、時間保育をします。その時間の費用も必要ですし、食事代も払います。単身家庭が優先ですが、就労は要件とはなっていませんでした。ヘアボン学校の保護者の80%が午後も学校で子ども達の面倒を見て欲しいという要望があったので、全日制を取り入れたそうです。学校の約3分の2の児童が利用していました。

 また、ベルリン州のシュテヒリンゼー小学校は、ブンデスアレー保育園と契約して、「開放型の全日制保育」を実施していました。ここは、午後13:30~18:00まで時間保育をし、学校が休みの時や夏休みも児童を受け入れていました。
 食事を食べるか、宿題をさせるか、保育士が学校に迎えに行くかもすべて親が保育園と契約します。子どもが午後をどのように過ごすかは、親が決めるのです。
 ベルリン州では、学校法が変わって義務として子どもの午後の保育を確保しなければならなくなったため、子どもが通う小学校で「開放式の全日制学校」を実施していない場合は、他の地域や民間を探さなくてはならなくなったとのことでした。
 ブンデスアレー保育園では、午後の学童の需要が高く、午後に140人在籍しているため、来年の8月からは保育園を閉園し、「開放型の全日制保育」1本で運営していくそうです。

 「拘束性のある全日制学校」の場合は、放課後の費用は無料となるそうです。しかし、おやつ等食事は有料との事でした。拘束性があれば全員が午後全日制の学校に行くというわけです。しかし、拘束性のある全日制学校を今回訪問できなかったので、詳しくお伝えする事ができず残念です。

 どちらの全日制学校も午後の過ごし方は、まさしく社会教育そのものでした。もちろん宿題を必ずすると契約している子どもは宿題をしますが、工作・自然科学の実験・料理・運動・劇・音楽・パソコン等のメデイアなど様々な活動ができる部屋があり、子ども達は自分の興味のある部屋で自由に過ごしていました。

 次回は、日本人には驚きですが、就学年齢に達しているものの、能力開発を要する子ども達が1年間通う「プレスクール」についてお話します。
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松村 純子(まつむら じゅんこ)

独立行政法人国立青少年教育振興機構 教育事業部 企画課長
元小学校の教師です。勤務地の異動に伴いしばらくお休みをしておりましたが、2年半ぶりの再登場です。「青少年の体験活動の重要性」を発信したいと思います。




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