2010.11.01
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おいしい給食

北海道真駒内養護学校 教諭 遊佐 理

皆さんは、思い出の給食といわれて何を想像しますか?
僕は、小学生の頃に食べた焼きそばがとても印象的でした。今思えば、伸びに伸びきった焼きそばでしたが、その食感がたまらなく好きでした。


真駒内養護学校に赴任してから、給食といわれると「二次調理」または「再調理」という言葉を思い浮かぶようになりました。

肢体不自由の特別支援学校などで、給食を噛んだり飲み込んだりすることが苦手な子供たちのためにはさみやミキサーなどを使って給食を食べやすいように調理し直すことを「二次調理」または「再調理」と呼びます(今回は僕がいつも使っている「二次調理」で統一します)。

二次調理について、対応はそれぞれの学校によってさまざまです。調理室でその子に合ったように二次調理してくれるところもあれば、教員が配膳された給食を二次調理することもあります。
本校では、その中間、メニューのうち一品は調理室で二次調理してもらい、残りのメニューは教員が二次調理することになっています。
具体的には、ミキサーを使ってメニューを細かくしたり、水分を足したり、とろみ剤といって中華のあんかけのようにとろみをつける食品添加物を使って飲み込みやすくしたり…。
そういったことをしながら、無理しないでおいしい給食を食べられるように工夫しています。


それぞれ学校の対応について、一長一短であると思いますが、僕は、自分が二次調理することでいくつか教えてもらえたことがありました。

その中でも一番大きかったのは、二次調理で作ったものを食べる子どもの気持ちについてです。

僕は、二次調理を担当する際に必ずできたものを味見させてもらっています。
その時気付くのは、ミキサーにかけられた食べ物の味や見た目の変化の大きさです。
味について、メニューによって違いはありますが、酸味、塩気、青臭さ、生臭さは増幅される傾向にあります。意外なところでは、豆腐をミキサーにかけると大豆の味が強くなります。
また、色も単一になり、特に緑黄色野菜が入っていると、その色になります。たとえば、小松菜が入っているみそ汁はミキサーをかけると緑色になります。

味見をしてみて、「あまりイケていないな」と思っても、それ以上手を加えることができない場合には「ちょっと個性的な味だからびっくりしないでね~」といいながら食べてもらい、「だしの味がきいていておいしいね」とおいしさをアピールするようにしました。


そうやって味見を繰り返し、試行錯誤を繰り返していくうちにいくつか工夫できることも見つけました。

たとえば、ミキサーをかける前に、豆腐やむきエビなどの量を減らします。
また、パサパサしているとむせやすいので、汁気があるものは汁を足しておきます。

それでも味が整わないときに役に立つのは、さまざまな調味料です。
特に重宝したのは、マヨネーズとケチャップと砂糖です。
トマトスープは酸味が強く出るので、砂糖を足します。
マヨネーズはサラダはもちろん、焼きそばに加えるととても食べやすくなります。
また、チキンライスはご飯の粘りが出すぎるのでお湯を足し、薄くなった味を戻すのにケチャップを足し、ケチャップの酸味が強く出るので砂糖を足す、といったような手間を加えます。

最後に、僕が二次調理したものを食べた子供から感想をもらうようにしていました。意外なものが三つ星だったり、逆に、上出来だと思って出したものが一つ星だったり…。そのギャップがとても参考になり、次回に生かされていました。


こんな風に二次調理していた僕が目指していたのは、「普通食より美味しい二次調理」です。
たとえば、柑橘系の果物はそれだけではとても酸っぱいのですが、砂糖と、牛乳と、とろみ剤を合わせてミキサーにかけると、さわやかな風味のムースができ上がり、僕の周りでは人気メニューでした。

二次調理は、それをする人員の問題、時間の問題、衛生面の問題など、直面すべきことはたくさんありますが、僕自身は、その子が美味しそうに食べてくれるところを思い浮かべ、三つ星を目指して楽しく二次調理していました。

今日も、どこかで、二次調理をしている方がいらっしゃると思いますが、それぞれの頑張りがおいしい給食につながるように祈っています。

遊佐 理(ゆさ おさむ)

北海道真駒内養護学校 教諭
特別支援教育コーディネーターになって3年目。特別支援教育のプロフェッショナルとして、笑顔で人と人とをつなぐことを目指して頑張っています。

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