2010.09.10
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こども建築ワークショップ 万葉文化館建物ウオッチング

建築家(グローバルアーティスティック代表) 岩崎 亮平

欧米では、以前から建築を私たちの身近にあるものとして、解りやすく子どもたちに教えています。日本の小学校教育では、建築を学ぶカリキュラムはほとんどないと言っていいでしょう。
文部科学省も8年前に「総合的な学習時間」を設定し、こどもたちへの詰め込み学習からゆとり学習を大切にすることを推奨してきました。現在はこれもまた見直しをされてしまいましたが、私たち建築を業とする者が社会貢献として子どもたちに建築を体験させたり、触れ合う機会を作るための環境は整ってきていると思います。


数年前の話になりますが、小学生6年生と一緒に授業時間に行った「万葉文化館建物ウオッチング」(奈良県明日香村)を紹介したいと思います。
これは、(財)公共建築協会が協会員に対して毎年行っている見学会をアレンジしたもので、地元の奈良県桜井市の小学6年生72人を、8人のグループに分け、私たち建築家20人ほどがファシリテーターとしてグループに加わりました。
こどもたちは午前中の2時間程度、万葉文化館の館内や庭園を周り、発見した事、解らない事などを自由にポストイットとインスタントカメラに記録しました。


車いすで見て回るグループやバックヤードを見るグループも作り、全グループに館内職員、来館者、取材に来たTVスタッフ等へのインタビューの課題も与えました。(写真上)
さすがに大人の視点からは、とうてい気が付かないところ、見過ごすところを指摘していました。たとえば、この部屋は変わった匂いがするとか、資料コーナーの本を高く上げると出口のセキュリティブザーがならないとか・・・これからの運営に参考になるかもしれません。


昼食は用意した弁当を協会員の大人たちと一緒に食べて、午後からはいよいよ書き留めたメモと写真をグループごとにワークショップをして模造紙にまとめます。
模造紙に貼れる写真はせいぜい15枚程度ですので、その選別やグループ分けなどかなり苦労していました。ただどのグループにも言える事でしたが、女子が主導権を握り男子をリードしていました。
疑問点は建築のプロである協会員に聞いていましたが、同じ物が一つとない個性的な物が時間内にできあがりました。
大きい作業テーブルを用意していましたが、最後にはみんな床の上に模造紙を広げて作業に没頭していました。(写真中)しかし油性のマジックインキを使ったものですから、フローリングに跡が残ってしまい。館長から叱られてしまいました。深く反省!


最後に発表です。大型プロジェクターを使ってグループ毎に説明していくわけですが、発表者はなぜか男子が多かったです。(写真下)
この後、担任の先生の感想、そしてなんと子どもたちからもお礼の言葉がありました。それを聞くと目頭が熱くなり、半年に渡って準備してきた苦労も吹っ飛んだ気持ちになりました。こどもたちのキラキラ輝いた目が印象的な楽しい一日でした。

ちなみに、こどもたちの着ているトレーナーはこの日のためにオーダーしたもので、記念に持って帰ってもらいました。
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岩崎 亮平(いわさき りょうへい)

建築家(グローバルアーティスティック代表)
建築設計の仕事が本業ですが、「こども建築ワークショップ」を主宰し、学校へ出前授業を行っています。子どもに関わること全てが私のライフワークです。子どもは人類の宝者ですから。

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