2010.11.15
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音のチカラ

北海道真駒内養護学校 教諭 遊佐 理

だんだん寒くなってきました。
今朝、職員室から見えるスキー場に雪がうっすら積もっているのが見えました。
北の大地では、長い冬が足早に近づいてきているようです。

先日、札幌交響楽団の皆さんがスクールコンサートとして本校を訪れ、体育館で演奏会をしていただきました。
目の前で聴く音は、とてもきれいで、そして、心にダイレクトに響き、鳥肌が立つほど感動しました。

僕は、生演奏を聴くととても心が揺さぶられます。
たとえば、目の前で太鼓の演奏を聴いたときや、中学生のブラスバンドの演奏を聴いたとき、札幌の街で路上ライブの演奏を聴いたときなど、涙が出そうになるくらい感動することがよくあります。
ちょっと恥ずかしい話ですが、好きなアーティストのコンサートに行ったときには、感動のあまり涙を流してしまうことがよくありました。

僕は、目の前で奏でられた音には心を動かす力があると信じています。それは、教室で一緒に勉強している子供たちも同じではないかと思っています。
僕は、そんな理由から教室では生演奏にこだわっていました。
ピアノは大学生の時に講義で習っただけ、ギターも就職してから見様見まねで覚えただけ、ウクレレは比較的上手に弾けるようになりましたが難しいコードは弾けません。伴奏がよく分からないときには、ただタンバリンを鳴らして歌っているだけです。
どう考えたって、CDやMDの方がクオリティーの高い演奏になると思いますが、子供たちの反応は、それとは逆でした。

僕は、休み時間などには体育館に子どもと一緒に行き、ピアノを弾いていました。学生の頃に習ったバイエルの曲や、童謡、バッハの曲のさわりだけ…。まともに引ける曲はほとんどない中、いろいろな曲を弾きました。
また、ある時期には、朝の会、授業の始まりと終わり、休み時間、帰りの会とそれぞれテーマソングを設定し、徹底してウクレレで弾き語りをしていました。子供たちは、聞き入ったり、時々一緒に歌ったりしながら僕の演奏に付き合ってくれました。
子供たちがひとつの曲に馴染むには思ったよりも長い時間がかかるようで、こちらが「そろそろ飽きたなぁ」と思っている頃になって急に喜ぶようになったということがよくありました。
そして、ちょっと体調や気持ちがすぐれないときでも、なじみの曲を演奏すればすぐに喜んでくれ、音が持つ力の強さを感じながら楽しく演奏していたことを思い出します。
上手に演奏できたときよりもミスが多いときの方が子どもは喜ぶということを知ったのもその時でした。

真駒内養護学校では、音楽の才能に恵まれた先生たちが多くいます。
上手に歩けない子供たちが歩く練習をするために廊下を歩いていても、先生たちが歩くペースに合わせて楽しい歌を歌ってくれるだけで、先生と子ども2人だけの楽しい時間に早変わりします。
また、音楽の授業などでも、子供たちの様子を見ながらテンポを変えたり、繰り返しの回数を調節したりしながら、子どもとの一体感を作り出しています。
こういったことはちょっとした配慮事項だったりするのですが、CDやMDでは難しいことだったりします。
僕は、「真駒内養護学校は素敵な音に囲まれた、とても素敵な学校です。」と、自信を持って言えます。

その時々の体調や気持ちの変化が大きく、感性が強い子供たちと向き合っているからこそ、そんなことを強く感じているのかな、とも思っています。
今回に関しては、皆さんの参考になるかどうかよく分かりません。ただ、ちょうど素敵な演奏を聴いてとても感動したところだったので、普段感じていることを文章にしてみました。

最近、教室から離れて仕事をしていることが多く、子供たちと一緒に音を楽しむことが少なくなっています。
もともと低空飛行だった自分の技術力が不時着していないか、とても心配です。今度、最近眠ったままのウクレレを出して来たるべきときに備えて練習してみようかなと考えています。

遊佐 理(ゆさ おさむ)

北海道真駒内養護学校 教諭
特別支援教育コーディネーターになって3年目。特別支援教育のプロフェッショナルとして、笑顔で人と人とをつなぐことを目指して頑張っています。

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