2010.12.08
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ドイツの低年齢児教育(1)(百聞は一見にしかず)

独立行政法人国立青少年教育振興機構 教育事業部 企画課長 松村 純子

 今回、「日独青少年指導者セミナー」~生きる力を育む~A1グループ(低年齢児童の支援制度と方法)の研修に参加し、ドイツに行ってきました。

 6月8日と22日の「教育つれづれ日誌」に「日独青少年指導者セミナー」のことを書きましたが、読んでいただけましたでしょうか?お読みになっていない方は、バックナンバーにありますので、読んでいただけると今回のテーマと繋がると思います。

 事前に研修会があり、「ドイツの今」や「ドイツの低年齢児童の実情」等学ぶ機会がありましたが、聞くと見るとは大違い。まさに「百聞は一見にしかず」でした。また、6月8日に、ドイツの教育事情についてお話しましたが、あの時点の理解が正しかった部分と勘違いしていた部分もわかりました。
 今回から複数回に分けてドイツの低年齢児教育についてお話したいと思います。
 
 今回視察した低年齢児教育機関(保育園や小学校)の教育内容について、お話する前に<教育背景・文化の違い>についてお話します。
 [1]教育システム
 教育システムが、州によって異なることは理解していましたが、州が一つの国と思っていいほど、具体的な取り組みについては、州ごとに違いが有りました。帰国した今は、具体例をあげる時には、「ドイツでは」とは言わずに「ドイツの○○州では」と言う癖もつきました。そうはいうものの団員9人も7県から参加していて、具体例を話すと「エッ?」と言うことが度々あり、訪問先で事例を話す時には、私たち団員も「△△市では」とか「自分の勤めている園では」というように努めました。
 
 [2]移民について
 2005年の人口全体における移民の割合は、18.6%。25歳未満では27.2%。現在旧西ドイツの大きな市では、40%を超えているところもあると言うことです。従ってドイツ国民でありながら、ドイツ語が話せない児童が多いということから、語学(ドイツ語)教育が大きな課題となっているようです。特に今はトルコからの移民が多いとのことです。
 語学教育のための様々な取り組みについては次回にお話しようと思います。

 [3]保育園に入る権利
 現在は、子どもが3歳になると保育園に入る権利が親にあります。従って入りたければ行政に申請します。民間の施設も充実しているので、日本のような「待機児童」という話しは聞きませんでした。
 しかし、2013年からは、1歳からその権利が派生するので、保育士の数が足りなくなると懸念されることから、保育士養成に力を入れているとの事でした。この制度についても後の回で触れたいと思います。

 [4]全日制って?
 さてここが、勘違いのところです。6月8日にドイツの初等教育が、PISA(学習到達度調査)ショックの後、半日制から全日制に移行する州が増えてきている。と書きました。
 この「全日制」という言葉がくせ者です。どうしても感覚的に午後まで小学校で授業をするんだと思ってしまいます。実際私もそう思っていました。ところが、本を読むのと実際に見るとは大違い。またまた「百聞は一見にしかず」です。
 この全日制というのは、日本で言う「学童保育」と捉えた方が正しいと感じました。宿題等は見て貰えますが、教師が授業をするわけではないのです。全日制を導入している学校の子ども達は、契約している施設や隣接している学校へ移動し、午後を過ごします。全日制についても「拘束性のあるもの」と「開放式のもの」が混在しています。詳細は、後の回で触れたいと思います。

 見てきた実践例を全て日本に取り入れる事は大変難しい事です。日本には日本の文化があり、今までの教育に対する自負もあります。しかし、指導者として取り入れられる事は、柔軟に取り入れ、子どもたちのためにチャレンジしていく事も必要だと学びました。
 次回からは具体例をお話ししていきたいと思います。今回はプロローグだと思ってください。
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松村 純子(まつむら じゅんこ)

独立行政法人国立青少年教育振興機構 教育事業部 企画課長
元小学校の教師です。勤務地の異動に伴いしばらくお休みをしておりましたが、2年半ぶりの再登場です。「青少年の体験活動の重要性」を発信したいと思います。




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