2010.12.22
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ドイツの低年齢児教育(2)(語学支援)

独立行政法人国立青少年教育振興機構 教育事業部 企画課長 松村 純子

今回は、語学支援のための様々な取り組みについてお話しようと思います。
 前回も書きましたが、ドイツ国民でありながら、ドイツ語が話せない児童が多くいるということから、語学(ドイツ語)教育が大きな課題となっています。
 日本の各都道府県教育委員会の施策で幼児期に日本語の語学教育を重点として取り上げているところがあるでしょうか?それほどドイツの各州では、語学教育が切実な問題だと言えるのでしょう。

 ドイツ語の語学支援について早期に様々な取り組みをしていた「ノルトラインベスト・ヴァーレン州」「ヘッセン州」「ベルリン州」の実践についてお話します。

(1)ノルトラインベスト・ヴァーレン州の取り組み
  ノルトラインベスト・ヴァーレン州では、4歳児に語学検査を実施しています。
  この州の4歳児の語学検査は、○×点数をつける検査ではなく就学前の早い時期にこれから様々なコミュニティーを広げるためのベースとなる“言語=語学”について特に注目するというものです。保育園で保育士と小学校の教師が一緒に行っています。
  「言語と動き」に重点を置き、朗読にも力を入れていました。
  小学校に入学してから、ドイツ語できないとなると学習にも影響を及ぼすため、支援を必要とする子どもに対し“早期発見・早期支援”を行うという目的があります。
  また、この語学検査の結果を両親に保育園で実施する「両親の夕べ」(日本の保護者会と同様のもの)で知らせ、信頼関係を築いた保育士と保護者とが一緒に子どもの語学支援にあたるそうです。
  
(2)ヘッセン州の取り組み
  日本では6歳児になると、必ず就学する義務があります。これに対し、ヘッセン州では、5歳で入学することが可能です。またプレスクールを経て7歳で就学するなど、個々の発達に合わせた就学時期の柔軟性が認められています。このことは、どの子にも確かな学びを保証していくことを就学時に最も大切にしていこうとしていると考えられます。
  なお、これらのことを徹底するために、ヘッセン州では義務教育でない、就学前1年間の時期の保育料を無償とするなど、すべての保護者への援助を実施していることも見逃せません。
  小学校の語学支援は、1週間に2回実施されています。保育園の語学支援は、語学支援のための保育士が1週間に1度来園します。これは3歳児から受けることができます。
  しかし、保育園の6歳児は、語学支援が義務化されているので、保護者の語学支援に対する協力と認識は低いようです。「両親の夕べ」への参加率も高くないようです。
   支援を必要としている保護者が「両親の夕べ」に参加しないということは、保護者の協力度合いと語学支援の必要性については、どうも関係がありそうな気がしました。

(3)ベルリン州の取り組み
  ベルリン州では、「言語学習日誌」が活用されています。保育園では、この「言語学習日誌」が義務となっています。
  「言語学習日誌」は、保育士が子ども達の言語力を観察し、子ども達に色々な作業を通してインタビューし、それを語学支援に結びつけて記載しています。
  それを「教育インタビュー」と名付けていました。何かできるようになったのかを保育士が子どもに語りながら、聞き取り記入しているものです。
  この「言語学習日誌」は、とても厚いファイルでした。語学支援のためだから、保育士のためのファイルと思いがちですが、保育士の方々は、「これは子どものファイルです」と力説されていました。
  特にベルリン州の子どもたちの言語の問題から、その基礎として作成したそうです。保護者の方々は、「何かできていないか」という事が気になりますが、この「言語学習
日誌」は、子どもたちがどういうプロセスを経て学んできたかがわかるものであり、「発展のプロセス」として捉えているとのことでした。
 この「言語学習日誌」は、日本でも活用できると感じました。
  
  日本でも教員養成制度については、様々な議論がなされていますが、次回は、保育士養成についてお話したいと思います。
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松村 純子(まつむら じゅんこ)

独立行政法人国立青少年教育振興機構 教育事業部 企画課長
元小学校の教師です。勤務地の異動に伴いしばらくお休みをしておりましたが、2年半ぶりの再登場です。「青少年の体験活動の重要性」を発信したいと思います。




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