2010.08.13
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南山城小学校は、山中の近代的建築ですが、こどもたちはみんな素朴!

建築家(グローバルアーティスティック代表) 岩崎 亮平

数年前になりますが、京都府の南東部の南山城小学校へ出前授業に出かけました。南山城村は、東は忍者でおなじみの三重県伊賀市、南は柳生の里の奈良県月ヶ瀬村に隣接する山間の小さな村です。人口は数千人と聞いています。
全国の過疎地域と同様にこどもが年々減ってしまい、既存の3つの小学校を数年前に統廃合した新しい小学校です。なぜこの小学校を出前授業に選んだかと言いますと、それは最後に述べることにします。


今回のワークショップの内容はと言いますと、この小学校の裏には村が管理する山があり、こどもたちのために学校が自由に使えて、既に野鳥の巣箱や林道などが作られています。中腹に少し開けた斜面地がありますので、ここに新たにたたみ10畳ほどの野外ステージをこどもたちと一緒に作ろうと考えました。

作る前にまず準備として教室で木に関するワークショップをすることにしました。(写真上)
(1) 事前に何種類かの木の枝を集めておき、グループごとに渡して葉の形から木の名前を考える。(松、ヒノキ、ケヤキ、栗、竹、杉)
(2) 大工道具を床にいくつか並べ、その名前と使い方を考える。(かんな、みの、ちょうな、すみつぼなど)
(3) 丸太から板のとりかたによってどれが一番反りやすいか(正目、板目)
以上を用意した答案用紙に記入し、各項目ごとに点数を付けて合計しました。そして合計の一番のグループを優勝とし、最下位のグループは後の掃除当番です。
これは競争することが主目的ではなく、目標を持たせることを趣旨としています。ちなみに優勝グループの景品は鉛筆で、掃除は全員でしました。
教室が広くフローリングですので、みんな床に座り込み、あるいは寝転がって懸命に取り組んでいました。以外なことに、自然環境のよい場所に住みながら、案外木の名前を知らないことでした。


日を替えて、いよいよデッキ作りです。校内でまずデッキ本体を作ってから、それを現地へ運ぶことにしました。(写真中)用意した板を釘とかなづちでいかだのように作っていきましたが、やはり不慣れなせいかうまくいきません。当日は小雪も舞っていましたので手もかじかんでいたこともありました。何とか完成しましたが、時間切れでこの日は製作だけで終了です。

後日、我々だけで裏山の設置する場所に杭を打って基礎としましたが、斜面地なのでレベルを出すのに苦労しました。そして完成したデッキを現地に運び、据え付けるのは村の森林組合の方にご協力いただきました。完成してからはまだ一度も見に行く機会がなくて残念ですが、うまく活用してもらうことを願っています。


では、なぜこの小学校かということを説明しなければなりませんが、この小学校の設計者は著名なイギリス人の建築家リチャード・ロジャースで、建築士会の見学会で選んだのでした。写真下を見てのとおり、およそ小学校とは思えない外観でかつカラフルです。当時校長先生に細かく説明していただいた後に、私からワークショップの提案し、快諾してもらったのでした。とても前向きな校長先生で外部の人々が関わってくれることには大賛成とのこと、これまでにも見学者だけでもかなりの数だそうです。

設計に関しては、明るく広々として使い易いのですが、何せガラス面の開口部が多いので夏は暑く、冬は寒いと苦笑されていました。この小学校以外にも村のりっぱな音楽ホールの設計もあの黒川紀章ですし、かなり建築家に理解のある村といえるでしょう。
次は誰がどんな建物を設計するのでしょうか!(NZのトピックスはまたネタ集めをしときます。)
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岩崎 亮平(いわさき りょうへい)

建築家(グローバルアーティスティック代表)
建築設計の仕事が本業ですが、「こども建築ワークショップ」を主宰し、学校へ出前授業を行っています。子どもに関わること全てが私のライフワークです。子どもは人類の宝者ですから。

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