2011.01.05
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ドイツの低年齢児教育(3)<保育士養成>

独立行政法人国立青少年教育振興機構 教育事業部 企画課長 松村 純子

 新年あけましておめでとうございます。
2011年が、平和なよい年になりますよう願っています。
 
 さて、ドイツの低年齢児教育シリーズはまだまだ続きます。今回は、保育士養成についてお話しします。

 ドイツでは、現在、どの州でも子どもが3歳になると保育園に入る権利を親が要求できます。しかし、2013年からは、1歳時からその権利が派生するとのことです。従って、保育士の数が足りなくなると懸念されることから、保育士養成に力を入れているとの事でした。
 日本では、現在の教員養成制度について、4年間から6年間へと様々な議論がなされています。
 今回は、ヘッセン州のコア・バッハにあるフレーベルセミナー(保育士養成学校)の「保育士養成カリキュラム」についてお話ししたいと思います。

 フレーベルセミナーは、名前の通り「フレーベルの思想」に基づいて教育を行っています。
 学院長さんは、教育は自己教育であり、自分で目的をもって取り組まないと学習は進まない(人から言われてもしない)と話されていました。学習するということは建設的な事であり、困難があっても乗り越えていく力が必要で、「克服することに喜びを見いだす」これがフレーベルセミナーのモットーだとも話されていました。

 フレーベルセミナーでは、(1)ソーシャルアシスタントコース(2)保育士コース(3)大学教育との連携コース(大学卒の資格がとれる)(4)パートタイム保育士コース という4つのカリキュラムがあります。
 
(1)ソーシャルアシスタントコースは、10年生を卒業した後、試験を受けて入学します。2年間学びの後、国家試験に合格すればソーシャルアシスタントになれます。ソーシャルアシスタントとは、保育士のサブとして保育の仕事を手伝います。

(2)保育士コースは、専門学校と捉えることができます。このコースは、年齢制限があり、23歳までしか入れません。実習にとても重きを置いていて、1年次は、保育所と老人ホームの実習があります。2年次は、1週間のうち3日は実習のみとなるカリキュラムです。2年間の養成期間の後に6ヶ月の実習も課されています。 

(3)大学教育との連携コースは、専門学校で2年間学んだ後、専門大学で1年半学ぶものです。(実習があるのでトータル4年間の学びです)このコースを卒業すると保育士(社会教育士)と学士の両方の資格がもらえます。このコースを卒業するには、卒業論文が必要となります。
 ドイツは、資格と職業が一致した国だという印象を強く持ちました。自分は、何の資格を持っているかということを皆が誇りを持って述べていました。
 今まで保育士は、大学卒業の資格が必要なかった(いわゆる学士ではなかった)ため、地位も低かったのですが、このカリキュラムができ、これからは保育士の地位も高まるのではないかと感じました。  

(4)パートタイム保育士コースは、社会人入学と捉えていいでしょう。もともと保育ママ等の仕事をしていた人など、3年間の社会経験が必要となります。このコースは、1週間に2日、3年間学びます。今回話をしてくださった学生さんは、40代50代の方で本当に学ぶ事が楽しいと話されていました。また、既に保育の仕事を経験している人も15時間の実習が必要であり、やはり実習に重きを置いていると強く感じました。

 教員養成に不可欠な実習ですが、フレーベルセミナーの保育士養成では、実習に重点が置かれ、自分が働きたい職場へ何回も実習に行くことで、適性や就職までのキャリアプランを明確にできると考えられます。
 日本の教員養成は、現行の制度では、小学校の教員免許を取得するには、小学校に1回教育実習に行くだけです。現場の経験を複数回に分けて積ませるこのフレーベルセミナーの養成制度は、実践者を養成するという意味で、とてもすばらしい制度だと思いました。
  
 次回は、ドイツの全日制小学校についてお伝えします。

 
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松村 純子(まつむら じゅんこ)

独立行政法人国立青少年教育振興機構 教育事業部 企画課長
元小学校の教師です。勤務地の異動に伴いしばらくお休みをしておりましたが、2年半ぶりの再登場です。「青少年の体験活動の重要性」を発信したいと思います。




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